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第十三章 巨星に挑む
火竜の聖女アンジェラ・ローズマリー
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「エルフの生き残りだと言われている……」
えええ? それって本当なの?
てことはエリカはエルフの血を引いているっての?
「本当に? それって有名な話かしら?」
「有名ではないな。何しろ、諸説あるからな。しかし、少なくとも王家の人間はエルフだったと考えているだろう。彼女の日記に古代エルフ文字が使われているのだから」
エルフは既に絶滅したと言われています。
確かに人族が地上に溢れる以前、エルフは一時代を築いたと伝わっているのです。
だけど、王国の創設時にまで生き残りがいたなんて意外すぎる話でした。
どうしよう。凄く読んでみたいわ。私なら意味くらい分かると思うし。だけど、禁書庫に入るには貴院長選挙に勝たなきゃいけない。
出来レース的な王子殿下と一騎打ちだなんて無理ゲーすぎるよね。
「ねぇ、手に入れてよ……」
私は髭に願っていました。恐らく貴院長選挙に勝利するよりも可能性があるだろうと。
一瞬、目を丸くした髭でしたが、溜め息と共に返しています。
「お前な、禁書庫なのだぞ? それこそ廃爵どころで済まない。アナも上を目指すのなら、馬鹿なことを考えるな」
即座に否定されてしまいますけれど、私には確信がありました。
「よく言うわ。金儲けに繋がる書物を探そうとしていたんじゃないの……」
髭ならば手段を持っている。だからこそ、目録を持っているんだ。
「盗む算段があったからこそ、目録を手に入れたんでしょ?」
手段がないなら、目録に意味はありません。手に入れられるからこそ、髭は目録を手に入れたのです。
少しばかり沈黙がありました。
しかし、直ぐにクックといつもの悪い笑い声を上げています。
「貴様は悪事に関しては頭が回るんだな? まあ、手がないわけではない」
微妙な言い回しね?
早くその手段とやらを教えなさいよ。
「私はどうしても読んでみたいの。古代エルフ文字は解読できるし、読んだ後はあげるわ。それなりの金額で転売できるんだから何とかしなさい」
「お前な、機会はあるけれど、年に一度だけだ。しかも、リスクが高い。読みたいからと、容易に手を出せる案件ではないのだ。それなりの準備も必要となる」
一応は手順が明確になっているのね。
しかし、年に一度だけ機会があるってのはどういうことなの?
「年に一度?」
「三月末に蔵書のチェックがある。その折りに調査員を買収するしかない。契約をし、裏切らないという確約が必要となる」
「それだけなら契約してよ」
「調査員も命懸けなのだぞ? 白金貨で五枚は必要になる。それに偽の蔵書も用意しなければならんのだ。禁書庫はナンバリングされており、歯抜けがあっては直ぐにバレてしまう」
ああ、なるほど。目録にある番号がナンバリングってわけか。
偽物を用意してすり替えるってことなのね。
「偽物の蔵書は用意するわ。どうせ古代エルフ文字は解読できないのだから、私が持っている魔道書に手を入れるだけ。この番号を魔法で転写すれば良いでしょ?」
「白金貨はどうするつもりだ? アンジェラ・ローズマリーの日記が白金貨五枚になるとは思えん。誰にも読めんのだし、偽物と思われるだけだ」
「白金貨は公爵が用意して! 私はアンジェラ・ローズマリーの日記があれば、新たな閃きを得られると思うの!」
完全に嘘だけど、構わないでしょ。
お金は腐るほどもっているのだし、私にも還元してもらわないとね。
「ねぇ、実際に禁書庫の中身はかなり入れ替わってんじゃないの? たぶん平気よ」
髭だけが画策した話ではないはず。きっと髭もまた前例に倣って調査したはずだもの。
恐らく禁書庫の中は目録通りの所蔵ではなくなっていることでしょう。
「そういう意味ではアンジェラ・ローズマリーの日記は既に偽物かもしれんぞ?」
「いえ、古代エルフ文字の表紙と中身を用意できるとは思わない。私は手持ちの魔道書に手を入れて代品とするつもりよ」
蔵書リストには番号が振ってある。
実際の書物にも番号が振られているみたいだし、抜けがあるのなら直ぐに見つかるはず。
また背表紙に古代エルフ文字がないのであれば、それもチェックされるはずです。
「禁書庫が開かれるのは来月末だ。ま、手は尽くしてやる」
やったぜ、髭パパ。
肝心の古代エルフの魔道書は見つからなかったけれど、アンジェラ・ローズマリーの日記は楽しみです。
一体何が書かれているのかしらね。
髭が動いてくれるなら、問題ないでしょう。悪事に関するエキスパートだし、ハイリスクであるならば引き受けてくれるはずがないわ。
私は期待をして待つことにしましょう。
えええ? それって本当なの?
てことはエリカはエルフの血を引いているっての?
「本当に? それって有名な話かしら?」
「有名ではないな。何しろ、諸説あるからな。しかし、少なくとも王家の人間はエルフだったと考えているだろう。彼女の日記に古代エルフ文字が使われているのだから」
エルフは既に絶滅したと言われています。
確かに人族が地上に溢れる以前、エルフは一時代を築いたと伝わっているのです。
だけど、王国の創設時にまで生き残りがいたなんて意外すぎる話でした。
どうしよう。凄く読んでみたいわ。私なら意味くらい分かると思うし。だけど、禁書庫に入るには貴院長選挙に勝たなきゃいけない。
出来レース的な王子殿下と一騎打ちだなんて無理ゲーすぎるよね。
「ねぇ、手に入れてよ……」
私は髭に願っていました。恐らく貴院長選挙に勝利するよりも可能性があるだろうと。
一瞬、目を丸くした髭でしたが、溜め息と共に返しています。
「お前な、禁書庫なのだぞ? それこそ廃爵どころで済まない。アナも上を目指すのなら、馬鹿なことを考えるな」
即座に否定されてしまいますけれど、私には確信がありました。
「よく言うわ。金儲けに繋がる書物を探そうとしていたんじゃないの……」
髭ならば手段を持っている。だからこそ、目録を持っているんだ。
「盗む算段があったからこそ、目録を手に入れたんでしょ?」
手段がないなら、目録に意味はありません。手に入れられるからこそ、髭は目録を手に入れたのです。
少しばかり沈黙がありました。
しかし、直ぐにクックといつもの悪い笑い声を上げています。
「貴様は悪事に関しては頭が回るんだな? まあ、手がないわけではない」
微妙な言い回しね?
早くその手段とやらを教えなさいよ。
「私はどうしても読んでみたいの。古代エルフ文字は解読できるし、読んだ後はあげるわ。それなりの金額で転売できるんだから何とかしなさい」
「お前な、機会はあるけれど、年に一度だけだ。しかも、リスクが高い。読みたいからと、容易に手を出せる案件ではないのだ。それなりの準備も必要となる」
一応は手順が明確になっているのね。
しかし、年に一度だけ機会があるってのはどういうことなの?
「年に一度?」
「三月末に蔵書のチェックがある。その折りに調査員を買収するしかない。契約をし、裏切らないという確約が必要となる」
「それだけなら契約してよ」
「調査員も命懸けなのだぞ? 白金貨で五枚は必要になる。それに偽の蔵書も用意しなければならんのだ。禁書庫はナンバリングされており、歯抜けがあっては直ぐにバレてしまう」
ああ、なるほど。目録にある番号がナンバリングってわけか。
偽物を用意してすり替えるってことなのね。
「偽物の蔵書は用意するわ。どうせ古代エルフ文字は解読できないのだから、私が持っている魔道書に手を入れるだけ。この番号を魔法で転写すれば良いでしょ?」
「白金貨はどうするつもりだ? アンジェラ・ローズマリーの日記が白金貨五枚になるとは思えん。誰にも読めんのだし、偽物と思われるだけだ」
「白金貨は公爵が用意して! 私はアンジェラ・ローズマリーの日記があれば、新たな閃きを得られると思うの!」
完全に嘘だけど、構わないでしょ。
お金は腐るほどもっているのだし、私にも還元してもらわないとね。
「ねぇ、実際に禁書庫の中身はかなり入れ替わってんじゃないの? たぶん平気よ」
髭だけが画策した話ではないはず。きっと髭もまた前例に倣って調査したはずだもの。
恐らく禁書庫の中は目録通りの所蔵ではなくなっていることでしょう。
「そういう意味ではアンジェラ・ローズマリーの日記は既に偽物かもしれんぞ?」
「いえ、古代エルフ文字の表紙と中身を用意できるとは思わない。私は手持ちの魔道書に手を入れて代品とするつもりよ」
蔵書リストには番号が振ってある。
実際の書物にも番号が振られているみたいだし、抜けがあるのなら直ぐに見つかるはず。
また背表紙に古代エルフ文字がないのであれば、それもチェックされるはずです。
「禁書庫が開かれるのは来月末だ。ま、手は尽くしてやる」
やったぜ、髭パパ。
肝心の古代エルフの魔道書は見つからなかったけれど、アンジェラ・ローズマリーの日記は楽しみです。
一体何が書かれているのかしらね。
髭が動いてくれるなら、問題ないでしょう。悪事に関するエキスパートだし、ハイリスクであるならば引き受けてくれるはずがないわ。
私は期待をして待つことにしましょう。
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