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第七章 光が射す方角

所有物

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 エリカの闇属性を消去しようと考えた私は寝る間を惜しんで魔法構築に精を出していました。

 何度も死に戻った世界線とは異なる。睡眠時間を削っていかなければ、絶対に間に合わないだろうと。


 ほぼ徹夜をして、私は朝食の席についています。

「ルイ、お前はずっと勉強しているのか?」

 カルロが聞いた。部屋の灯りがついているのを確認したのかもしれません。

「魔道書を探してもらっているでしょ? 魔法を構築しようとしているの」

「試験の勉強もせずにか? リックは涙目になっていたじゃないか?」

 私は魔道書の捜索をリックとコンラッドに依頼している。

 片や皇太子の従者であり、片や暗殺者であるけれど。まあ二人とも暗部みたいなものだし、探すのは得意だろうと考えてのことです。

「ご心配なく。私は勉強などしなくても満点で合格できますわ。リックにお願いしたのは彼ならば早々に見つけられると考えたからです」

 現状で私が飛びまわっている時間は残されていない。

 彼らが戻るまでに、私は知っている古代文字を使って、概略だけでも組んでおきたいと頑張っているのです。

「しっかり寝ないと体力が持たないぞ?」

「しょうがないじゃないですか? 時間が足りないんですよ……」

 それでなくとも飢饉という問題も間近に迫っている。

 治水対策はしたものの、日照不足による不作は明らかでした。

 私は何度かサルバディール皇国までペガサスで飛び、その年の収穫物を大量に買い付けているけれど、飢饉の規模が分からないので今もなお買い足しています。

「世界を救う時間が足りません……」

 刻一刻と迫っています。頑張れるのはあと五年しかない。

 累計なら何年もあるでしょうけれど、生憎と繰り返したい思いはありません。

 五年頑張れば報われるのなら、命懸けで頑張れば良い。私が出した結論はそんなところです。

「またそれか……」

「使命なんだから殿下には関係ございませんわ」

 私は顔を背ける。カルロの信仰心に影を落とすことになろうとも、私の知ったことではありません。

 元はといえば、天界のシミュレーションが曖昧だったせいだもの。

 初めからアナスタシアを選んでいたのなら、私は恋心に気付くはずもなく、エリカに同情することもなかったことでしょう。

 堂々とセシルを籠絡し、世界は救済されたはずです。

「えっ?」

 次の瞬間、私は固まっていました。

 なぜなら、ふて腐れたように顔を逸らした私に、どうしてかカルロが背後から抱きついていたのです。

 手に触れようとすらしなかった彼が、なぜか襲いかかるような行為をするなんて。

「待つのではなかったのですか?」

 怪訝そうに声をかけます。

 時間がない今の状況で相手をする気にはなれませんでした。

「もちろん待つさ。でもな……」

 カルロはその理由を口にします。身体を求めるような行為の弁明について。

 だけど、それは覚悟していたこと。私はカルロの所有物なのですから。

「お前は俺のものだ……」
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