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第八章 絶望の連鎖に
居場所を求めて
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ノヴァ聖教国に来てから三週間が経過していました。
王国を発ってから既に二ヶ月が経過しており、貴族院も夏休みに入っています。カルロが呼び戻される八月末まであと一ヶ月もありません。
「ルイ様、関所が帝国軍に攻撃を受けました!」
聖教議会の一室。私の居室となっていた部屋にマクスウェル聖議長が現れました。
それは待ちに待った一報です。ようやくコンラッドが仕事を果たしたと確信できることでした。
「関所はどうなっています?」
「残念ながら破壊されております。帝国軍はノヴァ聖教国に対して宣戦布告をし、大隊級と思われる軍勢が北上しているらしいです!」
どれだけ煽り倒したのかしら? 思いのほか帝国は大規模に動いているみたい。
「ルイ様のご指示通り、関所近くに聖教軍を配置していていたので何とかなっております」
「私も出撃しますわ。ペガサスの用意を願います」
魔力回復ポーション二十本をアイテムボックスへと収納し、法衣の上にベールを被ります。
「マリィ、行くよ!」
「がぁぁっ!!」
期待しているわよ。私のファイアードラゴンちゃん。その炎で大地を焼き尽くしてくださいな。
「ルイ様、お気を付けて……」
「心配ございませんわ。空の旅を楽しむだけ。吉報を待ってくださればよろしいかと」
颯爽と飛び立つ。
目指すは南東にある関所。私は自ら作り出した戦争に身を投じようとしていました。
その先に私の居場所があると信じて……。
◇ ◇ ◇
ペガサスで飛び立った私は数時間を要して、関所の上空へとやって来ました。
「本当に攻めてきたんだ?」
大隊との報告があったままです。
ノヴァ聖教国軍はかなり引いており、ヴァリアント帝国軍はノヴァ聖教国内に仮設の砦らしきものを設営しています。
「とりあえず合流してからね……」
万が一にも味方を誤射なんてシャレになりませんからね。
私は聖教軍と思われる一団の目の前に降りていきます。
「ルイ様!?」
流石にペガサスにて参戦とか考えていなかったのでしょう。聖教軍の隊長らしき男性が驚いています。
「戦況はどうなっていますか?」
「ええ、思いのほか大軍で攻め入ってきました。現状では下がるしかありません」
「じゃあ、最前線に味方はいないのね?」
「もちろんです。とりあえず、指示通りに攻めてくれば引いております。まあですが、奴らは聖教国内に砦を建ててしまいました」
「砦は私が破壊します。私が魔法を放ったあと、侵攻してください」
私の話に頷きを見せる隊長でしたが、信じられないといった表情です。
何しろ帝国軍はこちらの三倍以上。私一人が魔法を撃ったとしてどうにもならない状況であったのだから。
「最終目標はグロムシェイド城。途中にある軍施設は破壊しておきますので……」
言って私は再び上空へと。空から最大級の魔法を撃ち込むつもりです。
「さあ、粛正を始めましょうか……」
聖戦という名の侵略。私は無慈悲にも上空からロナ・メテオ・バーストを撃ち放っていました。
詠唱のあと宙に十字を切る。事後的にも思えるけれど、兵士たちが迷わず逝けるように。
「私の使命は勇者でも英雄でもないのよ!!」
二発目を撃ったあとポーションを飲み干し、三発目の詠唱に入る。
女神により世界へ送り込まれた使徒。だけど私はたった一人を生かすために、悪魔的な所業を繰り返した。
結果として三千人以上いたであろう帝国軍大隊はたった三発の古代魔法により、ほぼ壊滅となっている。
振り返ると、聖教軍の一団が侵攻を始めていました。
これにより防戦は終わりを告げ、帝国領土への侵攻が始まります。
「僧兵及び志願兵たち! 私はこれより帝都へと攻め入ります! 真っ直ぐに帝都へと突き進んでください!」
ルートにある砦は全て破壊。ペガサスに乗ったまま私は帝都を目指します。
二時間ほどでしょうか。視界の先には街が拡がっています。その中央にそびえ立つ建物こそ帝国の本陣グロムシェイド城でした。
「あれが諸悪の根元……」
「がぁぁ!」
私の言葉に反応してマリィが声を上げました。
お腹が減ったのかと思いましたが、予想とは違っています。
「えっ!?」
次の瞬間、マリィの体躯からは考えられないほどの火球が撃ち放たれていたのです。
それはグロムシェイド城の一番高い塔に部分に着弾し、お城のシンボルは無惨にも倒壊していました。
「嘘……?」
最近は肩に乗せると辛く感じるほど大きくなっていましたが、見た目よりもマリィは成長しているようです。
「マリィ、もっと撃てる?」
「がぁぁっっ!!」
まるで任せろと言っているみたい。
ならば私は見守るだけ。私の思いを感じ取ったマリィが何を見せてくれるのか。一度目よりも大きな火球がマリィの口の前で膨らんでいます。
「ちょっと、マリィ……?」
不安になってきました。
マリィが開いた口の前にはロナ・メテオ・バーストと同等の火球が出来上がっています。
「グアアアアッ!!」
巨大な火球が撃ち放たれ、グロムシェイド城の上階部分は完全に崩壊。しかも、広範囲に火災が発生していました。
「火竜やばいな……」
今更ながらに国を滅ぼすと言われている理由を知らされていました。
炎を上げるグロムシェイド城の上空へと辿り着いたあと、私は声を張る。
ここは堂々と突きつけるだけ。罪人を裁く者が現れたことを。
「野蛮なる侵略者ヴァリアント帝国に告ぐ!!」
王国を発ってから既に二ヶ月が経過しており、貴族院も夏休みに入っています。カルロが呼び戻される八月末まであと一ヶ月もありません。
「ルイ様、関所が帝国軍に攻撃を受けました!」
聖教議会の一室。私の居室となっていた部屋にマクスウェル聖議長が現れました。
それは待ちに待った一報です。ようやくコンラッドが仕事を果たしたと確信できることでした。
「関所はどうなっています?」
「残念ながら破壊されております。帝国軍はノヴァ聖教国に対して宣戦布告をし、大隊級と思われる軍勢が北上しているらしいです!」
どれだけ煽り倒したのかしら? 思いのほか帝国は大規模に動いているみたい。
「ルイ様のご指示通り、関所近くに聖教軍を配置していていたので何とかなっております」
「私も出撃しますわ。ペガサスの用意を願います」
魔力回復ポーション二十本をアイテムボックスへと収納し、法衣の上にベールを被ります。
「マリィ、行くよ!」
「がぁぁっ!!」
期待しているわよ。私のファイアードラゴンちゃん。その炎で大地を焼き尽くしてくださいな。
「ルイ様、お気を付けて……」
「心配ございませんわ。空の旅を楽しむだけ。吉報を待ってくださればよろしいかと」
颯爽と飛び立つ。
目指すは南東にある関所。私は自ら作り出した戦争に身を投じようとしていました。
その先に私の居場所があると信じて……。
◇ ◇ ◇
ペガサスで飛び立った私は数時間を要して、関所の上空へとやって来ました。
「本当に攻めてきたんだ?」
大隊との報告があったままです。
ノヴァ聖教国軍はかなり引いており、ヴァリアント帝国軍はノヴァ聖教国内に仮設の砦らしきものを設営しています。
「とりあえず合流してからね……」
万が一にも味方を誤射なんてシャレになりませんからね。
私は聖教軍と思われる一団の目の前に降りていきます。
「ルイ様!?」
流石にペガサスにて参戦とか考えていなかったのでしょう。聖教軍の隊長らしき男性が驚いています。
「戦況はどうなっていますか?」
「ええ、思いのほか大軍で攻め入ってきました。現状では下がるしかありません」
「じゃあ、最前線に味方はいないのね?」
「もちろんです。とりあえず、指示通りに攻めてくれば引いております。まあですが、奴らは聖教国内に砦を建ててしまいました」
「砦は私が破壊します。私が魔法を放ったあと、侵攻してください」
私の話に頷きを見せる隊長でしたが、信じられないといった表情です。
何しろ帝国軍はこちらの三倍以上。私一人が魔法を撃ったとしてどうにもならない状況であったのだから。
「最終目標はグロムシェイド城。途中にある軍施設は破壊しておきますので……」
言って私は再び上空へと。空から最大級の魔法を撃ち込むつもりです。
「さあ、粛正を始めましょうか……」
聖戦という名の侵略。私は無慈悲にも上空からロナ・メテオ・バーストを撃ち放っていました。
詠唱のあと宙に十字を切る。事後的にも思えるけれど、兵士たちが迷わず逝けるように。
「私の使命は勇者でも英雄でもないのよ!!」
二発目を撃ったあとポーションを飲み干し、三発目の詠唱に入る。
女神により世界へ送り込まれた使徒。だけど私はたった一人を生かすために、悪魔的な所業を繰り返した。
結果として三千人以上いたであろう帝国軍大隊はたった三発の古代魔法により、ほぼ壊滅となっている。
振り返ると、聖教軍の一団が侵攻を始めていました。
これにより防戦は終わりを告げ、帝国領土への侵攻が始まります。
「僧兵及び志願兵たち! 私はこれより帝都へと攻め入ります! 真っ直ぐに帝都へと突き進んでください!」
ルートにある砦は全て破壊。ペガサスに乗ったまま私は帝都を目指します。
二時間ほどでしょうか。視界の先には街が拡がっています。その中央にそびえ立つ建物こそ帝国の本陣グロムシェイド城でした。
「あれが諸悪の根元……」
「がぁぁ!」
私の言葉に反応してマリィが声を上げました。
お腹が減ったのかと思いましたが、予想とは違っています。
「えっ!?」
次の瞬間、マリィの体躯からは考えられないほどの火球が撃ち放たれていたのです。
それはグロムシェイド城の一番高い塔に部分に着弾し、お城のシンボルは無惨にも倒壊していました。
「嘘……?」
最近は肩に乗せると辛く感じるほど大きくなっていましたが、見た目よりもマリィは成長しているようです。
「マリィ、もっと撃てる?」
「がぁぁっっ!!」
まるで任せろと言っているみたい。
ならば私は見守るだけ。私の思いを感じ取ったマリィが何を見せてくれるのか。一度目よりも大きな火球がマリィの口の前で膨らんでいます。
「ちょっと、マリィ……?」
不安になってきました。
マリィが開いた口の前にはロナ・メテオ・バーストと同等の火球が出来上がっています。
「グアアアアッ!!」
巨大な火球が撃ち放たれ、グロムシェイド城の上階部分は完全に崩壊。しかも、広範囲に火災が発生していました。
「火竜やばいな……」
今更ながらに国を滅ぼすと言われている理由を知らされていました。
炎を上げるグロムシェイド城の上空へと辿り着いたあと、私は声を張る。
ここは堂々と突きつけるだけ。罪人を裁く者が現れたことを。
「野蛮なる侵略者ヴァリアント帝国に告ぐ!!」
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