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第八章 絶望の連鎖に

終わりのない死を

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 真紅の緞帳が再び上がる。

 酷い苦痛の末に私は目を覚ましていました。けれど、この痛みの果てには幸せが待っているはずよ。

 私は再びサルバディール皇国へと戻され、ルークとイセリナの婚約が決定していない時間軸へと戻っているのだから。


 しかしながら、ごく最近に聞いた台詞が私に投げられていました。

「何を仰います? 凄くお似合いです。ルイ様の美しい髪色も浮き上がって見えます。僕は貴方様をエスコートしたいと考えているのですよ。どうぞ僕の腕を取ってください」

 目の前にはセシル。そして私は真っ黒なドレスに赤いボレロを身に纏っています。

「えっ!?」

 記憶との照合はいとも容易く終わっていました。

 なぜなら、つい先ほどの話だから。カルロに喪服ドレスを用意され、茶会に参加したときの記憶だからです。

「嘘よ……? どうしてこんなところでセーブされてんの?」

 てっきりカルロにキスされる場面だと思い込んでいました。

 しかし、私は十三歳に戻ることはなく、十七歳の時点に死に戻っています。

「ルイ様?」

「何かの間違いよ!?」

 セシルには奇妙に思えたことでしょう。けれど、私は正気でいられない。

 記憶に新しい茶会へと戻されたのであれば、それはイセリナとルークが婚約を発表してから一ヶ月も経過したあとなのです。

「キスもしていないのにどうして!?」

 よくよく考えると簡単な話でした。

 現状はアマンダが望んだまま。イセリナとルークが婚約し、私とセシルが腕を組んで貴族たちの前に現れる。

 それはプロメティア世界が救われる関係そのもの。

 濃密なラブシーンはなかったとしても、彼女がセーブするに充分なシチュエーションになっていました。

「これじゃ駄目だ……」

 私は困惑するセシルを放置して、スカートを捲り上げています。

 内股のホルダーからナイフを抜き、気が触れたように胸元へと突き刺していました。

「戻してよ。ねぇアマンダ……」

 血飛沫を上げながら、私は懇願していました。

 女神アマンダに願いが届くように。

「レジュームポイントまで戻して……」

 セーブポイントが更新されたのなら、赤子からやり直すだけ。ルークと共に生きる道はそれしかないの。

 どのような命令だって聞く。だから、この切なる願いだけは叶えて。

 命よりも大事なものに気付いたのよ……。


 私は未だかつてないほど、熱心に祈りを捧げていました。

 少しも試すことなく死に戻りを選んだのなら、彼女も考えてくれるはずと。

 アマンダお願い――――。
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