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第七章 光が射す方角
平穏に潜む闇
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「オリビアはカルロ殿下にアタックするべきだわ!」
「えええ? 私がですか!?」
「オリビア、ルイは厄介ごとを押し付けてるだけですわ。真に受けるんじゃありません」
せっかく光明を見出したというのに、イセリナが事実を口にした。
またイセリナは私が置かれている状況について、オリビアに全て伝えてしまう。
「というわけで、ルイはカルロ殿下の所有物なわけですわ。ルイは散々殿下をこき使っているので、当然の報いを受けているのです」
「なるほど。カルロ殿下はそのような性癖があられるのですね……」
「いやいや、違うから! 確かに私は殿下に逆らえませんけど、あの方は手すらも握ってこない臆病者。未だ私は純潔を保っております!」
一応は説明しておかないとね。
カルロは奥手であって、所有物だからと無茶をする人ではないのだと。
「ルイ様はカルロ殿下がお嫌いなのでしょうか? とても爽やかで凜々しいお方だと感じたのですけれど……」
「タイプではないかな? 命令されたら断れないんだけど、彼にそのつもりはなさそうだし。オリビアがいい人になってくれたら、私はとっても助かります!」
オリビアを猛プッシュするしかない。
正規のライバル令嬢である彼女であれば、カルロを籠絡するなど容易いことだろうと。
カルロは私の正義感を誤解しているし、本来なら聖母の如く優しさを振りまくオリビアに心酔しているはずだから。
「ルイ様がそう仰るのでしたら……。身分はさておき、私も女性です。素敵な殿方と結ばれたく存じます」
オリビアも幸せを手に入れて欲しい。
ただ彼女のハッピーエンドは亡命という表現しがたい幸せしかありませんが、愛さえあれば大丈夫よね?
特に興味がない私が選ばれるよりも相思相愛がベスト。カルロが私をリリースしてくれたのなら、この世界線に残る面倒事がなくなるというものです。
とりあえず押し付けが成功したのなら、私も出来る限り協力するわ。せめてサルバディール皇国が滅亡しないように。
「イセリナ様はどなたか気になられている男性とかいらっしゃいますか?」
オリビアが聞いた。
うむ、もっと言ってやってくれたまえ。脳天気な姫君は将来のことなど何も考えていないのですから。
「ワタクシはルイと同じですわ。まあ、ルイみたいに出家するつもりはないのですけれど」
「だったら、ルーク第一王子を狙いなよ? イセリナなら充分な資格があるわ」
オリビアに乗っかって、私は背中を押す。
「ワタクシは今後もルイに世話をしてもらうだけですわ。オリビアがカルロ殿下を籠絡してくれると助かります」
この姫君はどこまで私の世話になるつもりかしら?
カルロという邪魔者の排除にオリビアを嫁入りさせるとか悪そのものです。
「頼むから独り立ちして……」
「嫌ですわ! ワタクシはどこまでもルイについていくと決めたのです。他国でも問題ありませんでしたし」
「それはカルロが許してくれたからでしょ? 私はメイドじゃないと言っているのに」
このままでは私は生涯イセリナの世話係となってしまう。
どうにかならないものかと考えていると、
「ルイが結婚して幸せになるのであれば、ワタクシも新しい人生について考えますわ」
イセリナが言った。
どういうこと? イセリナは単に楽をしたいだけじゃないの?
「私が身を固めたら、イセリナも自立するの?」
「自立はしませんわ。ワタクシは次なる世話役の元へ行くだけですの。それが庶民なのか、王子殿下なのは分かりませんが……」
現状でイセリナは当てにできないと分かった。
王太子妃に最も近い存在はエリカであるように思います。
「イセリナには王家の誰かと婚約して欲しいのだけどね……」
「ルイ、それは責任放棄ですわ。最後までワタクシの世話を焼きなさい」
「そんな責任はない!」
私たちは笑い合っていました。
このときには笑い話で済んでいたのです。しかし、この世界線は行き詰まりを見せることに。
リセット不可避の状態へと進むことになってしまいます。けれども、精神状態の安定を優先していた私には分かりませんでした。
早々に対処すべき問題があったなんてことは……。
「えええ? 私がですか!?」
「オリビア、ルイは厄介ごとを押し付けてるだけですわ。真に受けるんじゃありません」
せっかく光明を見出したというのに、イセリナが事実を口にした。
またイセリナは私が置かれている状況について、オリビアに全て伝えてしまう。
「というわけで、ルイはカルロ殿下の所有物なわけですわ。ルイは散々殿下をこき使っているので、当然の報いを受けているのです」
「なるほど。カルロ殿下はそのような性癖があられるのですね……」
「いやいや、違うから! 確かに私は殿下に逆らえませんけど、あの方は手すらも握ってこない臆病者。未だ私は純潔を保っております!」
一応は説明しておかないとね。
カルロは奥手であって、所有物だからと無茶をする人ではないのだと。
「ルイ様はカルロ殿下がお嫌いなのでしょうか? とても爽やかで凜々しいお方だと感じたのですけれど……」
「タイプではないかな? 命令されたら断れないんだけど、彼にそのつもりはなさそうだし。オリビアがいい人になってくれたら、私はとっても助かります!」
オリビアを猛プッシュするしかない。
正規のライバル令嬢である彼女であれば、カルロを籠絡するなど容易いことだろうと。
カルロは私の正義感を誤解しているし、本来なら聖母の如く優しさを振りまくオリビアに心酔しているはずだから。
「ルイ様がそう仰るのでしたら……。身分はさておき、私も女性です。素敵な殿方と結ばれたく存じます」
オリビアも幸せを手に入れて欲しい。
ただ彼女のハッピーエンドは亡命という表現しがたい幸せしかありませんが、愛さえあれば大丈夫よね?
特に興味がない私が選ばれるよりも相思相愛がベスト。カルロが私をリリースしてくれたのなら、この世界線に残る面倒事がなくなるというものです。
とりあえず押し付けが成功したのなら、私も出来る限り協力するわ。せめてサルバディール皇国が滅亡しないように。
「イセリナ様はどなたか気になられている男性とかいらっしゃいますか?」
オリビアが聞いた。
うむ、もっと言ってやってくれたまえ。脳天気な姫君は将来のことなど何も考えていないのですから。
「ワタクシはルイと同じですわ。まあ、ルイみたいに出家するつもりはないのですけれど」
「だったら、ルーク第一王子を狙いなよ? イセリナなら充分な資格があるわ」
オリビアに乗っかって、私は背中を押す。
「ワタクシは今後もルイに世話をしてもらうだけですわ。オリビアがカルロ殿下を籠絡してくれると助かります」
この姫君はどこまで私の世話になるつもりかしら?
カルロという邪魔者の排除にオリビアを嫁入りさせるとか悪そのものです。
「頼むから独り立ちして……」
「嫌ですわ! ワタクシはどこまでもルイについていくと決めたのです。他国でも問題ありませんでしたし」
「それはカルロが許してくれたからでしょ? 私はメイドじゃないと言っているのに」
このままでは私は生涯イセリナの世話係となってしまう。
どうにかならないものかと考えていると、
「ルイが結婚して幸せになるのであれば、ワタクシも新しい人生について考えますわ」
イセリナが言った。
どういうこと? イセリナは単に楽をしたいだけじゃないの?
「私が身を固めたら、イセリナも自立するの?」
「自立はしませんわ。ワタクシは次なる世話役の元へ行くだけですの。それが庶民なのか、王子殿下なのは分かりませんが……」
現状でイセリナは当てにできないと分かった。
王太子妃に最も近い存在はエリカであるように思います。
「イセリナには王家の誰かと婚約して欲しいのだけどね……」
「ルイ、それは責任放棄ですわ。最後までワタクシの世話を焼きなさい」
「そんな責任はない!」
私たちは笑い合っていました。
このときには笑い話で済んでいたのです。しかし、この世界線は行き詰まりを見せることに。
リセット不可避の状態へと進むことになってしまいます。けれども、精神状態の安定を優先していた私には分かりませんでした。
早々に対処すべき問題があったなんてことは……。
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