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第十一章 謀略と憎悪の大地
王宮殿で迎えた朝
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思いのほか盛り上がりを見せた酒宴。
流石に酔っ払ったままモルディン大臣に会うのは躊躇われまして、前夜は王宮殿に泊まることになりました。
私は目覚めています。かといって、私はベッドの上で嘆息することに。
それは間違っても呑みすぎたことによる頭痛ではなく、その理由は一泊したこの部屋にありました。
「ここは私の部屋だわ……」
酔っ払ってベッドに横たわった時には気付きませんでした。けれど、間違いない。ここは前世での自室。どうしてかイセリナではなく、今世でも私に宛がわれています。
「ルークは隣の部屋にいるのね……」
部屋には扉が二つ。一つは通路へ出る扉であり、もう一つはルークの部屋へと繋がっています。夜な夜なその扉が開いた記憶を思い出していました。
「昨日は流石に開かなかったね……」
溜め息の理由。毎晩のように開かれていた扉が閉ざされたまま。施錠魔法でもかけられたかのように。
「とりま、モルディン大臣に面会させてもらいますか……」
本日中に所領へ行っておきたい。それは新酒のためじゃなくて、領民への顔見せがメインです。
私が成り上がるには所領の発展なくしてあり得ない。住民たちには私がいることを認知してもらわねばなりません。
早速と着替えて、私は食堂へと向かう。とりあえず、何か食べておこうと思って。
「そいや、ここ王宮殿だったわ……」
王宮殿は火竜退治の際に魔力切れで治療を受けて以来。あの頃は部屋で食事していましたし、私が食道の場所を知っているなんておかしいよね。
「アナスタシア様!」
引き返す間もなく、私は声をかけられてしまう。
声をかけたのはセシル。加えてシャルロット殿下も一緒です。
「昨日は宮殿に泊まられたみたいですね? 僕たちもこれから食事に向かうところなのです。ご一緒しませんか?」
まいったな。今さらセシルの好感度上げとか必要ないのに。
「ああいや、滅相もございません! 一人で彷徨いて迷子になっていたのですわ!」
王宮殿は広大な敷地面積を誇っておりますけれど、コの字型をしていて特別迷うような造りではありませんけれど。
「アナスタシアさま、わたしはシャルロットですのよ? よくもまあ、わたしの教育係を断られましたわね?」
「シャルロット殿下、その節はご迷惑をおかけいたしました……」
シャルロットももう十二歳。生意気盛りなのは分かっています。
「まあいいのです! エリカも光属性を持っていますし。朝食を食べましょう」
この二人が揃って食堂に行くということは王様や王妃様がいるかもしれない。前世での経験上だけど……。
不安を覚えながら食堂へと入ると、やはり王様と王妃様がおられました。
「アナスタシア嬢じゃないか? そういえば昨日は宮殿に泊まったんだったな」
まあ、そうだよね。ルーク以外は割と同じ時間に行動しているのだもの。
「ガゼル陛下、リリアナ王妃、一昨日は身に余る褒賞の数々、ありがとうございました。また王宮殿での宿泊をお許しくださり、感謝申し上げます」
ここはへりくだっておくしかない。子爵でしかない私が王宮殿に泊めてもらったんだし。
「ああ、よい。昨日は盛り上がったようだの?」
あたた、聞こえてたの?
流石に全員が酔っ払ってたから、声量が半端なかったのかな。どのような話をしたかなんて、既に覚えていないのだけど。
「お恥ずかしい限りです……。イセリナ様とルーク殿下に気を遣うべきでした」
「それこそ気にするな。イセリナ嬢と仲が良いのは公爵から聞いておる。ルークと酒を交わせるほどになったようで、ワシも胸のつかえが下りたかのようだ」
とりあえずは許してもらえるみたい。
まあ、授爵したばかりだし、大目に見てくれているのかしらね。
「胸のつかえでしょうか?」
少しばかりの疑問を口にする。一体何の話なのでしょうかと。
少しばかり言葉を選んだあと、ガゼル王は語り始める。
「もう五年になるか……」
流石に酔っ払ったままモルディン大臣に会うのは躊躇われまして、前夜は王宮殿に泊まることになりました。
私は目覚めています。かといって、私はベッドの上で嘆息することに。
それは間違っても呑みすぎたことによる頭痛ではなく、その理由は一泊したこの部屋にありました。
「ここは私の部屋だわ……」
酔っ払ってベッドに横たわった時には気付きませんでした。けれど、間違いない。ここは前世での自室。どうしてかイセリナではなく、今世でも私に宛がわれています。
「ルークは隣の部屋にいるのね……」
部屋には扉が二つ。一つは通路へ出る扉であり、もう一つはルークの部屋へと繋がっています。夜な夜なその扉が開いた記憶を思い出していました。
「昨日は流石に開かなかったね……」
溜め息の理由。毎晩のように開かれていた扉が閉ざされたまま。施錠魔法でもかけられたかのように。
「とりま、モルディン大臣に面会させてもらいますか……」
本日中に所領へ行っておきたい。それは新酒のためじゃなくて、領民への顔見せがメインです。
私が成り上がるには所領の発展なくしてあり得ない。住民たちには私がいることを認知してもらわねばなりません。
早速と着替えて、私は食堂へと向かう。とりあえず、何か食べておこうと思って。
「そいや、ここ王宮殿だったわ……」
王宮殿は火竜退治の際に魔力切れで治療を受けて以来。あの頃は部屋で食事していましたし、私が食道の場所を知っているなんておかしいよね。
「アナスタシア様!」
引き返す間もなく、私は声をかけられてしまう。
声をかけたのはセシル。加えてシャルロット殿下も一緒です。
「昨日は宮殿に泊まられたみたいですね? 僕たちもこれから食事に向かうところなのです。ご一緒しませんか?」
まいったな。今さらセシルの好感度上げとか必要ないのに。
「ああいや、滅相もございません! 一人で彷徨いて迷子になっていたのですわ!」
王宮殿は広大な敷地面積を誇っておりますけれど、コの字型をしていて特別迷うような造りではありませんけれど。
「アナスタシアさま、わたしはシャルロットですのよ? よくもまあ、わたしの教育係を断られましたわね?」
「シャルロット殿下、その節はご迷惑をおかけいたしました……」
シャルロットももう十二歳。生意気盛りなのは分かっています。
「まあいいのです! エリカも光属性を持っていますし。朝食を食べましょう」
この二人が揃って食堂に行くということは王様や王妃様がいるかもしれない。前世での経験上だけど……。
不安を覚えながら食堂へと入ると、やはり王様と王妃様がおられました。
「アナスタシア嬢じゃないか? そういえば昨日は宮殿に泊まったんだったな」
まあ、そうだよね。ルーク以外は割と同じ時間に行動しているのだもの。
「ガゼル陛下、リリアナ王妃、一昨日は身に余る褒賞の数々、ありがとうございました。また王宮殿での宿泊をお許しくださり、感謝申し上げます」
ここはへりくだっておくしかない。子爵でしかない私が王宮殿に泊めてもらったんだし。
「ああ、よい。昨日は盛り上がったようだの?」
あたた、聞こえてたの?
流石に全員が酔っ払ってたから、声量が半端なかったのかな。どのような話をしたかなんて、既に覚えていないのだけど。
「お恥ずかしい限りです……。イセリナ様とルーク殿下に気を遣うべきでした」
「それこそ気にするな。イセリナ嬢と仲が良いのは公爵から聞いておる。ルークと酒を交わせるほどになったようで、ワシも胸のつかえが下りたかのようだ」
とりあえずは許してもらえるみたい。
まあ、授爵したばかりだし、大目に見てくれているのかしらね。
「胸のつかえでしょうか?」
少しばかりの疑問を口にする。一体何の話なのでしょうかと。
少しばかり言葉を選んだあと、ガゼル王は語り始める。
「もう五年になるか……」
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