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第九章 永遠の闇の彼方
武功を求めて
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「カルロ!!」
思わず声を張る。私にはまるで状況が飲み込めません。
「どうして皇国にいるのよ!?」
私がセントローゼス王国を発ってから、二週間程度しか経過していないのです。
馬車での移動なら二週間くらいはかかるはずで、私の計画では絶対に戻っていないと確信していたというのに。
「そこの王子に強制帰国させられただけだ。戻るや否に攻め込んでくるとか、ふざけてやがる。それよりも、ルイ……」
どうやらセシルは根絶やしとするため、進軍前にカルロを強制的に帰国させたらしい。しかも、彼が到着した頃を見計らい、ペガサスにて攻め込んで来たようです。
「お前は皇国を裏切ったのか?」
鋭い視線が私に向けられていました。
ここ数日の動きを伝え聞いていたのなら、私が弁解する予知はありません。皇国のあらゆる軍事施設を破壊して回っていたのですから。
「そんな目で見ないで……」
溜め息と共に返す。
私は貴方が生き残るルートを模索しただけなの。
貴方が現れるなんて、考えもしていなかったのよ。
「アナスタシア様、ご助力感謝いたします。既に皇国の軍事力は壊滅的と報告を受けました。しかし、それでは僕の武功がありません。だから僕がカルロ殿下を斬り、その首を掲げて皇国民に占領の事実を告げたいと考えます」
「違うのよ! そうじゃないの!」
セシルの話には激しく頭を振って答えた。
もうどうしようもない。この現状は私が皇国を裏切ったと確信を持てるもの。セシルの話を否定したとして、受け入れられるはずもありません。
「貴方様には皇国と帝国の仲介をお願いしただけですわ!」
「アナスタシア様の意図は分かっております。自身を縛り付ける皇国を徹底的に破壊し、自由を得ること。僕は貴方が羽ばたけるようにするだけです」
何を言っても無駄でした。
私の行動がセシルの言葉を肯定する。王家と手を組み、侵攻したとしか考えてもらえないことでしょう。
「ふん、綺麗事を。大国セントローゼス王国も落ちたものだ。サルバディール皇国は絶対に滅びぬ! 俺がいる限りな!!」
カルロの怒りが伝わってきます。
一方で私はこの世界線を諦めていました。
どうあってもサルバディール皇国は滅亡する。それは世界の決定事項であり、転生者である私にも変えられない未来。つまるところ、カルロの死は確定しているのだと。
「兵力で蹂躙したとして面白くありませんね。僕は貴方に一騎討ちを申し込みます。僕が負けたとすれば、侵攻軍は撤退しましょう。どうです? 受けてみませんか?」
セシルは圧倒的優位にある現状を放棄するような話をしています。
やはり彼は武功を求めている。自身の力で未来を掴み取ろうとしているかのようです。
「俺が断る理由はないな。どうせルイを言葉巧みに丸め込んだのだろう。貴殿の首を斬り裂き、俺は再びルイを手に入れる」
「なかなか自信家のようですね? カルロ殿下、僕はこう見えて武才に恵まれているのですよ。無様な姿を晒すことになりますけれど、了承いただけるのですか?」
セシルの言葉に嘘はない。
才能だけを比べるとすれば、セシルはルークの比ではないのです。
文武両道を地で行く人。生まれのせいで彼が表にでることはありませんでしたが、剣術は勉学よりも彼が得意とするものでした。
「知るか。俺は猛烈に怒りを覚えている。貴様の首は骨になるまで晒したあと、王国へ送り返してやるよ……」
言ってカルロが剣先をセシルへと向ける。
もう私は見守るしかできない。セシルが望んだ一騎討ちが始まってしまう。
私は人知れず考えていました。
この一騎討ちを見届けたあとのこと。
結果によって、私は自害をし、あの茶会へ戻るべきかどうか。けれど、どうせカルロが失われる運命であるのなら、抗っても意味はありません。
全てを受け入れて、停滞する世界線を動かせるように行動すべきかもしれない。
「さあ、先にどうぞ!」
「るせぇぇっ! 後悔させてやるよ!!」
カルロが斬りかかっていく。
力強い一撃。セシルより二歳も年上である彼は力で押し切るつもりかもしれない。
遂に二人の戦いが始まってしまいました。
思わず声を張る。私にはまるで状況が飲み込めません。
「どうして皇国にいるのよ!?」
私がセントローゼス王国を発ってから、二週間程度しか経過していないのです。
馬車での移動なら二週間くらいはかかるはずで、私の計画では絶対に戻っていないと確信していたというのに。
「そこの王子に強制帰国させられただけだ。戻るや否に攻め込んでくるとか、ふざけてやがる。それよりも、ルイ……」
どうやらセシルは根絶やしとするため、進軍前にカルロを強制的に帰国させたらしい。しかも、彼が到着した頃を見計らい、ペガサスにて攻め込んで来たようです。
「お前は皇国を裏切ったのか?」
鋭い視線が私に向けられていました。
ここ数日の動きを伝え聞いていたのなら、私が弁解する予知はありません。皇国のあらゆる軍事施設を破壊して回っていたのですから。
「そんな目で見ないで……」
溜め息と共に返す。
私は貴方が生き残るルートを模索しただけなの。
貴方が現れるなんて、考えもしていなかったのよ。
「アナスタシア様、ご助力感謝いたします。既に皇国の軍事力は壊滅的と報告を受けました。しかし、それでは僕の武功がありません。だから僕がカルロ殿下を斬り、その首を掲げて皇国民に占領の事実を告げたいと考えます」
「違うのよ! そうじゃないの!」
セシルの話には激しく頭を振って答えた。
もうどうしようもない。この現状は私が皇国を裏切ったと確信を持てるもの。セシルの話を否定したとして、受け入れられるはずもありません。
「貴方様には皇国と帝国の仲介をお願いしただけですわ!」
「アナスタシア様の意図は分かっております。自身を縛り付ける皇国を徹底的に破壊し、自由を得ること。僕は貴方が羽ばたけるようにするだけです」
何を言っても無駄でした。
私の行動がセシルの言葉を肯定する。王家と手を組み、侵攻したとしか考えてもらえないことでしょう。
「ふん、綺麗事を。大国セントローゼス王国も落ちたものだ。サルバディール皇国は絶対に滅びぬ! 俺がいる限りな!!」
カルロの怒りが伝わってきます。
一方で私はこの世界線を諦めていました。
どうあってもサルバディール皇国は滅亡する。それは世界の決定事項であり、転生者である私にも変えられない未来。つまるところ、カルロの死は確定しているのだと。
「兵力で蹂躙したとして面白くありませんね。僕は貴方に一騎討ちを申し込みます。僕が負けたとすれば、侵攻軍は撤退しましょう。どうです? 受けてみませんか?」
セシルは圧倒的優位にある現状を放棄するような話をしています。
やはり彼は武功を求めている。自身の力で未来を掴み取ろうとしているかのようです。
「俺が断る理由はないな。どうせルイを言葉巧みに丸め込んだのだろう。貴殿の首を斬り裂き、俺は再びルイを手に入れる」
「なかなか自信家のようですね? カルロ殿下、僕はこう見えて武才に恵まれているのですよ。無様な姿を晒すことになりますけれど、了承いただけるのですか?」
セシルの言葉に嘘はない。
才能だけを比べるとすれば、セシルはルークの比ではないのです。
文武両道を地で行く人。生まれのせいで彼が表にでることはありませんでしたが、剣術は勉学よりも彼が得意とするものでした。
「知るか。俺は猛烈に怒りを覚えている。貴様の首は骨になるまで晒したあと、王国へ送り返してやるよ……」
言ってカルロが剣先をセシルへと向ける。
もう私は見守るしかできない。セシルが望んだ一騎討ちが始まってしまう。
私は人知れず考えていました。
この一騎討ちを見届けたあとのこと。
結果によって、私は自害をし、あの茶会へ戻るべきかどうか。けれど、どうせカルロが失われる運命であるのなら、抗っても意味はありません。
全てを受け入れて、停滞する世界線を動かせるように行動すべきかもしれない。
「さあ、先にどうぞ!」
「るせぇぇっ! 後悔させてやるよ!!」
カルロが斬りかかっていく。
力強い一撃。セシルより二歳も年上である彼は力で押し切るつもりかもしれない。
遂に二人の戦いが始まってしまいました。
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