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第七章 光が射す方角

空想

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 私が入場する番になりました。

 エリカが妙なことを口にしたものですから、どうにも緊張しつつ。

 薄暗い通路を抜け、眩しいくらい照明魔法が照らされたパーティー会場に踏み入れると、万雷の拍手が私を迎えてくれました。

『一般受験を満点で通過したルイ・ローズマリー枢機卿です!』

 どうやら一人一人の紹介が貴院長からあるようです。妙に遅い入場はそのせいであったみたい。

『彼女はサルバディール皇国ラマティック正教会の枢機卿ですが、我が国のスラム街を支援しており、孤児たちの自立を自費にて応援されている聖女でもあります! どうぞ皆様、盛大な拍手にてお出迎えください!』

 拡声魔法にて会場中に知らされています。

 皇子殿下に関する話がなかったのは助かりましたが、反応を見る限りは既に周知の事実なのかもしれません。

 鳴り止まぬ拍手。必要以上に脈動する鼓動。エリカに気にするなと言った私ですが、どうしてか高揚していました。

 彷彿と前世の記憶が蘇っています。その場にいた全員の視線を独り占めしたあの夜会。青き薔薇が咲き乱れたあの夜を思い出していました。

「私は……」

 人垣が割れた道を通り、新入生は壇上へと向かうだけ。私だけに向けられた拍手ではなかったとしても、どうしてか心が震えてしまう。

「どうしたいの……?」

 自問自答していました。

 裏方として世界線を終えようとしていた私ですが、まだこんなにも承認欲求が残されていたのかと考えている。

「ああいや、そうじゃない……」

 この感情はもっと奥深いものだ。冴えないOLの願望。幼き日の夢そのものでした。

 お姫様になりたい――。

 素敵なドレスを身に纏い、スポットライトを一身に浴びる。隣には王子様がいて、私をエスコートしてくれるの。

 きっと私は今も同じ夢を見ているのだ。逸る気持ちは全て私の願望を満たしているから。

「王子様か……」

 問題は王子様。称賛を浴びることはできたとして、王子様は手に入らない。

 いえ、待ち望む王子様は手に入らないのです。自ら彼の手を振り切って、私は隣国まで落ち延びていたのですから。

「ルイ様?」

 壇上で呆けていると、エリカが声をかけてくれます。

 本当に優しい子ですね。浮かない表情の私を心配してくれているのでしょう。

「なんでもないわ。美味しいものでも食べて、楽しみましょうか?」

 願わくば前世と同じ形であればと。

 イセリナとエリカが王家に嫁いで行く。私はその様子に過去を重ね合わせ、自己満足的に空想を巡らせるんだ。

 もしも、中身が私だったならと――。
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