青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

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第十章 闇夜に咲く胡蝶蘭

胡蝶蘭を闇に染める

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 胡蝶蘭の夜会。

 会場の周囲にはその名の通りに、純白の花を咲かせた胡蝶蘭が植っている。

 王宮の庭師による手入れは完璧であり、鈴なりの胡蝶蘭は華やかに参加者を迎えていた。

 パートナーがいる者は二人して会場へと入り、二階の観覧席からは大きな拍手が送られている。

 その中でも一際大きな喝采を浴びているのはルーク第一王子殿下とイセリナ公爵令嬢だった。

 シャルロット殿下と第三王子セシルが参加されないということで、観覧者たちの関心は婚約したばかりの二人に集中しているらしい。

 盛り上がる会場の端で、アルバートはパートナーが現れる瞬間を待っていた。

 王子殿下による盛り上がりを一変させられるのなら、彼女しかいないだろうと。しかしながら、パートナーであるアナスタシアは一向に現れない。

「まさか約束を反故にするつもりか?」

 もう既にアナスタシアを残すだけだ。彼女以外の参加者は既に会場入りしている。

 流石に焦れていたアルバート。楽団の方を向くと、入場の曲が終わり、ダンスミュージックの演奏に切り替わるところであった。

 ふと、会場がざわめいた。アルバートはその理由を推し量っている。

 ルークとイセリナが登場したあと、会場の注目を浴びるのは一人しかいないのだと。


 急いで振り返る。自身のパートナーが来たのだと。最高潮に達した頃、自分が彼女の手を取るのだと。

「っ!?」

 アルバートは絶句していた。

 確かに会場入りしたのはアナスタシア・スカーレット。けれど、会場が騒々しいのは彼女がやって来たからではない。

 観衆が戸惑う明確な理由がアナスタシアにはあったのだ。

 なぜなら、アナスタシアは凡そパーティーに出席するような格好ではない。

 彼女は喪服を連想させるような漆黒のドレスを身に纏っていた。
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