青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

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第七章 光が射す方角

大好きな人

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 レセプションパーティーが行われたあと、夜も更けていたというのにソレスティア王城の一室に三人の王子が集まっていた。

「フェリクス兄様、お身体の具合はいかがですか?」

 ここは第二王子フェリクス・ルミナス・セントローゼスの寝室である。

 仲の良い三人の王子たち。寝たきりであるフェリクスを気遣って本日の出来事を彼に伝えているらしい。

「うん、少し体調は良くなったかな。楽しい夜を過ごしたみたいだね?」

「僕はね。でも、ルーク兄様は疲れただけみたい」

「セシルはもう少しご令嬢たちの相手をしろ。俺が全て請け負うなんてあり得ん」

 一応はセシルも参加者だった。

 まだ貴族院には入っていないけれど、王家の人間として歓迎会には参加している。

 パーティーには上位貴族が集っているのだ。お相手を選ぶという目的も王家筋の参加には含まれているらしい。

 ルークは最初から最後までずっとご令嬢たちの相手をしていた。自ら女性を選ぶことなく、順番待ちの行列をひたすら捌いていたという。

「兄様は第一王子だからね。やはり色々な女性を見てもらわなきゃ。王太子妃に相応しい人を探して欲しいと思ってる。だから、僕は壁際に徹していたんだ。まだ貴族院の生徒でもないし、しゃしゃり出るのも違うと思うし」

 セシルは王族の務めとして参加しただけである。

 十六歳である彼が参加した理由はそれだけしかない。

「そういえばルーク兄は意中の人がいたんじゃなかったかな?」

 ここでフェリクスがそのような話を始める。

 確かセシルから聞いた話。同い年のご令嬢に熱を上げているとかどうとか。

 思わぬ質問にルークは頭を掻く。その件については、もう完全に終わったこと。気持ちの整理は付けたはずだ。

「今は他国の人になってしまったからな……」

 判然としない返答にフェリクスは小首を傾げる。

 深読みすると嫌いになったわけではなさそうだ。

「他国の貴族と結婚したってこと?」

 重ねられた質問にルークの目が泳ぐ。

 この話はフェリクスにしたことがない。セシルもまた最悪の結末を迎えた二人について知らせていなかった。

「そうじゃない。でも、そんな感じだ……」

 益々分からない話にフェリクスは眉根を寄せている。

 ルークはセントローゼス王国という大国の第一王子なのだ。

 気に入った女性がいたのなら、妃ではなくとも妾として迎えるくらいわけない立場だというのに。

「フェリクス兄様、ルーク兄様は……」

「セシル、やめろ!」

 セシルが代弁しようとした瞬間、ルークが釘を刺す。

「いやルーク兄、どうか教えてくれませんか? ずっと寝たきりである私は世間の話に疎い。兄上のお相手について聞かせてください」

 どうしてかフェリクスは続きを聞きたいという。ルークの心情はそれとなく分かったはずなのに。

 問われてしまえば、ルークは答えるしかない。ずっと寝たきりのフェリクスが不憫でならなかったからだ。

 都合のいい話しかメイドは口にしないし、悪い話は少しもフェリクスの元まで届かない。話したくない内容であっても、不憫な弟の頼みは断り切れなかった。

 徐にルークは話し始める。まだ痛みを感じる胸に、そっと手を当てながら。

「大好きだった人がいた――」
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