青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

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第八章 絶望の連鎖に

裁くべき悪

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 私たちはサルバディール皇国へと戻っています。

 とりあえず、マグヌス教皇に挨拶をしてから大聖堂を出ると、そこには知った顔がありました。

「リック、戻っていたの!?」

「ルイ様、お久しぶりでございます。きな臭くなっておりますので、諜報の任務をこなしておりました」

 どうやら私が与えた魔道書捜索を打ち切って、諜報活動をしていたみたい。それだけ事態が切迫しているのでしょう。

「少し話を聞いても?」

 私たちは近くに部屋を取り、話をすることに。

 時間を費やしたとしても、最新の情報を得ることは必要なのだと。

「議会の暴走により、開戦は近いです。既に帝国は国境を封鎖しており、あらゆる街門が閉じられています。ルイ様とて容易に潜入できないかと」

 国境の封鎖は有益な情報です。余計な道草となるところでした。

 どうやら懸念していたグレン大臣は既に亡き者のよう。議会の暴走にはそういった背景を容易に推し量ることができます。

「姫、どうします? 潜入ならできなくはありませんが……」

 コンラッドはそれでもまだヴァリアント帝国への潜入を考えているみたい。

 私が帝国を滅ぼすと本気で考えているのではないでしょうね?

「道中に色々と戦法を考えていたんだけど、国境を封鎖しているなら行き先はノヴァ聖教国に変更します」

「姫の予知によるとノヴァ聖教国は確か、戦争後にこの地を侵略するのでしたね?」

「ノヴァ聖教国としては敵対する帝国に信仰地を奪われたことが我慢ならなかったみたいね。もっとも彼らは国土を得ようとして侵攻したわけではないから、皇国の地は隣接するセントローゼス王国へと譲渡してしまうの。王国のアウローラ聖教会は同じ宗派だし、強国と敵対しないためにもね」

 どのような世界線にあっても、恐らくヴァリアント帝国が勝利したのなら、ノヴァ聖教国は動き出すことでしょう。

「ではノヴァ聖教国へ赴いて何をなさるのです?」

「まあ、リックとしては良いシナリオじゃないわね。ただ世界規模で考えると悪くないと私は考えている」

 一応は皇太子殿下の右腕であるリック。

 彼にとっては良くないシナリオを私は思い描いています。

「というと、ノヴァ聖教国と共闘するのでしょうか?」

「いえ、共闘などではございません。リック、この世界には悪が存在します。サルバディール皇国とヴァリアント帝国のどちらだと思います?」

 とりあえず説明するしかない。

 今もなお私と契約するリックは命令に逆らえませんが、キチンと説明しておくつもり。

「え? ヴァリアント帝国では……?」

 予想通りの返答がある。

 立場的正義は相容れないもの。皇国に所属するリックには分かるはずがないわ。

 だから私は教えてあげるの。裁くべき悪が何であるのかを。

「いいえ、両方よ――」
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