青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

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第七章 光が射す方角

訪問者とは

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 カルロに命令され、私は机に向かっていました。

 かといって勉強する気にはなれません。

「何年、生きてると思ってんのよ。試験とか満点じゃないかな……」

 無理矢理に持たされた教本をペラペラと捲ってみる。

 魔法理論の教本だったのですが、まあやはり知っていることばかりです。

「んん? 属性付加?」

 知らない内容ではなかったのですけれど、どうしてか興味を惹く。

 教本には武器や防具に属性を付加できるという魔法について書かれていました。

「付加できるってことは消すこともできるのかしら?」

 属性武具の性能は語るまでもありません。

 属性による弱点が生まれるのは仕方ありませんが、基本的に属性が発現した武具は超高性能であったりします。

 教本の魔法は一時的な属性付加でしたけれど、構築した魔法によっては永遠に付加し続けることも可能だと思う。

「永遠に消し去ることができるのなら……」

 私は光明を見出していました。

 属性の除去。これからの時間を使って取り組むべき内容に違いないのだと。

「エリカの闇属性を消去すれば良い……」

 プロメティア世界で問題となっているのは魔王因子です。

 それはエリカが持つ闇属性が原因。本を正せば火竜の聖女が巨悪から受けたという闇の呪いが関係しています。

「エリカから闇属性を排除すれば魔王因子は発現できないんじゃ……」

 魂に刻み込まれた呪いのような闇属性。魔王因子発現の要素であるのは間違いありません。

「エリカには幸せになってもらいたい」

 私は決意しました。恐らく、このままだと仲良くなった彼女の恋路を邪魔しなければならない。

 エリカはとても素直で良い子です。純粋で真っ直ぐに生きられる人。私と対極にいるような彼女は、やはり幸せになるべきでした。

 ただ問題もあったりします。エリカを誘導してはいけないという命令。世界を照らすエリカを下手に動かしてはならないという話です。

 まあでも、駄目ならリセットされるだけだし、そもそも闇の部分が世界を照らすわけではないのですから、問題ないように思えます。

「私ならできる……」

 付加術式に手を加え、正反対の効果を得られるようにする。

 それができたのなら、永続的な効果が得られるように手を加えるの。闇属性だけを的確に除去しなければなりません。

「頭で考えるのは簡単だけど……」

 ざっと魔法術式を描いてみましたが、成功しそうな気がしない。

 簡略化された現在の術式では大まかな指定となってしまうのです。間違って光属性まで消去してしまうと、エリカはそのアイデンティティを失う。

 幸せになるどころか、授爵さえも取り消しになってしまうことでしょう。

「古代魔法の構文を組み込んでいけば何とかできるんじゃ?」

 私は諦めない。再び魔道書を取り寄せて、何とか完成させたいと思う。

 友達であるエリカのためであり、最終的には私のためにもなるのだから。

「まだ時間は残されている。貴族院の二年が終わるまでに完成させるんだ」

 命令されたから入るだけだった貴族院に目標を立てられています。

 今から卒業までの三年半。私は闇属性を消去する魔法を構築し、エリカに施すのだと決めました。

「絶対にやり遂げてみせる」

 魔道書を集めるのは簡単なことではないのですけれど、前世で見つけた場所以外を探せば未知なる魔道書が発見されるかもしれません。

 そうと決まれば行動あるのみ。

 立ち上がった私は意気揚々と部屋を出て行きます。

「おわ! ルイ様!?」

 どうしてか扉の外に執事がいました。

 危うくぶつかってしまうところです。私の部屋の前で何をしていたのでしょうかね。

「どうしたの?」

「ああいえ、ルイ様にお客様です」

 どうやら私に来客とのこと。

 嫌な予感がしていましたが、既に私が屋敷にいることを伝えたあとでしょうし、居留守は使えません。

「誰なの?」

 ルークであれば会えない。ああいや、会いたくない。

 私の決意は揺るがないと思いますが、彼を前にして絶対とは言い切れないのですから。

 しかしながら、来客はまるで予想していない人物でした。

 告げられた名に私は呆然とするだけです。

「スカーレット子爵様です……」
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