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第十一章 謀略と憎悪の大地
見せしめ
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『姫、屋敷に入ってもよろしいですか?』
使用人たちとの契約が終わったあと、不意に念話が届く。
えっと、早すぎない? 私はさっき赤い薔薇を窓辺に置いたところなんだけど。
『どうぞ。ちょうど使用人を集めて挨拶していたところよ』
私が念話を返すや、玄関にある鐘が鳴らされました。
最初にサインをした執事が直ぐさま対応に向かっています。
「アナスタシア様、コンラッドと名乗る男なのですが……」
「ああ、私が呼んだのよ。ご案内して」
白々しくコンラッドを招く。
せっかくゲームが盛り上がってきたというのに、ゲームチェンジャーが現れてしまったわね。
彼の登場は屋敷でのゲーム難易度を極端に下げたことでしょう。
「皆様、紹介します。彼はコンラッド。優秀な執事ですわ」
「お見知りおきを。姫様には長く雇われております。ご質問があれば何なりと」
話の腰が折れてしまいましたが、私はこれからの仕事を述べていく。
「私はこれから地下牢に閉じ込めた間者の取り調べを行います。せっかくですから、皆様も見学してくださいな?」
使用人たちに分からせてあげるわ。
私が見た目通りの少女ではないこと。悪の上をいく極悪であることをね。
コンラッドと使用人十人を引き連れて、私はモルディン大臣が閉じ込めたという牢屋へ来ていました。
「この男は何をしたのです?」
執事の男が聞く。牢へ放り込んだのは大臣でしたので、私を執務室へ案内していた彼は知らないみたいね。
「クルセイドの住人になりすましたメルヴィス公爵の間者ですわ。このような男がクルセイド中に存在しております。とはいえ、私に石を投げつけただけという情けない間者ですわ」
解錠をし、私は牢屋へと入ります。
使用人たちは牢屋越しにその様子を見ていました。
「さて間者様、貴方もこれにサインを。偽名でも何でも構いませんわ」
私は用意した契約書に無理矢理サインをさせています。彼が何かを書いた時点で問題はなくなると。
「その契約書はそれ以前の契約を無効にするものです。よって何を喋ろうともメルヴィス公爵の契約は実行されません。あと自害しようとすれば意識を失う。よって貴方は知っていることを全て吐くくらいしか選択肢がございません」
言って私はコンラッドに手を差し伸べる。
優秀な彼はクックと笑ってから、長い針のようなものを懐から取り出しています。
「俺は……殺されるのか……?」
「いいえ、殺しはしません。生かし続けるという罰がこの世にはございます」
端的に答えましたが、男はそれ以上何も喋りませんでした。
まあ仕方ないですね。これでも私は忙しいというのに。
コンラッドから受け取った針を振り上げ、私は男の足へとそれを突き刺しています。
「ぐあぁあぁあああっ!!」
根元まで突き刺した私は次の針を要求します。
するとコンラッドはまたも懐から針を出してくれました。
牢獄に響く絶叫。間者が意識を失うと私は透かさずヒールと気付け魔法を唱えるだけ。
「ぐぁ……ぁぁっ……」
「おいお前、姫様はこう見えて私などより、よほど胆力が備わっておられる。早く吐いて楽になれ。私の針がなくなってしまう……」
失礼しちゃうわね? これは見せしめなのよ。
私に敵対するとどうなるのか、使用人たちに知らしめておかねばならないの。
「コンラッド、針を抜くわ。道具を……」
「承知しました」
既に十本刺しましたが、何も口にしません。だったら、抜くことでも痛めつけてあげましょう。
一本抜くたびに絶叫が木霊し、血が噴き出します。
まあしかし、即座にハイヒールを唱えて傷口を癒すだけの簡単なお仕事ですわ。
流石に見かねたのか、メイドの一人が声を上げました。
「アナスタシア様……、この男は本当に間者なのですか?」
使用人たちとの契約が終わったあと、不意に念話が届く。
えっと、早すぎない? 私はさっき赤い薔薇を窓辺に置いたところなんだけど。
『どうぞ。ちょうど使用人を集めて挨拶していたところよ』
私が念話を返すや、玄関にある鐘が鳴らされました。
最初にサインをした執事が直ぐさま対応に向かっています。
「アナスタシア様、コンラッドと名乗る男なのですが……」
「ああ、私が呼んだのよ。ご案内して」
白々しくコンラッドを招く。
せっかくゲームが盛り上がってきたというのに、ゲームチェンジャーが現れてしまったわね。
彼の登場は屋敷でのゲーム難易度を極端に下げたことでしょう。
「皆様、紹介します。彼はコンラッド。優秀な執事ですわ」
「お見知りおきを。姫様には長く雇われております。ご質問があれば何なりと」
話の腰が折れてしまいましたが、私はこれからの仕事を述べていく。
「私はこれから地下牢に閉じ込めた間者の取り調べを行います。せっかくですから、皆様も見学してくださいな?」
使用人たちに分からせてあげるわ。
私が見た目通りの少女ではないこと。悪の上をいく極悪であることをね。
コンラッドと使用人十人を引き連れて、私はモルディン大臣が閉じ込めたという牢屋へ来ていました。
「この男は何をしたのです?」
執事の男が聞く。牢へ放り込んだのは大臣でしたので、私を執務室へ案内していた彼は知らないみたいね。
「クルセイドの住人になりすましたメルヴィス公爵の間者ですわ。このような男がクルセイド中に存在しております。とはいえ、私に石を投げつけただけという情けない間者ですわ」
解錠をし、私は牢屋へと入ります。
使用人たちは牢屋越しにその様子を見ていました。
「さて間者様、貴方もこれにサインを。偽名でも何でも構いませんわ」
私は用意した契約書に無理矢理サインをさせています。彼が何かを書いた時点で問題はなくなると。
「その契約書はそれ以前の契約を無効にするものです。よって何を喋ろうともメルヴィス公爵の契約は実行されません。あと自害しようとすれば意識を失う。よって貴方は知っていることを全て吐くくらいしか選択肢がございません」
言って私はコンラッドに手を差し伸べる。
優秀な彼はクックと笑ってから、長い針のようなものを懐から取り出しています。
「俺は……殺されるのか……?」
「いいえ、殺しはしません。生かし続けるという罰がこの世にはございます」
端的に答えましたが、男はそれ以上何も喋りませんでした。
まあ仕方ないですね。これでも私は忙しいというのに。
コンラッドから受け取った針を振り上げ、私は男の足へとそれを突き刺しています。
「ぐあぁあぁあああっ!!」
根元まで突き刺した私は次の針を要求します。
するとコンラッドはまたも懐から針を出してくれました。
牢獄に響く絶叫。間者が意識を失うと私は透かさずヒールと気付け魔法を唱えるだけ。
「ぐぁ……ぁぁっ……」
「おいお前、姫様はこう見えて私などより、よほど胆力が備わっておられる。早く吐いて楽になれ。私の針がなくなってしまう……」
失礼しちゃうわね? これは見せしめなのよ。
私に敵対するとどうなるのか、使用人たちに知らしめておかねばならないの。
「コンラッド、針を抜くわ。道具を……」
「承知しました」
既に十本刺しましたが、何も口にしません。だったら、抜くことでも痛めつけてあげましょう。
一本抜くたびに絶叫が木霊し、血が噴き出します。
まあしかし、即座にハイヒールを唱えて傷口を癒すだけの簡単なお仕事ですわ。
流石に見かねたのか、メイドの一人が声を上げました。
「アナスタシア様……、この男は本当に間者なのですか?」
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