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第十一章 謀略と憎悪の大地

方針は……

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『ちなみに、隣室のご令嬢も呪われております』

 マジですか。本当にイセリナは問題を抱えさせてくれるわね。

 しかしながら、呪術師はミスを犯した。

 ルークだけなら私も焦るところだけど、イセリナも同時に呪ったのなら問題はありません。

 もし仮に呪術を解除できなくて二人が共に失われてしまっても、世界線はリセットされるだけ。

 イセリナの死はリセット案件であると、既に分かっているのですから。

『コンラッドは呪術に関する書物を集めて。解呪を試みるわ』

『承知しました』

 呪術が存在することは知っていたけれど、私は詳しく調べていないのよね。

 まずは基本的なことを学ぶ必要がありそうです。

「レグス様、イセリナの様子も見に行きましょう」

「ルーク殿下は大丈夫なのですか!?」

「呪いとは対象を苦しめたのちに死をもたらす。憎悪の成れの果てですから。たった一日で殿下が失われることなどありません」

 私の説明に納得したのか、二人して部屋を出て行く。

 部屋の外には騒ぎを聞きつけた使用人たちがいましたけれど、私は気にせずイセリナの部屋へと入っていきました。

「やはり、イセリナも呪われてるわね……」

「どうしましょうか!? 王子殿下とイセリナ様を同時に失っては王国が転覆しかねません」

 メルヴィス公爵はなかなかの手札を持っているみたいね。

 前世でも断罪イベントとか困らせてくれたけれど、今世もまた北部の翁は面倒ごとばかりを仕向けています。

「必ず二人を解呪します。正直に言ってレグス様は二人を止めなければなりませんでした。こうなるのは明らかだったのですから……」

「申し訳ございません。武力行使しか考えておりませんでした。やはり敵はリーフメルの重鎮でしょうか?」

 ようやくレグス団長も落ち着いてきたみたいね。

 敵は明確に決まっているのよ。断罪イベントよりも先に動き始めただけ。

「当然です。呪術師の陰を送り込んできたようですね。子爵領にて王子殿下と婚約者が死ぬということは、全ての嫌疑を私が背負うということですから」

「誠に申し訳ございません。私が強く引き留めるべきでした……」

 今さら仕方ないわ。でも、これは好機でもある。

 コンラッドの話を鵜呑みにするならば、メルヴィス公爵は手持ちの駒であるザックを使ったことになるのだから。

「呪術師を捕まえれば何とかなりますか?」

「それは無駄でしょう。昨日から殺気すら感じないのよ? 優秀な陰を放ったのは間違いない。手がないことはないけれど、もう屋敷の近くには潜んでいないはず。経過を確認するくらいでしょうし」

 屋敷にはアンチマジックの術式が施してある。

 敷地内にも展開すれば魔法の類は無効化できるでしょう。

 しかし、天恵スキルであればどうにもできない。呪術だけでなく姿をくらますスキルを持っているならば、見つけられないことでしょう。

「モルディン大臣に連絡を取りましょうか?」

「それは必要ないわ。大事になれば公爵の思うつぼ。解呪を優先とすべきです。それで殿下たちの予定はどのような感じに?」

 王都に情報が流れるのは避けないといけません。確実にあの爺さんはあることないことを吹聴するはず。

 築き上げた王家との信頼を瓦解させる噂話を流し、果てには髭の求心力まで削ぐつもりだわ。

「一応は一週間を予定しております」

「充分だわ。それまでに解呪を行います」

「できるのですか!?」

「できるとかできないとか、そういうのじゃないのよ……」

 レグス団長はやはりまだ困惑しているのね。簡単な回答すら導けないなんて。

 私は簡潔に告げるだけ。戸惑う彼にもよく分かるように。

「やるしかないのよ――」
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