青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

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第十二章 天恵

人を呪わば……

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 屋敷の敷地内にもアンチマジックを設置し、領境に配置した近衛兵の何人かを屋敷の警護へと付けています。

 まあしかし、無意味だとも感じている。それは間に合わせの行為でしかないのだから。


 私は呪術関係の書物を探しましたが、田舎町のクルセイドではろくな資料が手に入りません。

 やはりコンラッドが有益な書物を持ち帰ってくれることを待つだけです。

「呪術なぁ。契約と同じようなものなら、何とかできるかもだけど……」

 問題は術式が天恵スキルであったこと。生まれ持って与えられたスキルの行使は詠唱を伴わない。

 それはつまり術式は術者の脳裏で完結しており、外部から術式を確認できないことになります。

 術者と対象の魂を結んでいるのは分かっても、術者をどうにかしないと解呪には至らないように思えます。

「どこまで戻るんだろう……?」

 正直に一週間では時間が足りなすぎる。

 私はこの世界線が巻き戻されることを考え始めています。

 イセリナが呪術によって亡くなるか、或いは私が罪に問われ断罪されるのか。

 いずれにせよリセット案件でありまして、問題解決よりもどこまで巻き戻るのかが気になっていました。


「せめて術者がどこにいるのか分かったら何とかできそうだけどな……」

 ルークとイセリナを呪った術者は恐らく街にいるでしょう。

 それほど距離を取れるわけがない。互いの魂を結びつけているのですから。

「あー、分かんないわ!」

 苛立った私はバンと机を叩いている。

 すると積み上げた書物が床へと落ちました。

 気のながぁぁい私でしたけれど、これには益々苛立ちを覚えています。

「あーもう、苛々する!!」

 落ちた書物を拾うことなく、私は再び机に八つ当たり。

 やはり第三者であるルークとイセリナが呪われたことは少なからず私に影響を与えていたのかもしれません。

 ふと目に入る。

 視界にあるのはリックがサルバディール皇国から拝借してきた魔道書でした。

「魔力可視化の術式……」

 一つ息を吸って考えてみる。

 呪術スキルにて呪ったとして、どうやって魂を結びつけているのか。

 離れているものを繋ぐ媒体があるのではないかと。

「術士の魔力によって結んでいるんじゃ?」

 恐らく、その推論で間違いはない。

 天恵スキルだとしても、効果を持続させるには対価が必要ですもの。それすなわち魔力ではないかと。

「魔力糸が見えたのなら、特定したも同然じゃない……?」

 私はこの世界線に光明を見出していました。

 リセットされたあと、リックが再び魔道書を手にしてくれるか分からない。ならば、手に入れた魔道書を真っ先に紐解いていく必要があるはずです。


 早速と私は魔道書の解析を始めます。

 読み方から始めなくてはならないのですが、何百年と費やした古代エルフ文字。

 一つずつ確実に読み解いていきます。

「なるほどね。三重術式だけど、それほど難解じゃない……」

 多重術式ではありますが、ロナ・メテオ・バーストやエクストラヒールの方が段違いに複雑で難しい。

 しかも可視化の術式は構築されていますので、今のところ問題はありません。

「いや、この術式を書き換えていけば……」

 私は閃いている。

 魔力糸の可視化ができるならば、逆に魔力糸を追っていくようにできないのかと。

 イセリナとルークの二人に繋がっている呪術師まで届くような気がする。

「待ってなさいよ……」

 私は笑みを浮かべていました。

 残された時間は少ない。しかしながら、やるしかありません。

 ザックという呪術師が私に楯突くというのなら、返り討ちにするだけよ。

「人を呪わば穴二つってね……」
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