199 / 377
第九章 永遠の闇の彼方
動き始める世界
しおりを挟む
「俺はお前を愛している……」
もう何年一緒にいるのかな……。
それはカルロが私にしてくれた初めての告白でした。でもね、そんなことはもう分かりきっている。私は貴方の想いを知っているもの。
つい先ほど、この身を以て知らされているわ。
貴方は愛ゆえに私を斬った。
他の誰にも渡さないとの決意を私に向けたのよ。
愛と罪は同じ。深ければ深いほど暗く澱んでいく。決して陽の光が届かぬ場所にある愛を私は確かに受け取っていたわ。
「今さらですわね。前世界線でも貴方の想いを聞いたもの。セシル殿下のものになることを嫌がった貴方は私を斬ったのですから……」
プロメティア世界は永遠に停滞し続けそう。
アマンダが私とセシルの婚約を望んでいるのなら、私はカルロに斬られ続けるだけ。この闇から抜け出せそうにない。
「俺がルイを?」
「愛しているなら斬れと言ったのよ。何しろ、私は敵軍として貴方の前に立っていたのだから」
「どうしてそうなる!? 帝国に与していたのか!?」
私は前世界線の話をしました。
カルロが戦場に赴く原因となる議員たちを排除しようとして、回りくどく参戦した事実を。
流石に顔を振るだけのカルロ。壮大な計画の全貌は理解不能みたい。
彼自身は議員たちを悪く思っていないし、恐らく強要されたというより半ば自発的に戦場へと向かったはず。
「でも、もう終わりにしようと思うの。私が望む世界など決して訪れない。だから、アマンダが求める世界を受け入れるわ」
今度もまたカルロは首を振る。
私がどのような行動を取ろうとも、彼は否定するのだ。私たちが共に生きる未来など存在しないというのに。
「ルイ……」
「私は屋敷を出て行きます。枢機卿の立場もなかったことにしてください。私はもう生きているだけの人形なの。何も求めない。何も望まない。何の抵抗もしない」
早巻きで人生を送っていこう。
それが最も効率的なんだ。下手に抗うから、余計に心を痛める。割り切って生きれば良いだけなのよ。
「ルイ、やめろよ……」
「ううん、私はもうスカーレット子爵家に戻るわ。放っておいてもセシル殿下が迎えに来る。私は彼に愛され、彼の子を産む。それだけの人生よ」
「やめろって言ってんだろ!?」
脅しても無駄よ。
私は剣を振り下ろされるときですら、微動だにしていないの。
死ですらも克服している私に怖いものなどありません。
「何をやめるの? 小国の皇太子に私の未来を変える力があって? 私の未来は女神が決めたもの。色々と試したけれど、もう詰んでるのよ。イセリナとルークが婚約した現状で、私に未来などありません」
愛が伴わないのならば、誰に愛されようが一緒。
できればルークから離れて暮らしたかったけど、どうあっても私はセシルと結ばれる運命みたいだからね。
完全に私たちの話し合いは平行線を辿ると思われましたが、ここで予期せぬ乱入者が現れます。
「ルイ、ワタクシは別にルーク殿下のことなど好きではありませんわ」
現れたのはイセリナです。
えっと、いつから聞いていたのかな。
(あれ?)
何だかおかしい。この時間軸のイセリナは公爵家に戻っているはず。婚約の雑務があるとかどうとか。
「イセリナ、貴方は公爵家に戻ったんじゃ?」
「面倒になりましたので、使者は帰らせましたの。好きにしてくださいと伝えましたわ」
確実に世界線が動いている。
私はセシルルートを選んだだけだといういのに。
「イセリナ、それでどこから話を聞いていたの?」
「スカーレット子爵家に戻るとかどうとか……」
良かった。それなら誤魔化せる。
イセリナには私の使命を知られたくないんだもの。
「痴話喧嘩なら外でしてもらえません? お昼寝もままならないですわ。あとルイがスカーレット子爵家に戻るのであれば、ワタクシも子爵家にお邪魔しますから……」
どこまで私に寄生するつもりなのかしら?
もし仮にイセリナがスカーレット子爵家に住むことになったなら、ダンツが気苦労で死んでしまうかもしれないってのに。
「痴話喧嘩じゃない。私は別に誰と結婚しても良いの。それだけの話よ」
「そうかしら? ワタクシが婚約した折り、一日中泣いてたでしょ?」
イセリナの返しに私は絶句しています。
声出てた? 一応は声を出さずに泣いていたはずなんだけど?
「泣いて……ない」
「うるさくて仕方ありませんでしたわ。ねぇ、皇太子様?」
「あ、ああ……」
隣の部屋であるイセリナだけじゃなく、カルロまで同意してるなんて。
こうなるとカルロだけじゃなく、イセリナも私の気持ちに気付いている。
私がルークを好きだってこと……。
目を泳がせながら、私は取り繕う言葉を探し続けていました。
もう何年一緒にいるのかな……。
それはカルロが私にしてくれた初めての告白でした。でもね、そんなことはもう分かりきっている。私は貴方の想いを知っているもの。
つい先ほど、この身を以て知らされているわ。
貴方は愛ゆえに私を斬った。
他の誰にも渡さないとの決意を私に向けたのよ。
愛と罪は同じ。深ければ深いほど暗く澱んでいく。決して陽の光が届かぬ場所にある愛を私は確かに受け取っていたわ。
「今さらですわね。前世界線でも貴方の想いを聞いたもの。セシル殿下のものになることを嫌がった貴方は私を斬ったのですから……」
プロメティア世界は永遠に停滞し続けそう。
アマンダが私とセシルの婚約を望んでいるのなら、私はカルロに斬られ続けるだけ。この闇から抜け出せそうにない。
「俺がルイを?」
「愛しているなら斬れと言ったのよ。何しろ、私は敵軍として貴方の前に立っていたのだから」
「どうしてそうなる!? 帝国に与していたのか!?」
私は前世界線の話をしました。
カルロが戦場に赴く原因となる議員たちを排除しようとして、回りくどく参戦した事実を。
流石に顔を振るだけのカルロ。壮大な計画の全貌は理解不能みたい。
彼自身は議員たちを悪く思っていないし、恐らく強要されたというより半ば自発的に戦場へと向かったはず。
「でも、もう終わりにしようと思うの。私が望む世界など決して訪れない。だから、アマンダが求める世界を受け入れるわ」
今度もまたカルロは首を振る。
私がどのような行動を取ろうとも、彼は否定するのだ。私たちが共に生きる未来など存在しないというのに。
「ルイ……」
「私は屋敷を出て行きます。枢機卿の立場もなかったことにしてください。私はもう生きているだけの人形なの。何も求めない。何も望まない。何の抵抗もしない」
早巻きで人生を送っていこう。
それが最も効率的なんだ。下手に抗うから、余計に心を痛める。割り切って生きれば良いだけなのよ。
「ルイ、やめろよ……」
「ううん、私はもうスカーレット子爵家に戻るわ。放っておいてもセシル殿下が迎えに来る。私は彼に愛され、彼の子を産む。それだけの人生よ」
「やめろって言ってんだろ!?」
脅しても無駄よ。
私は剣を振り下ろされるときですら、微動だにしていないの。
死ですらも克服している私に怖いものなどありません。
「何をやめるの? 小国の皇太子に私の未来を変える力があって? 私の未来は女神が決めたもの。色々と試したけれど、もう詰んでるのよ。イセリナとルークが婚約した現状で、私に未来などありません」
愛が伴わないのならば、誰に愛されようが一緒。
できればルークから離れて暮らしたかったけど、どうあっても私はセシルと結ばれる運命みたいだからね。
完全に私たちの話し合いは平行線を辿ると思われましたが、ここで予期せぬ乱入者が現れます。
「ルイ、ワタクシは別にルーク殿下のことなど好きではありませんわ」
現れたのはイセリナです。
えっと、いつから聞いていたのかな。
(あれ?)
何だかおかしい。この時間軸のイセリナは公爵家に戻っているはず。婚約の雑務があるとかどうとか。
「イセリナ、貴方は公爵家に戻ったんじゃ?」
「面倒になりましたので、使者は帰らせましたの。好きにしてくださいと伝えましたわ」
確実に世界線が動いている。
私はセシルルートを選んだだけだといういのに。
「イセリナ、それでどこから話を聞いていたの?」
「スカーレット子爵家に戻るとかどうとか……」
良かった。それなら誤魔化せる。
イセリナには私の使命を知られたくないんだもの。
「痴話喧嘩なら外でしてもらえません? お昼寝もままならないですわ。あとルイがスカーレット子爵家に戻るのであれば、ワタクシも子爵家にお邪魔しますから……」
どこまで私に寄生するつもりなのかしら?
もし仮にイセリナがスカーレット子爵家に住むことになったなら、ダンツが気苦労で死んでしまうかもしれないってのに。
「痴話喧嘩じゃない。私は別に誰と結婚しても良いの。それだけの話よ」
「そうかしら? ワタクシが婚約した折り、一日中泣いてたでしょ?」
イセリナの返しに私は絶句しています。
声出てた? 一応は声を出さずに泣いていたはずなんだけど?
「泣いて……ない」
「うるさくて仕方ありませんでしたわ。ねぇ、皇太子様?」
「あ、ああ……」
隣の部屋であるイセリナだけじゃなく、カルロまで同意してるなんて。
こうなるとカルロだけじゃなく、イセリナも私の気持ちに気付いている。
私がルークを好きだってこと……。
目を泳がせながら、私は取り繕う言葉を探し続けていました。
10
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる