青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

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第七章 光が射す方角

イセリナの相手は……

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 レセプションパーティから一夜明けて、私は早朝から色々と動き始めています。

 やはり、この世界線はエリカのために神聖魔法を構築したい。

 私が入り込む余地をなくして欲しかった。だからこそ、資料も揃わぬまま、魔法構築に時間を費やしています。

「もう貴族院に行く時間か……」

 行列のことがあったので、少しばかり気後れしてしまう。まあしかし、いびられるのは日常でしたし、気にする必要もありません。

「イセリナ、早く支度して! 貴族院に行くよ!」

 どうしてかカルロからは何も咎められませんでした。

 所有物だと言い切った彼は私が異性とダンスすることに嫌悪感を示さなかったのです。


 二年生であるカルロよりも早く、私とイセリナは貴族院へと向かいます。

「眠たいわねぇ。ダンスで疲れたのに……」

「全員の相手をするからよ? 私は十人くらいで打ち切ったわ」

「ルイは強いわね? 知った顔が続くと断り切れないじゃない?」

 やはり、このイセリナは私が知る悪役令嬢ではないようです。

 この世界線はやることが多すぎた。結果として、王太子妃になれと焚き付けていません。よって、彼女は悪役令嬢どころか、どの世界線よりもポンコツ化しているような気がする。

「それでルイはどなたと踊ったの? つっけんどんの相手はしていないのでしょ?」

 つっけんどんとは恐らくカルロのことでしょう。

 世話になっているというのに、イセリナはまるで気にしていない様子。この辺りは悪役令嬢の名残でしょうかね。

「いや、特には……。強いて言うならば、アルバート貴院長と踊ったわ」

「あら? インテリ系が好みなの? 彼はまだフィアンセがいなかったんじゃないかしら?」

「いないとは言ってたけど、私は別に。つっけんどんの相手をする義務があるしね」

 私の返答にイセリナは諸手を叩いて喜んでいます。どうもカルロのことを良く思っていないのかもしれません。

「ワタクシはセシル殿下に誘われましたわ。色々とお話をしましたの」

 ここで意外な話になる。

 まるで期待していなかったというのに、イセリナはセシルからダンスの誘いを受けたのだという。

「ホントに? どうだった?」

「殿下はまだお子様でしたわね? ダンスも下手くそでしたし……」

 ああ、それね。

 ちなみに王家全般ダンスが苦手なのよ。リズム感がないというか、リードしようとして空回りするというか。

「そこはイセリナがリードすべきでしょ?」

「悩んだのですけど、殿下にお任せしましたわ。失笑されるくらいに酷いダンスでしたわね。自分でも笑ってしまいました」

 せっかくの好機かと思いきや、頭痛の種になっています。

 セシルも十六歳になるというのに、ダンスのリードもできないようでは先が思いやられてしまいますね。

「しかし、ルイのダンス待ちは凄かったわね。蜘蛛の子を散らすように解散させられていたのには爆笑してしまったわ」

 どうやら私が謝罪してお断りした場面をイセリナは見ていたらしいね。

 まあでも、踊ったとして一緒。顔も覚えていないし、待っていた人の顔にも知った人はいなかったし。

「しょうがないでしょ? カルロが怒鳴り込んできたら困るし……」

「心配無用なのに。つっけんどんはダンスの誘いを断れないから。自国の不利益になるかもしれないのよ? 時間一杯まで踊り続ける運命よ」

「イセリナは最後まで踊ったのよね? 誰かいい人いた?」

 気になるのはイセリナの行動です。気になる異性がいたのかどうか。

「ろくな男がいませんでしたわ。こんなことならルイと踊った方が有意義でしたわね」

 現状でイセリナの格に見合う男性は多くない。

 私がダンスをしたアルバート貴院長か、或いは王子殿下の二人。

 候補としてカルロも同格以上であったけれど、つっけんどんと話すイセリナが受け入れるとは思えません。

 少しばかり緊張したけれど、私は問うことにしています。

「イセリナはルーク殿下についてどう思ってる?」
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