青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

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第六章 揺れ動く世界線

二度目のキス

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 まさかエリカが赤斑病に罹患するなんて。

 過度に変動した世界線はまるで私が知らないものになっていました。

 リスタートは十二歳の場面。ルークが不意打ちでキスをするシーンに戻るはず。

(えっ……?)

 しかし、私の眼前にはルークではなく、カルロの姿があります。明らかに異なる場面でした。

(うそ? セーブされた!?)

 カルロの存在は明確に保存状態の更新を意味しています。

 どうしてか、滅茶苦茶になった世界線でアマンダはセーブしていたようです。

「君は自分を大切にしろ。使徒だからと未来を捨てるなんて馬鹿だ。愛の女神はきっと君の幸せも願っている。美しき女神様の愛は平等に与えられるもの。だから、自分を捨てて世界のために動くだけだなんて、愛の女神が望むことじゃない。少なくとも俺は君の行為を容認できないよ。もう悪役は演じないでくれ」

 ひょっとして自分が褒められたから?

 愛の女神が云々と称賛されたことがセーブポイントの更新に繋がったんじゃないの?

 聞き覚えのある台詞に私は確信していました。あの駄女神ならあり得ると。

 カルロには悪いけれど、私は女神アマンダを褒め称えられるほど盲目的な使徒ではないし、ほんの僅かにも尊敬していないのよ。

 でも、本当にこの世界線でいいの?

 ねぇ、アマンダ? ルークをこっぴどく振った世界は酷く歪んでいるのよ?

「俺は君の心が泣いているのを知ってしまった。こんなにも綺麗な心を君はしていたのに」

 言ってカルロは頬にキスをした。

 本当に記憶のままです。やはり私はあの日に戻って来てしまったみたい。

 少し考えてみる。私はどうしてこの時間軸に戻って来たのか。なぜアマンダは予想もつかない世界線でセーブしたのか。

 きっと承認欲求だなんて低俗な意味合い以外にもあるはずだと。考えられる理由はアマンダもこの世界線に光明を見出していたから。

 私だって途中まではいい感じだと思っていたのよ。恐らく彼女はこの世界線で突破できると考えているはず。

(イチかバチかだろうね……)

 次が駄目なら、レジュームポイントまで戻されるでしょう。

 この世界線の途中でセーブしたアマンダは私を赤子に戻すしかできないのですから。


 私は決めました。

 アマンダがその気であるのなら、徹底的にカルロを利用しようと。

 また、それは間違いじゃないと思う。全てを伝えた彼は私の味方でいてくれるはず。

 悩むことなく、私はこの現状に秘められた事実を口にしています。

「カルロ殿下、私にキスをするのは二度目ですわ……」
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