青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

文字の大きさ
上 下
93 / 377
第五章 心の在りか

告白

しおりを挟む
 コンラッドと契約を終え、私は美味しかった串焼きを再び購入。宿の部屋で食べようと戻って来ました。

 すると宿の入り口に大きなフード付きマントを被った男性が立っています。

 気にせず通り過ぎようとするも、私は声をかけられていました。

「部屋に入ってもいいか?」

 私は立ち止まる。私のことを知る者は少ない。

 加えて聞き覚えのある声に私は頷いて返しています。

(考えていたより早いな……)

 皇国の貴族を殺めた私を受け入れるのは苦労すると考えていたというのに。

「どうぞ、不審者様……」

 目を合わせず、手招きをします。

 怪しい男はカルロ皇太子殿下に他なりません。この宿を取ってくれた方であり、一応は私を信用してくれているはずです。

 部屋に入るや、カルロ皇子はフードを外しました。

「満喫しているようじゃないか?」

「串焼き食べます? 美味しいですよ」

 皇子殿下を気にすることなく、私はマリィと串焼きをシェアしています。

 何の肉なのか分かりませんが、とにかく柔らかくて味付けも好みです。

「君は本当に貴族の令嬢なのか?」

 串焼きにかぶりつく私を無作法に感じたのでしょうかね。軽蔑の視線のようにも見えました。

「いらないのならあげません……」

「ああいや、食うよ。せっかくの機会だからな」

 皇子殿下が街の露店で買い食いなどできるはずもないよね。

 でも、それは高級品なのよ。露店では端銭単位が基本だけど、それは銅貨一枚もするんだから。

「美味いな!」

「でしょ? かぶりつくのが平民の礼儀。ナイフとフォークじゃ味わえませんよ」

 このあと二人して無言で食べ続けました。熱々の内に食べなきゃ美味しさが半減してしまいますし。

 一息ついたあと、私はカルロに話しかけます。

「殿下にも理解できないことがあるのですよ。知ろうとしなければ分からないことが……」

 よそ者の私が美味しい串焼きを知っていた。

 それは、この地を治めるカルロには分からなかったことです。

「予知のことか?」

 変装してまで宿に現れたカルロが皇様や議会の承認を得られたとは思えない。

 吉報を届けに来たのではなく、秘密裏に会いに来たのだと考えられます。

「あそこまで口にして信じてもらえないのです。全てを語ったとして斜めに構えられては届きませんよ……」

 私としては既にコンラッドを雇った。だから最低限のことはできたと思う。

 ただサルバディール皇国の協力を取り付けるのは難しいとも考えます。

「まだ何か隠しているんだろ? 教えてくれ。俺は父上たちを説得したいんだ……」

 どうやら失敗したからこそ現れたみたいね。でも、准男爵を殺めた私を庇護するなんて無理な話よ。

「絶対に理解できませんよ?」

 少しばかり逡巡するけれど、二人きりだし話しても良いかなと思える。

 千年以上に亘り、誰にも話したことのない世界の事実を。

 頷くカルロを見るや、私は語り始めます。この身を地獄に引きずり込んだ忌々しい話の顛末を……。

「私は転生者なのです――」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...