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第十一章 謀略と憎悪の大地
選んで欲しい
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「セントローゼス王家が魔王を降臨させると……」
流石に衝撃発言すぎたかもね。
二人は共に絶句しています。
「ルーク殿下か、或いはセシル殿下。二人のうちどちらかの子孫がプロメティア世界を破滅に追い込むらしいです……」
「いや待て、どういうことだ!? 君が俺の行為に激怒したことと関係あるのか!?」
意外と鋭いわね。
あの頃は選択肢がなかったからしょうがない。あの時点で現状を考えるなんて不可能だもの。
「少しはね……。あの頃、私はセシル殿下と結ばれるように言われていたの。女神アマンダが願った組み合わせは、セシル殿下と私。そしてルーク殿下とイセリナだった……」
再び二人は息を呑む。
この虚言にも似た話を二人は真面目に聞いてくれるみたい。
「その組み合わせならば、魔王は産まれないみたい。あとペアを入れ替えても別に構わなかったの。でも、その頃の私はイセリナと接点がなかった。公爵令嬢であるイセリナが第三王子殿下で満足するとは思えなかったし、まして私は子爵令嬢。とてもじゃないけれど、第一王子殿下の好意を受けられなかったのよ」
どこまで信じてもらえるかは分からない。
でも、嘘じゃない。私は本心を語っており、少なくとも真相に近い話を口にしています。
「ルークが泣きながらお城に戻っていった背中。今も忘れない。きっと私はルークよりも悲嘆に暮れていたわ。だけど、見送るだけ。声をかけてはならなかったのよ」
思い出される世界戦の始まり。心を闇に染めた時間軸の話。
「あれから本当に色々とあった。一言では語り尽くせない。カルロ殿下との出会いや、エリカとの出会い。部下であるコンラッドとも出会ったわね……」
あれからの私は概ね極悪でした。
悪を凌駕する極悪。心に平穏を求めていたけれど、悪役令嬢ロールを続けていたのです。
「それで、ようやく光明を見出したのよ。魔王降臨を阻止する希望の光。か細い輝きを発するそれに私は手を伸ばしている……」
「アナ、それが寝ずに頑張っている魔法のことなの?」
「そうよ。闇属性を除去する魔法を構築しようとしているの……」
「いやアナ、俺やセシルは闇属性など持っていないぞ!?」
少し踏み込みすぎたみたい。ルークもまた疑問を覚えているようです。
王家のミドルネームにあるルミナス。それは光属性を意味しますけれど、実をいうとセントローゼス王家の誰も光属性を有しておりません。
しかしながら、元々は光属性の血筋であったはず。何しろ天界はセントローゼス王家の血が途絶えることを良しとしていないのですから。
「王家の誰かであれば話は早かったのですけれど、残念ながら外的要因により、魔王は産み落とされます。だからこそ、私は王子殿下の二人には慎重に相手を選んでもらいたかった……」
「でも、アナ自身じゃないのだろ……?」
追加的な質問には頷く。
私じゃない。
先ほども言ったように、私は第三王子殿下の妻となるように仕向けられているのよ。
「魔王の話は忘れてください。私は解決策を必ず用意します。王子殿下の二人が自由に婚約者を選べる状況を作り出して見せる。その上で……」
私はようやくスタートラインに並ぼうとしていました。
大遅刻の上に、適切な立場を失った今となって。
それでも告げるだけよ。嘘偽りない私の本心について。
「ルークには私を選んで欲しい……」
流石に衝撃発言すぎたかもね。
二人は共に絶句しています。
「ルーク殿下か、或いはセシル殿下。二人のうちどちらかの子孫がプロメティア世界を破滅に追い込むらしいです……」
「いや待て、どういうことだ!? 君が俺の行為に激怒したことと関係あるのか!?」
意外と鋭いわね。
あの頃は選択肢がなかったからしょうがない。あの時点で現状を考えるなんて不可能だもの。
「少しはね……。あの頃、私はセシル殿下と結ばれるように言われていたの。女神アマンダが願った組み合わせは、セシル殿下と私。そしてルーク殿下とイセリナだった……」
再び二人は息を呑む。
この虚言にも似た話を二人は真面目に聞いてくれるみたい。
「その組み合わせならば、魔王は産まれないみたい。あとペアを入れ替えても別に構わなかったの。でも、その頃の私はイセリナと接点がなかった。公爵令嬢であるイセリナが第三王子殿下で満足するとは思えなかったし、まして私は子爵令嬢。とてもじゃないけれど、第一王子殿下の好意を受けられなかったのよ」
どこまで信じてもらえるかは分からない。
でも、嘘じゃない。私は本心を語っており、少なくとも真相に近い話を口にしています。
「ルークが泣きながらお城に戻っていった背中。今も忘れない。きっと私はルークよりも悲嘆に暮れていたわ。だけど、見送るだけ。声をかけてはならなかったのよ」
思い出される世界戦の始まり。心を闇に染めた時間軸の話。
「あれから本当に色々とあった。一言では語り尽くせない。カルロ殿下との出会いや、エリカとの出会い。部下であるコンラッドとも出会ったわね……」
あれからの私は概ね極悪でした。
悪を凌駕する極悪。心に平穏を求めていたけれど、悪役令嬢ロールを続けていたのです。
「それで、ようやく光明を見出したのよ。魔王降臨を阻止する希望の光。か細い輝きを発するそれに私は手を伸ばしている……」
「アナ、それが寝ずに頑張っている魔法のことなの?」
「そうよ。闇属性を除去する魔法を構築しようとしているの……」
「いやアナ、俺やセシルは闇属性など持っていないぞ!?」
少し踏み込みすぎたみたい。ルークもまた疑問を覚えているようです。
王家のミドルネームにあるルミナス。それは光属性を意味しますけれど、実をいうとセントローゼス王家の誰も光属性を有しておりません。
しかしながら、元々は光属性の血筋であったはず。何しろ天界はセントローゼス王家の血が途絶えることを良しとしていないのですから。
「王家の誰かであれば話は早かったのですけれど、残念ながら外的要因により、魔王は産み落とされます。だからこそ、私は王子殿下の二人には慎重に相手を選んでもらいたかった……」
「でも、アナ自身じゃないのだろ……?」
追加的な質問には頷く。
私じゃない。
先ほども言ったように、私は第三王子殿下の妻となるように仕向けられているのよ。
「魔王の話は忘れてください。私は解決策を必ず用意します。王子殿下の二人が自由に婚約者を選べる状況を作り出して見せる。その上で……」
私はようやくスタートラインに並ぼうとしていました。
大遅刻の上に、適切な立場を失った今となって。
それでも告げるだけよ。嘘偽りない私の本心について。
「ルークには私を選んで欲しい……」
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