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第十三章 巨星に挑む
その罪とは
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王都ルナレイクにようやく到着していました。
降りた先はソレスティア王城でありまして、逃げも隠れもできない状況です。
一応はモルディン大臣に連絡を取っていますので、極秘裏に戻ってこれたと考えておきましょうか。
イセリナを王宮殿へと運んでから、私たちはコソコソとモルディン大臣が待つ部屋へと向かいます。
「ああ、アナスタシア様、お疲れのところ申し訳ございません」
扉を開くや、モルディン大臣が迎え入れてくれました。
ずっと私を急かしていたのですから、本当に心労だったのでしょうね。
「いえ、とりあえず二人は無事ですけれど、どういった状況でしょうか?」
「厳しいかと存じます。とりあえず、査問会は昨日お伝えしましたように、本日の夕方にメンバーが揃い次第開催される模様です」
あることないこと言われるのでしょうけれど、私だって負けていないわ。
徹底的に戦うって決めたんだもの。
「出席が二十五名で欠席が二十名。欠席がここまで多くなったのは急な開催であったことに加え、ランカスタ公爵とメルヴィス公爵のどちらに付くか決められなかったのだと思われます。まあそれでランカスタ公爵側の人数はメルヴィス公爵側よりも二人少なくなる見込みです」
なるほど、理解したわ。
私に何の罪を着せるつもりか分からないけれど、どのような難癖であっても肯定させるつもりなのね。
「しかし、私は何を罰せられるのです? こうして殿下も戻って来ましたけれど……」
「議題しか分かっておりません。恐らくルーク殿下の呪いが解けたと理解されていないのではないでしょうか? 反呪とか荒唐無稽な話ですし……」
「いや、私はメルヴィス公爵の目の前で解呪して見せたのですよ?」
まるで意味が分からないわ。
呪術師の呪詛が消えたのを爺様も見たはずなのに。
戻ってくることが遅れたから確信を得たのでしょうかね。
「議題はルーク殿下の護衛不備となっております。レグスも招集されるので、恐らく同時に裁くつもりでしょう」
「なあ、モルディン。俺も査問会に出ようと考えているんだ。俺のせいでアナが辛い目に遭うなんて我慢ならない」
ここでルークが意見しました。
議長であるモルディン大臣ならば、自分を査問会に出席させられるだろうと。
「正規の手順では不可能だと思われます。議案提出者であるメルヴィス公爵が認めるはずもありません。明らかにランカスタ公爵側である殿下の出席など……」
「俺は王子だぞ!?」
声を荒らげるルークですが、私には初めから分かっていたこと。
査問会という名とは異なり、その実状は責任を押し付ける会でしかないのですから。
もし仮にルークが言い負かしてしまったならば、誰が査問会の責任を取るのかという話になってしまいます。
言い出しっぺのご老人を代わりに叩くなどできません。何をするにも評が足りないのです。
公平さとは無縁の査問会において、私に有利な条件が承諾されるはずもありませんでした。
「何も問題ありませんわ。私は査問会で毅然と証言するだけ。何を問われたとしても、私には正義がある。情状酌量を求めるような真似はしません」
私の話にはモルディン大臣だけでなく、ルークやレグス団長も溜め息を吐いています。
何よ? 罪を受け入れて減刑を求めろとでもいうつもり?
「アナ、全員を抹殺するとかなしだぞ?」
「そうですよ。アナスタシア様は逆上されると、何をしでかすか……」
二人の話には頬を膨らませています。
どんな狂人だっての? 私だって一応は理性的に話をするつもりよ。相手の出方次第ではあるけれど……。
「アナスタシア様、私は議長を務めさせていただきますが、正直にどちらの肩を持つこともできません。従って、貴方様は審議が打ち切られるまでに、最低でも一人を引き込まなければ罰を受けることになります」
「いや、私は断罪でないのなら、別に構わないのです。領主なんて面倒なだけですし」
私の返答に、どうしてかモルディン大臣は嘆息しています。
意欲のなさを嘆いたのか、はたまた別の意味合いでしょうか。
モルディン大臣は長い息を吐いたあと、私の罪状を告げるのでした。
「議題はアナスタシア様の断罪です――」
降りた先はソレスティア王城でありまして、逃げも隠れもできない状況です。
一応はモルディン大臣に連絡を取っていますので、極秘裏に戻ってこれたと考えておきましょうか。
イセリナを王宮殿へと運んでから、私たちはコソコソとモルディン大臣が待つ部屋へと向かいます。
「ああ、アナスタシア様、お疲れのところ申し訳ございません」
扉を開くや、モルディン大臣が迎え入れてくれました。
ずっと私を急かしていたのですから、本当に心労だったのでしょうね。
「いえ、とりあえず二人は無事ですけれど、どういった状況でしょうか?」
「厳しいかと存じます。とりあえず、査問会は昨日お伝えしましたように、本日の夕方にメンバーが揃い次第開催される模様です」
あることないこと言われるのでしょうけれど、私だって負けていないわ。
徹底的に戦うって決めたんだもの。
「出席が二十五名で欠席が二十名。欠席がここまで多くなったのは急な開催であったことに加え、ランカスタ公爵とメルヴィス公爵のどちらに付くか決められなかったのだと思われます。まあそれでランカスタ公爵側の人数はメルヴィス公爵側よりも二人少なくなる見込みです」
なるほど、理解したわ。
私に何の罪を着せるつもりか分からないけれど、どのような難癖であっても肯定させるつもりなのね。
「しかし、私は何を罰せられるのです? こうして殿下も戻って来ましたけれど……」
「議題しか分かっておりません。恐らくルーク殿下の呪いが解けたと理解されていないのではないでしょうか? 反呪とか荒唐無稽な話ですし……」
「いや、私はメルヴィス公爵の目の前で解呪して見せたのですよ?」
まるで意味が分からないわ。
呪術師の呪詛が消えたのを爺様も見たはずなのに。
戻ってくることが遅れたから確信を得たのでしょうかね。
「議題はルーク殿下の護衛不備となっております。レグスも招集されるので、恐らく同時に裁くつもりでしょう」
「なあ、モルディン。俺も査問会に出ようと考えているんだ。俺のせいでアナが辛い目に遭うなんて我慢ならない」
ここでルークが意見しました。
議長であるモルディン大臣ならば、自分を査問会に出席させられるだろうと。
「正規の手順では不可能だと思われます。議案提出者であるメルヴィス公爵が認めるはずもありません。明らかにランカスタ公爵側である殿下の出席など……」
「俺は王子だぞ!?」
声を荒らげるルークですが、私には初めから分かっていたこと。
査問会という名とは異なり、その実状は責任を押し付ける会でしかないのですから。
もし仮にルークが言い負かしてしまったならば、誰が査問会の責任を取るのかという話になってしまいます。
言い出しっぺのご老人を代わりに叩くなどできません。何をするにも評が足りないのです。
公平さとは無縁の査問会において、私に有利な条件が承諾されるはずもありませんでした。
「何も問題ありませんわ。私は査問会で毅然と証言するだけ。何を問われたとしても、私には正義がある。情状酌量を求めるような真似はしません」
私の話にはモルディン大臣だけでなく、ルークやレグス団長も溜め息を吐いています。
何よ? 罪を受け入れて減刑を求めろとでもいうつもり?
「アナ、全員を抹殺するとかなしだぞ?」
「そうですよ。アナスタシア様は逆上されると、何をしでかすか……」
二人の話には頬を膨らませています。
どんな狂人だっての? 私だって一応は理性的に話をするつもりよ。相手の出方次第ではあるけれど……。
「アナスタシア様、私は議長を務めさせていただきますが、正直にどちらの肩を持つこともできません。従って、貴方様は審議が打ち切られるまでに、最低でも一人を引き込まなければ罰を受けることになります」
「いや、私は断罪でないのなら、別に構わないのです。領主なんて面倒なだけですし」
私の返答に、どうしてかモルディン大臣は嘆息しています。
意欲のなさを嘆いたのか、はたまた別の意味合いでしょうか。
モルディン大臣は長い息を吐いたあと、私の罪状を告げるのでした。
「議題はアナスタシア様の断罪です――」
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