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第五章 心の在りか

光の聖女

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 セントローゼス王国首都ルナレイク。貧民街にある教会は大騒ぎとなっていた。

「エリカ、貴方何をしたの!?」

 スラムともいうべき一角にある小さな教会。ここには大勢の孤児たちが暮らしている。

 売り物にならなくなったパンや野菜クズなどしか寄付されない教会に大いなる輝きがあった。

 怪我をした孤児を癒やす光。それを放つ者も孤児であり、少女でもあった。

 けれど、あり得ない効力を発揮した魔法が修道女の目の前で放たれている。

「治った! シスター様、クロンの怪我が治りました!」

 シスターは呆然と顔を振っている。

 それもそのはず、怪我をした孤児は暴漢に刃物で斬り付けられたのだ。

 治癒士であっても回復させられない深い傷を少女が治してしまうなんてと。

「これは……?」

 シスターは本部に報告するべきだと思う。

 回復魔法は水属性や風属性でも使用できるけれど、ここまでの回復力は見込めない。

 だとすれば何か。シスターには思い当たる節があった。

「光属性魔法――――」

 普段ならば思いつかなかったであろうが、今や光属性魔法は貧民街にまで噂されている。

 火竜の聖女なる光属性の使い手がこの世を去ったと噂されていたからだ。

「この子は聖女の生まれ変わりかもしれない……」

 唐突に光属性魔法を放った理由はそれだとしか思えなかった。

 火竜の聖女が憑依したのだと。エリカという孤児は光属性に目覚めたのではないかと。

「エリカ、今の魔法はしばらく使っちゃ駄目よ?」

「駄目なのでしょうか?」

「しばらくって言ったでしょ? どうしても使うのなら、人気のない場所で使うこと。約束してくれる?」

 シスターの話であればエリカは頷くだけ。

 ずっと世話をしてくれた彼女の話は間違いないと思えている。

「分かりました。そのようにいたします!」

「いい子ね。もしかすると、この貧民街も救われるかもしれません。エリカ、愛の女神アマンダ様に感謝を述べましょう」

「はい、シスター様!」

 新たな光属性魔法の使い手が世界に誕生していた。

 それも火竜の聖女が失われたと騒ぎになってから一年も経たずに。

 世界は動き始める。二人の光属性を持つ少女を中心にして。

 望むはずもない結末に向けて加速し始めていた。
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