青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

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第十二章 天恵

天恵

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『いつ何時も主神様と共に。ミカエル』

 ゴクリと唾を飲み込んでいました。

 ミカエルってまさか?

 いや、そんなはずないって!

 アマンダは世界に介入できないんだもの。

(だけど、堕天使が悪魔になったり、天使に纏わる伝承は多く残ってる……)

 もしも、このミカエルという著者が私の知るミカエル様なら。

 無意味なことを私は思考し始めていました。

(アマンダが地上に介入できないってのも違う。神託とかあるし、力が強すぎる彼女は地上に直接介入できないのかも)

 イセリナ時代に何度も祈ったけれど、アマンダは一度も応えてくれませんでした。

 それ故に私が出した結論は女神は何もできない。そう考えていたはず。

 しかし、女神の力が強大すぎるという可能性。

 アマンダが地上に関与すると、世界が歪んでしまうのではないか。だからこそ、第三者でしかない私が送り込まれているのではと。

(格が劣る天使なら地上に降臨したとしても影響が少ない?)

 予想できる内容は多くありません。

『貴方は間違っていない』というメッセージは恐らく私に対するものであり、『いつ何時も主神様と共に』って私が使徒だと知っているみたいに感じます。

「コンラッド、この書物を販売した商人は?」

「初めて見た顔ですが、ご老人でしたね。色々と魔道具を扱っていました」

 まあ、超絶美形のまま降臨するわけもないか。

 疑問の解消はできませんでしたけれど、この書物はミカエル様によってもたらされたものだと思います。

 何しろピンポイントで知りたいことが書かれている。

 呪術の魔法術式から再構築について、更には呪術を反呪させる方法まで網羅されているのですから。

(私は間違っていないってか……)

 そのメッセージが何を指すのか。

 大局的に考えると、エリカの闇属性を除去しようという話に違いありません。

 まあしかし、彼がコンラッドに譲った書物は呪術に関しての内容であって、間違っても古代エルフ文字にて記されたものではないのです。

(じゃあ、やはり局所的な意味ね)

 恐らくは呪いを反呪させようとしていること。

 天界はそれを是認しているのでしょう。

(でもさ、前世では一度も手助けしてくれなかったのに?)

 疑問が残るのは仕方ありませんけれど、やはり累積千年以上も費やした前世を考えてしまう。

 前世では一度も天界の助けを得られなかったのですから。

(ま、アナスタシアスタートの困難を天界も分かってるのかな? それとも心を痛めすぎた私への慰労なの?)

 真相は天界に還るまで分からない。

 この世界線をクリアし、停滞するプロメティア世界を再び動かしたあとでしか。


 無駄な思考は止めましょう。

 今はミカエル様が与えてくれた書物によって、道を切り開くべき。

 きっと天界はこの世界線を望んでいるんだ。

 とても歪な世界となってしまったけれど、天界が望んでいるのは世界の時間を進めること。オリジナルとはかけ離れているけれど、きっと私は間違っていない。

 小一時間をかけて、私は書物を読破しています。

 非常に分かりやすく記載されていました。

(この現状はレアな分岐ルートが重なってもたらされている。アマンダは恐らくカルロの口づけからセーブしていないのだわ)

 レアルートに入った私をどうしても死に戻りさせたくない。

 詳細が記された書物に私は確信しています。万が一にもイセリナが失われて、あの時間へ戻らないようにと。

(ま、助かるけど、これはチートだね……)

 呪術など学んだことすらなかったのです。

 しかし、こと細かに説明があるこの書物を読めば、私なら上位の呪術師であろうと戦える。

 少なくとも天界はそう考えているのでしょう。

「なら、やってやりましょうか!」

 私は期待に応えるだけだ。

 これらのお膳立ては信頼の証し。世界線を滅茶苦茶にした私だけど、今も女神の使徒であり、間違っていないのですから。

 私は猛烈にやる気を充填できています。

 魅惑のエンドコンテンツであるミカエル様が手助けしてくれたからじゃなく、全方位に恨みを買う私にも味方がいるのだと知って。

 声高々と、私は意気込みを口にする。

「天恵は我が手にあるのよ!!」
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