青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

文字の大きさ
上 下
242 / 377
第十一章 謀略と憎悪の大地

選んで欲しい

しおりを挟む
「セントローゼス王家が魔王を降臨させると……」

 流石に衝撃発言すぎたかもね。

 二人は共に絶句しています。

「ルーク殿下か、或いはセシル殿下。二人のうちどちらかの子孫がプロメティア世界を破滅に追い込むらしいです……」

「いや待て、どういうことだ!? 君が俺の行為に激怒したことと関係あるのか!?」

 意外と鋭いわね。

 あの頃は選択肢がなかったからしょうがない。あの時点で現状を考えるなんて不可能だもの。

「少しはね……。あの頃、私はセシル殿下と結ばれるように言われていたの。女神アマンダが願った組み合わせは、セシル殿下と私。そしてルーク殿下とイセリナだった……」

 再び二人は息を呑む。

 この虚言にも似た話を二人は真面目に聞いてくれるみたい。

「その組み合わせならば、魔王は産まれないみたい。あとペアを入れ替えても別に構わなかったの。でも、その頃の私はイセリナと接点がなかった。公爵令嬢であるイセリナが第三王子殿下で満足するとは思えなかったし、まして私は子爵令嬢。とてもじゃないけれど、第一王子殿下の好意を受けられなかったのよ」

 どこまで信じてもらえるかは分からない。

 でも、嘘じゃない。私は本心を語っており、少なくとも真相に近い話を口にしています。

「ルークが泣きながらお城に戻っていった背中。今も忘れない。きっと私はルークよりも悲嘆に暮れていたわ。だけど、見送るだけ。声をかけてはならなかったのよ」

 思い出される世界戦の始まり。心を闇に染めた時間軸の話。

「あれから本当に色々とあった。一言では語り尽くせない。カルロ殿下との出会いや、エリカとの出会い。部下であるコンラッドとも出会ったわね……」

 あれからの私は概ね極悪でした。

 悪を凌駕する極悪。心に平穏を求めていたけれど、悪役令嬢ロールを続けていたのです。

「それで、ようやく光明を見出したのよ。魔王降臨を阻止する希望の光。か細い輝きを発するそれに私は手を伸ばしている……」

「アナ、それが寝ずに頑張っている魔法のことなの?」

「そうよ。闇属性を除去する魔法を構築しようとしているの……」

「いやアナ、俺やセシルは闇属性など持っていないぞ!?」

 少し踏み込みすぎたみたい。ルークもまた疑問を覚えているようです。

 王家のミドルネームにあるルミナス。それは光属性を意味しますけれど、実をいうとセントローゼス王家の誰も光属性を有しておりません。

 しかしながら、元々は光属性の血筋であったはず。何しろ天界はセントローゼス王家の血が途絶えることを良しとしていないのですから。

「王家の誰かであれば話は早かったのですけれど、残念ながら外的要因により、魔王は産み落とされます。だからこそ、私は王子殿下の二人には慎重に相手を選んでもらいたかった……」

「でも、アナ自身じゃないのだろ……?」

 追加的な質問には頷く。

 私じゃない。

 先ほども言ったように、私は第三王子殿下の妻となるように仕向けられているのよ。

「魔王の話は忘れてください。私は解決策を必ず用意します。王子殿下の二人が自由に婚約者を選べる状況を作り出して見せる。その上で……」

 私はようやくスタートラインに並ぼうとしていました。

 大遅刻の上に、適切な立場を失った今となって。

 それでも告げるだけよ。嘘偽りない私の本心について。

「ルークには私を選んで欲しい……」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】あなたの瞳に映るのは

今川みらい
恋愛
命を救える筈の友を、俺は無慈悲に見捨てた。 全てはあなたを手に入れるために。 長年の片想いが、ティアラの婚約破棄をきっかけに動き出す。 ★完結保証★ 全19話執筆済み。4万字程度です。 前半がティアラside、後半がアイラスsideになります。 表紙画像は作中で登場するサンブリテニアです。

あなたの側にいられたら、それだけで

椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。 私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。 傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。 彼は一体誰? そして私は……? アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。 _____________________________ 私らしい作品になっているかと思います。 ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。 ※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります ※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

処理中です...