青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

文字の大きさ
上 下
114 / 377
第六章 揺れ動く世界線

幸せを願う

しおりを挟む
「私は死すら厭わない……」

 やはり難色を示すのはカルロです。

 戻ってくるなと言った彼は本当に死んで欲しくないのかもしれません。

「ルイ、やり直しのたびに死んでいたのでは心が持たないぞ?」

「どうせ巻き戻るだけです。それに殺されるだけではありません。目的を遂げるために、私は障害となる者を排除していくつもりですわ」

 嫌われたとして構わない。もう愛は捨ててきたんだ。

 あの世界線。私の愛はあのルークに預けたままなのだから。

「どこまでも強いな。君は……」

 思考が年齢相応でないことは真相を知るカルロなら分かってくれたでしょう。

 私の興味は協力してくれるのかどうかだけしかありません。

「今のところ殿下に見返りはありません。そればかりか損ばかりですわ。それでも私に協力いただけるのでしょうか?」

「くどい。ルイの自己犠牲を認めるわけにはいかない。でも、気高き思考をする君のことは好意的に捉えている。目的が世界を救うためであるのなら、俺は協力を惜しまない」

「聖人ですのね? でも感謝いたしますわ。頼れる者がいない中で、貴方様の助力はとても心強い。此度はもう戻ることなどないと誓いましょう」

 もう戻ってくるつもりなどない。

 彼が戻ってくるなと言うのなら、約束するだけだ。他に支払う対価など私にはないのだから。

「とりあえず今は教会側の同意を得たところ。あとは議会の承認を残すだけだ。しかし、君が話す通りであれば、承認されるのだろうな」

「ええ、間違いなく。火竜の聖女についてお調べになったのでしょう? 私の正当防衛を認めていただけることでしょうし、三日後に私はルイ・ローズマリー枢機卿として存在を許されることになります。加えて一ヶ月後にはランカスタ公爵がお見えになります。彼との交渉により、私は現世界線の突破口を見出すつもりですわ」

 お金のことなら髭を頼るしかない。

 スカーレット子爵領が使えない今となっては有利な条件を突きつけるよりも、彼の利益だけを優先しよう。

 最低でもランカスタ公爵領内の治水だけでもしてもらわなければ、キャサリン・デンバーの誕生パーティーすら参加できなくなるのですから。

「やはり一度経験したことなのだな?」

「嘘を言ってどうするのです? 死ねるものなら死にたいですわ……」

「そんなことは言うな!!」

 間髪入れずカルロが声を荒らげていました。

 彼は本当に真っ直ぐな人です。悪に染まった私の死ですら許してくれないのですから。

「たとえですよ。怒鳴らなくても……」

「怒鳴ったのは悪かった。でも、俺はルイも幸せになれる方向で模索して欲しいだけだ」

「私の幸せとかそれこそあり得ない。愛を履き違えた女には不幸こそが相応しいのですから」

 頭を振るカルロだけど、一貫して自己犠牲を口にする私にもう文句を並べませんでした。

 分かってくれたら良いの。身体は好きにしてくれて構わない。けれど、心だけは私のもの。

 幸せになる唯一のルートが閉ざされているのだから、私には不幸しか待っていない。

 そもそも幸せなんて願っちゃいけないのよ……。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

処理中です...