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第九章 永遠の闇の彼方
作戦
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割と緊張感を覚えながら、私はこの一ヶ月を過ごしていました。
今もまだ王国は穏やかです。隣国の戦争が激化しているという話を耳にする以外は平時そのものでした。
またセシルを指揮官として進軍するという話は不気味に感じるほど何も聞こえてきません。本当に髭が話したように攻め入るのか判然としない感じです。
「とりあえずカルロはまだ王国にいる……」
いよいよ出立の時となります。
変装することも考えましたが、素顔を晒して戦うことにしました。
介入する建前は平和を求めるというもの。喧嘩両成敗という理由で両国の戦力を壊滅させるだけです。
「姫、この計画によると、ノヴァ聖教国には攻め入らないということでしょうか?」
魔道書捜索から戻ったコンラッドが私の計画書を読んで意見します。
前の世界線では魔道書を持ち帰っていましたけれど、此度のお土産はないみたい。やはり少しの切っ掛けで世界線は揺れ動いているようですね。
「ええ、ノヴァ聖教国は基本的に宗教国。アウローラ聖教会から分派したラマティック正教会の国ですもの。先にヴァリアント帝国を制圧できたのなら、彼らは平和的な存在です」
王国の進軍が始まらない理由はノヴァ聖教国にあると思う。
「セシル殿下と言えども、自国と同じ宗派の国を侵攻する理由がありません。恐らくセントローゼス王家は隣国の紛争を安全上の理由として攻め込むはず。宗教国に軍事介入するほど愚かではないでしょうし」
二国間の戦争にノヴァ聖教国が参戦したならば、東部の治安維持という名分が生まれる。
ノヴァ聖教国とヴァリアント帝国がいざこざを抱えている情報を持っているからこそ、王国はそのときを待っているはずです。
「なるほど。覇権国家を目指すわけでもないということですか。しかし、私が同行する意味などありますかね? 姫ならばお一人で充分に戦えるかと……」
「髭の命令だから仕方ないでしょ? ま、コンラッドは先にサルバディール皇国内の状況を探って欲しいの。私はサルバディール皇家を救済するつもりです。できればウィンドヒル皇城の議会員エリアに皇家の人間は近寄らせないように。隔離に成功すれば、毎朝八時に狼煙を上げなさい。それを確認後、私は攻撃を仕掛けますから。あと、私が地上に降り立っても、近付かないように。ある程度の距離になれば、念話ができるでしょ?」
承知しましたとコンラッド。無理難題を押し付けたとして、彼は仕事をやり遂げます。
ヴァリアント帝国によるノヴァ聖教国への侵攻ほど難易度は高くないことでしょう。
とりあえず、私はコンラッドと一緒に出発します。
さりとて私たちの目的地は異なるのですけれど。
今もまだ王国は穏やかです。隣国の戦争が激化しているという話を耳にする以外は平時そのものでした。
またセシルを指揮官として進軍するという話は不気味に感じるほど何も聞こえてきません。本当に髭が話したように攻め入るのか判然としない感じです。
「とりあえずカルロはまだ王国にいる……」
いよいよ出立の時となります。
変装することも考えましたが、素顔を晒して戦うことにしました。
介入する建前は平和を求めるというもの。喧嘩両成敗という理由で両国の戦力を壊滅させるだけです。
「姫、この計画によると、ノヴァ聖教国には攻め入らないということでしょうか?」
魔道書捜索から戻ったコンラッドが私の計画書を読んで意見します。
前の世界線では魔道書を持ち帰っていましたけれど、此度のお土産はないみたい。やはり少しの切っ掛けで世界線は揺れ動いているようですね。
「ええ、ノヴァ聖教国は基本的に宗教国。アウローラ聖教会から分派したラマティック正教会の国ですもの。先にヴァリアント帝国を制圧できたのなら、彼らは平和的な存在です」
王国の進軍が始まらない理由はノヴァ聖教国にあると思う。
「セシル殿下と言えども、自国と同じ宗派の国を侵攻する理由がありません。恐らくセントローゼス王家は隣国の紛争を安全上の理由として攻め込むはず。宗教国に軍事介入するほど愚かではないでしょうし」
二国間の戦争にノヴァ聖教国が参戦したならば、東部の治安維持という名分が生まれる。
ノヴァ聖教国とヴァリアント帝国がいざこざを抱えている情報を持っているからこそ、王国はそのときを待っているはずです。
「なるほど。覇権国家を目指すわけでもないということですか。しかし、私が同行する意味などありますかね? 姫ならばお一人で充分に戦えるかと……」
「髭の命令だから仕方ないでしょ? ま、コンラッドは先にサルバディール皇国内の状況を探って欲しいの。私はサルバディール皇家を救済するつもりです。できればウィンドヒル皇城の議会員エリアに皇家の人間は近寄らせないように。隔離に成功すれば、毎朝八時に狼煙を上げなさい。それを確認後、私は攻撃を仕掛けますから。あと、私が地上に降り立っても、近付かないように。ある程度の距離になれば、念話ができるでしょ?」
承知しましたとコンラッド。無理難題を押し付けたとして、彼は仕事をやり遂げます。
ヴァリアント帝国によるノヴァ聖教国への侵攻ほど難易度は高くないことでしょう。
とりあえず、私はコンラッドと一緒に出発します。
さりとて私たちの目的地は異なるのですけれど。
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