青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

文字の大きさ
上 下
256 / 377
第十一章 謀略と憎悪の大地

クルセイドの街並み

しおりを挟む
 翌朝、私は朝から手持ちの魔道書を引っ張り出していました。どうにかして、契約の糸を手繰り寄せられはしないかと。

 奴隷契約から支配契約まで。そういった契約は主人と従者の魂が結ばれて成されています。

 呪いにも似た接続。互いが違反しないようにとの術式です。

「第三者が割り込めたのなら……」

 我が子爵邸には多くの契約者がいます。全員がザックという人間と契約したのだとか。

 契約の内容自体は破棄されておりますが、今も全員がザックと魂レベルで繋がっている。私がそこに割り込んで、ザックを捕らえられないかと模索しているのです。

「あー、駄目だわ。契約時に接続した糸。常に双方を結びつけているけれど、互いの交信もできないのに第三者が割り込むなんて無理!」

 溜め息を吐いていると、コンラッドが部屋にやって来ました。

「姫、私に何か仕事はございませんか?」

 どうやら暇みたいね。じゃあ、少しばかり働いてもらいましょうか。

「やっぱメルヴィス公爵領に向かってくれる? ザックってやつの情報が欲しい。あと適当に公爵領を掻き乱してくれない? 私の方に集中できなくなるくらいに」

「御意に。公爵領を大混乱に陥らせてみせましょう」

 ちょっと煽りすぎたかしら?

 大混乱って何をするつもりかしらね。まあでも、コンラッドは上手くやってくれるはず。だとしたら、私は所領の運営を始めてみようかな。

「街に行くわ。何かあれば真紅の薔薇を飾るから……」

「承知しました。それでは潜入してまいります」

 本当に頼もしい。やっぱ先に抱き込んだのは正解だね。


 メルヴィス公爵家の方はコンラッドに任せて、私はクルセイドの街へと繰り出します。

 元侯爵領と言えども、どうも田舎くさい。やはり北部の発展は遅れているのかもね。

 セントローゼス王国の北側には【世界の頂】と言われる険しいピークレンジ山脈があって、他国とは隣接していないのです。

 北側から侵攻を受ける懸念はないのですが、東西にしか経済が回る手段がないことは発展における弊害となっているみたい。

 かといって、ピークレンジ山脈があるおかげで、斜面を利用した果樹栽培が盛んだったりもするのですけれど。

「ま、発展は内的要因を先にこなしていかないとね」

 外国と繋がっていたとして、産業がなければ何も変わらない。

 果樹園や酒造業だけで住民が増えるはずもなく、劇的に売り上げを伸ばすなんて夢物語です。


 街まで歩いて行くと、意外にも私は好意的に迎えられています。

 昨日の事件は私の印象を大きく変えたみたいですね。

「姫様、おはようございます!」

「姫様、ごきげんよう!」

 悪くないかも。姫様との呼称は間違っているのですが、私の年齢を考えると正しいようにも感じます。

 行く先々でホーリー・ブレスを唱えつつ、メインストリートまでやって来ました。

 大勢の市民を引き連れて歩いていたのですが、やはり露店の食品が気になります。

「がぁぁっ……」

 マリィもお腹が減ったみたいですし、何か買ってみましょうか。とはいえ、クルセイドの名物が何であるのかを私は知りません。

 買い食いを始めた私に住民たちは大いに驚いていましたけれど、別に私は貴族ぶるつもりもありませんので気にしない方向で。

 歩いていると、昨日問題が起きた広場へと到着。

 既に清掃されておりましたが、ここにはあまり良いイメージがないのも事実です。

 嘆息していた私に誰かが声をかける。

「アナスタシア様、少しよろしいですか?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

処理中です...