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第十三章 巨星に挑む
未来に希望を
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街門を超えるや、暗闇に灯火が見えました。
地図で確認している場所。ご丁寧に目標を知らせてくれています。
「マリィ、あの炎の位置よ?」
「がぁぁっ!」
「ちょっとアナ! まさかここからマリィが攻撃するのか?」
街門を超えただけ。灯火があるのは一キロくらい先でしょうか。
私としては充分な射程距離なのですが、ルークには信じられないのかもしれません。
「ロナ・メテオ・バーストなら余裕よ。ほら、火竜を粉々にした魔法!」
「いや、あれって昏倒するやつじゃねぇか!?」
「あのときは十二歳だったからよ。今は三発くらい撃っても問題ないわ」
「マジかよ……」
ルークはドン引きしていますけれど、私はエスフォレストを守るだけ。
攻め入る者たちのことまで考える聖人じゃありません。
私が詠唱を始めると同時に、マリィも口を開いて火球を育てています。
正直に一発でケリが付くまで考えられました。
「ロナ・メテオ・バースト!!」
「ガァァアアアア!!」
巨大な隕石と強大な火球が撃ち放たれました。
ルークたちは呆気にとられるばかりで、一言も発せず見守るだけのよう。
一瞬のあと、眼前に爆発が起きました。
暗闇でも明確に確認できるほど、強い光を発しています。
「アナスタシア様、ドルトン閣下は引っ捕らえるのでは!?」
「モルディン様、宣戦布告もなく攻め入る逆賊に慈悲は無用ですの。恐らく今の一撃で無き者になったのではないでしょうか」
私は更なる一撃を見舞う。
モルディン大臣の心配を余所に、撃てる限りを撃っています。
魔力回復ポーションを飲みつつ、七発ほど撃ち放ったでしょうか。
「ペガサスを降ろしましょう。ここからは戦線を引き上げます。もしも天運がドルトン様にあるのなら、捕まえることができるやもしれません」
「いや、もう流石に……」
モルディン大臣は苦笑いです。
火竜の聖女についての話は知っていたでしょうけれど、実際に見る私の戦いぶりはどう映ったのでしょうかね。
ペガサスを降ろすや、大隊を指揮する者が近寄って来ます。
「アナスタシア様、今の攻撃は!?」
「カイン、よく踏ん張ってくれました。流石に砦付近にいた敵軍は失われているでしょう。あとは戦線を押し上げ、全滅させるだけよ」
「承知しました! お前たち進軍だ!」
これより防衛に徹していた大隊が侵攻を始めます。
我が領土に攻め入った無法者の殲滅を目指して。
「いやはや、レグスを連れてきた意味すらありませんな?」
「まだ戦闘は終わっておりませんわ。レグス様、せっかくですから進軍の指揮を執ってくださいな?」
「承知しました。それではこれにて!」
もうレグス近衛騎士団長に任せて問題はないでしょう。
とりあえず、私も一休みさせてもらいましょうか。
「アナスタシア様、事後の話をさせていただいてよろしいでしょうか?」
ここでモルディン大臣が戦闘後の話を始めています。
割と先んじた話でありましたけれど、恐らくそれだけ重要な内容なのだと思います。
頷きを返した私にモルディン大臣は語り始めました。
「メルヴィス公爵家を取り潰しとするおつもりでしょうか?」
この期に及んで、モルディン大臣の話はメルヴィス公爵の刑が断罪以外であるように願っているようです。
「だとすれば?」
「いえ、私はまだメルヴィス公爵家に使い道があるかもと考えているのですよ」
査問会では明らかに私の味方をしていたモルディン大臣ですが、今は別人のようにメルヴィス公爵家を擁護しています。
「正直にメルヴィス公爵とドルトン閣下に無罪を言い渡すなどできません。ですが長く北の大地を治めた家系です。排除するとなれば、いざこざが起きるのも事実かと考えます」
なるほどね。
私はあわよくば公爵領を手に入れてやろうと考えていたのですけれど、確かに長年に亘って仕えてきた者たちからすると、私はよそ者であって異分子だと思えます。
「好きにしてくださいな。私は最終的に地位を得たい。それは叶います?」
ルークとの遣り取りを見ていた彼ならば、察してくれるはず。
私が縁もない地の領主を受け入れたことまで。
「実をいうと、私もその未来を望んでおります。ここだけの話ですけれど……」
あら? 何てことかしら。
どうやらここまでのお膳立ては全て私のためであったみたいね。
ならば私は了承するしかありません。
「北の大地は然るべき統治者に。それでよろしくて?」
「ありがとうございます。微力ながらアナスタシア様が望まれる未来へと進めさせて頂きましょう」
「言っておきますけど、私は無理難題を押し付けられるのはごめんですわ。望む未来は一つだけ。手に入れたいものも一つなのです」
「承知しております。万事上手くいくように。貴方様の期待に応えられるよう、影ながら私は動いていきましょう。角が出ることなく円滑に進めていきますので……」
納得の結末です。
一時は世界線を投げだそうとした私ですけれど、何とか風向きを変えられているのかもしれません。
来たるべく未来。
私は期待しても良いのかしら?
地図で確認している場所。ご丁寧に目標を知らせてくれています。
「マリィ、あの炎の位置よ?」
「がぁぁっ!」
「ちょっとアナ! まさかここからマリィが攻撃するのか?」
街門を超えただけ。灯火があるのは一キロくらい先でしょうか。
私としては充分な射程距離なのですが、ルークには信じられないのかもしれません。
「ロナ・メテオ・バーストなら余裕よ。ほら、火竜を粉々にした魔法!」
「いや、あれって昏倒するやつじゃねぇか!?」
「あのときは十二歳だったからよ。今は三発くらい撃っても問題ないわ」
「マジかよ……」
ルークはドン引きしていますけれど、私はエスフォレストを守るだけ。
攻め入る者たちのことまで考える聖人じゃありません。
私が詠唱を始めると同時に、マリィも口を開いて火球を育てています。
正直に一発でケリが付くまで考えられました。
「ロナ・メテオ・バースト!!」
「ガァァアアアア!!」
巨大な隕石と強大な火球が撃ち放たれました。
ルークたちは呆気にとられるばかりで、一言も発せず見守るだけのよう。
一瞬のあと、眼前に爆発が起きました。
暗闇でも明確に確認できるほど、強い光を発しています。
「アナスタシア様、ドルトン閣下は引っ捕らえるのでは!?」
「モルディン様、宣戦布告もなく攻め入る逆賊に慈悲は無用ですの。恐らく今の一撃で無き者になったのではないでしょうか」
私は更なる一撃を見舞う。
モルディン大臣の心配を余所に、撃てる限りを撃っています。
魔力回復ポーションを飲みつつ、七発ほど撃ち放ったでしょうか。
「ペガサスを降ろしましょう。ここからは戦線を引き上げます。もしも天運がドルトン様にあるのなら、捕まえることができるやもしれません」
「いや、もう流石に……」
モルディン大臣は苦笑いです。
火竜の聖女についての話は知っていたでしょうけれど、実際に見る私の戦いぶりはどう映ったのでしょうかね。
ペガサスを降ろすや、大隊を指揮する者が近寄って来ます。
「アナスタシア様、今の攻撃は!?」
「カイン、よく踏ん張ってくれました。流石に砦付近にいた敵軍は失われているでしょう。あとは戦線を押し上げ、全滅させるだけよ」
「承知しました! お前たち進軍だ!」
これより防衛に徹していた大隊が侵攻を始めます。
我が領土に攻め入った無法者の殲滅を目指して。
「いやはや、レグスを連れてきた意味すらありませんな?」
「まだ戦闘は終わっておりませんわ。レグス様、せっかくですから進軍の指揮を執ってくださいな?」
「承知しました。それではこれにて!」
もうレグス近衛騎士団長に任せて問題はないでしょう。
とりあえず、私も一休みさせてもらいましょうか。
「アナスタシア様、事後の話をさせていただいてよろしいでしょうか?」
ここでモルディン大臣が戦闘後の話を始めています。
割と先んじた話でありましたけれど、恐らくそれだけ重要な内容なのだと思います。
頷きを返した私にモルディン大臣は語り始めました。
「メルヴィス公爵家を取り潰しとするおつもりでしょうか?」
この期に及んで、モルディン大臣の話はメルヴィス公爵の刑が断罪以外であるように願っているようです。
「だとすれば?」
「いえ、私はまだメルヴィス公爵家に使い道があるかもと考えているのですよ」
査問会では明らかに私の味方をしていたモルディン大臣ですが、今は別人のようにメルヴィス公爵家を擁護しています。
「正直にメルヴィス公爵とドルトン閣下に無罪を言い渡すなどできません。ですが長く北の大地を治めた家系です。排除するとなれば、いざこざが起きるのも事実かと考えます」
なるほどね。
私はあわよくば公爵領を手に入れてやろうと考えていたのですけれど、確かに長年に亘って仕えてきた者たちからすると、私はよそ者であって異分子だと思えます。
「好きにしてくださいな。私は最終的に地位を得たい。それは叶います?」
ルークとの遣り取りを見ていた彼ならば、察してくれるはず。
私が縁もない地の領主を受け入れたことまで。
「実をいうと、私もその未来を望んでおります。ここだけの話ですけれど……」
あら? 何てことかしら。
どうやらここまでのお膳立ては全て私のためであったみたいね。
ならば私は了承するしかありません。
「北の大地は然るべき統治者に。それでよろしくて?」
「ありがとうございます。微力ながらアナスタシア様が望まれる未来へと進めさせて頂きましょう」
「言っておきますけど、私は無理難題を押し付けられるのはごめんですわ。望む未来は一つだけ。手に入れたいものも一つなのです」
「承知しております。万事上手くいくように。貴方様の期待に応えられるよう、影ながら私は動いていきましょう。角が出ることなく円滑に進めていきますので……」
納得の結末です。
一時は世界線を投げだそうとした私ですけれど、何とか風向きを変えられているのかもしれません。
来たるべく未来。
私は期待しても良いのかしら?
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