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第八章 絶望の連鎖に
振られた賽の目
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翌朝、私はアークライト大聖堂での礼拝に参加しています。
割と派手なベールと豪華な法衣を用意してくれたみたい。見た感じはどこに出しても恥ずかしくない聖女となっています。
大聖堂は満員となっており、入りきれなかった信徒たちのために映写魔法にて聖堂の外側でも私の話が聞けるようになっているそうです。
小さく礼をすると、大きな拍手で迎えてくれました。
「皆様、ルイ・ローズマリーでございます。此度の訪問は私の強い希望が受け入れられた格好です。信仰心溢れる皆様にお会いしとうございました」
まずは人心掌握から。心を掴んでおかねば、協力など得られないのだと。
瞬時に返される盛大な拍手。どうやら掴みは問題ないみたいですね。
「私は危惧しております。何をかと申しますと、サルバディール皇国とヴァリアント帝国が戦争を始めようとしているのです」
正直に私は覚悟しなければならない。
これより口にするのはサルバディール皇国の政権批判なのです。
かの国は政治と宗教が切り離されているのですが、それでも皇家はラマティック正教会を尊重してくれておりますし、莫大な寄付金をもたらせてくれている。
従って教会の人間としては批判的な内容を口にするべきではありません。
「戦争により得られるものなど何もありません。尊き命が失われるだけでございます。だからこそ、私は議会に対し戦争反対の意志を申し上げております。けれど、議会は聞き流すだけであり、皇国の執政者たちは受け入れてくれないのです」
鳴り止まない拍手。私は手応えを感じています。これならば、きっと賛同してくれるはずと。
カルロには申し訳ないけれど、それが貴方を救う唯一の方法だと私は信じている。
「ルイ様!!」
ここでどうしてかダミアン大司教が壇上へと現れました。
別にまだ問題発言はしていないと思うけど? 私の話を止めようとしているのかしら?
「たった今、入った情報によりますと、既に開戦となったらしいです。よって、そのお話は……」
なるほど。戦争を否定しようと、始まってしまっては無駄ってわけね。
まあでもね、それは織り込み済み。開戦となるのは時間の問題だったもの。
「皆様、残念ながら戦争が始まってしまったようです。私の予知によると、二国間の戦争は飛び火し、平穏なる北の大地ノヴァ聖教国にも災いとなります。帝国は美しきこの国にも魔の手を伸ばすことでしょう」
もう後には戻れない。私は突き進むだけだ。
安住の地を自ら生み出すため、東部三国を平定してみせよう。
私の話に信徒たちはざわつき始めます。
彼らも知っているのです。南東に位置するヴァリアント帝国が事ある度に問題ごとを押し付けていること。帝国は隙あらばこの地を狙っているのだと。
「迎え得る最悪の予知を申し上げます。心してお聞きください」
いつの世も悪が栄える。皇国と帝国が悪であったとしても、より強大な悪の前では赤子も同然なの。
全てを呑み込むのは私よ。漁夫の利なんかいらない。心に満ちた悪意によって全てを手に入れて見せる。
「皇国、帝国、聖教国の三国は共倒れとなり、復興など望めない状況となってしまいます。従って、私は声を上げ、戦争を止めるべくこの地へとやって来ました。民衆の声により、思いとどまらせようと。しかし、もう回避できない未来となっています。私は全てを擲つ覚悟でありますが、皆様はどうでしょうか?」
信徒たちは静まり返ったあと、私の呼びかけに応えています。
立ち上がるのだと。聖教国を存続させるのだと。
「おかげさまで、私も覚悟が決まりましたわ。このあとマクスウェル聖議長とお話をし、聖教軍を組織したいと考えます。もしも予知通りに帝国が攻撃を仕掛けてくるのなら、私が迎え撃ちましょう。命を懸けてお守りいたします。これより始まるのは聖戦です。先陣へと立つ私にどうかお力添えをお願いいたします」
私の話には狂気とも感じられるほどの大声援が返されていました。
聖堂中に響き渡る火竜の聖女コール。彼らは元より愛国心に溢れている。
私が知る前世でも、彼らは僧兵と共に立ち上がって、ヴァリアント帝国と戦っていたのですから。
「ご支援感謝いたしますわ。必ずや悪を討ち、世界に平穏をもたらしましょう!」
盛り上がってきたところで、神の使徒である力を誇示することに。
私は集まった者たちに対して、幸運値を上げる神聖魔法を唱えています。
「ラマティック正教会に光あれ! ホーリー・ブレス!!」
聖堂に降り注ぐ神秘的な輝きに、聖女としての力を見てくれていることでしょう。
既に賽は投げられました。
どのような目を示すのかは神のみぞ知る事象でしょうが、生憎と私の手の平でそれは転がり続けるだけ。
私が望む目が出るまで停止することは許さない……。
割と派手なベールと豪華な法衣を用意してくれたみたい。見た感じはどこに出しても恥ずかしくない聖女となっています。
大聖堂は満員となっており、入りきれなかった信徒たちのために映写魔法にて聖堂の外側でも私の話が聞けるようになっているそうです。
小さく礼をすると、大きな拍手で迎えてくれました。
「皆様、ルイ・ローズマリーでございます。此度の訪問は私の強い希望が受け入れられた格好です。信仰心溢れる皆様にお会いしとうございました」
まずは人心掌握から。心を掴んでおかねば、協力など得られないのだと。
瞬時に返される盛大な拍手。どうやら掴みは問題ないみたいですね。
「私は危惧しております。何をかと申しますと、サルバディール皇国とヴァリアント帝国が戦争を始めようとしているのです」
正直に私は覚悟しなければならない。
これより口にするのはサルバディール皇国の政権批判なのです。
かの国は政治と宗教が切り離されているのですが、それでも皇家はラマティック正教会を尊重してくれておりますし、莫大な寄付金をもたらせてくれている。
従って教会の人間としては批判的な内容を口にするべきではありません。
「戦争により得られるものなど何もありません。尊き命が失われるだけでございます。だからこそ、私は議会に対し戦争反対の意志を申し上げております。けれど、議会は聞き流すだけであり、皇国の執政者たちは受け入れてくれないのです」
鳴り止まない拍手。私は手応えを感じています。これならば、きっと賛同してくれるはずと。
カルロには申し訳ないけれど、それが貴方を救う唯一の方法だと私は信じている。
「ルイ様!!」
ここでどうしてかダミアン大司教が壇上へと現れました。
別にまだ問題発言はしていないと思うけど? 私の話を止めようとしているのかしら?
「たった今、入った情報によりますと、既に開戦となったらしいです。よって、そのお話は……」
なるほど。戦争を否定しようと、始まってしまっては無駄ってわけね。
まあでもね、それは織り込み済み。開戦となるのは時間の問題だったもの。
「皆様、残念ながら戦争が始まってしまったようです。私の予知によると、二国間の戦争は飛び火し、平穏なる北の大地ノヴァ聖教国にも災いとなります。帝国は美しきこの国にも魔の手を伸ばすことでしょう」
もう後には戻れない。私は突き進むだけだ。
安住の地を自ら生み出すため、東部三国を平定してみせよう。
私の話に信徒たちはざわつき始めます。
彼らも知っているのです。南東に位置するヴァリアント帝国が事ある度に問題ごとを押し付けていること。帝国は隙あらばこの地を狙っているのだと。
「迎え得る最悪の予知を申し上げます。心してお聞きください」
いつの世も悪が栄える。皇国と帝国が悪であったとしても、より強大な悪の前では赤子も同然なの。
全てを呑み込むのは私よ。漁夫の利なんかいらない。心に満ちた悪意によって全てを手に入れて見せる。
「皇国、帝国、聖教国の三国は共倒れとなり、復興など望めない状況となってしまいます。従って、私は声を上げ、戦争を止めるべくこの地へとやって来ました。民衆の声により、思いとどまらせようと。しかし、もう回避できない未来となっています。私は全てを擲つ覚悟でありますが、皆様はどうでしょうか?」
信徒たちは静まり返ったあと、私の呼びかけに応えています。
立ち上がるのだと。聖教国を存続させるのだと。
「おかげさまで、私も覚悟が決まりましたわ。このあとマクスウェル聖議長とお話をし、聖教軍を組織したいと考えます。もしも予知通りに帝国が攻撃を仕掛けてくるのなら、私が迎え撃ちましょう。命を懸けてお守りいたします。これより始まるのは聖戦です。先陣へと立つ私にどうかお力添えをお願いいたします」
私の話には狂気とも感じられるほどの大声援が返されていました。
聖堂中に響き渡る火竜の聖女コール。彼らは元より愛国心に溢れている。
私が知る前世でも、彼らは僧兵と共に立ち上がって、ヴァリアント帝国と戦っていたのですから。
「ご支援感謝いたしますわ。必ずや悪を討ち、世界に平穏をもたらしましょう!」
盛り上がってきたところで、神の使徒である力を誇示することに。
私は集まった者たちに対して、幸運値を上げる神聖魔法を唱えています。
「ラマティック正教会に光あれ! ホーリー・ブレス!!」
聖堂に降り注ぐ神秘的な輝きに、聖女としての力を見てくれていることでしょう。
既に賽は投げられました。
どのような目を示すのかは神のみぞ知る事象でしょうが、生憎と私の手の平でそれは転がり続けるだけ。
私が望む目が出るまで停止することは許さない……。
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