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第五章 心の在りか
毒使いのサイファー
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「毒使いのサイファーさん……」
そう言った私に、もの凄い殺意が向けられていました。
肌を斬り裂くほどの殺気が発せられています。
「お嬢さん、冗談が過ぎる。誰に聞いた? 仲介人ではないはず」
「誰にも聞いていない。私は未来予知ができる。その予知に貴方が出てきただけよ」
やはり顔を振るコンラッド。唐突に予知だなんて話をされても困惑するのは当たり前か。
「今より二年後、貴方は隣国のリッチモンド公爵に雇われ、イセリナ公爵令嬢を毒殺する首謀者なのよ」
ここは具体的に話をする。少しでも彼の興味を惹くように。
「その予知では、まんまと私も殺されてしまった。だから、わざわざサルバディール皇国まで来たのよ。闇ギルドに行くつもりだったのだけど、偶然に見かけたので追いかけただけ」
鋭い視線が向けられました。
やはり詳しく語ったのは正解かもしれません。
「私を雇うつもりか? 安くはないぞ?」
「平気よ。私はミスリル鉱石をたんまりと持っている。ほら……」
言って私はアイテムボックスからミスリル鉱石をバラバラと取り出してみせる。
「これでも一部よ。末端価値ならば白金貨六枚分相当……」
ようやくコンラッドは笑みを浮かべた。
ま、貧乏にしか見えないからしょうがないわね。
「私は一見の依頼者から直接依頼を受けない。だが、話は聞いてやろう」
「この子、直ぐに火球を吐くから、黒焦げにならないように注意してね? それで端的にいうと、面倒な貴方を先に組み込んでおきたい。私はイセリナ様を守らねばならないのですから」
「暗殺者に守護させるつもりか? 馬鹿らしい。私は殺める者。守りたいのであれば傭兵でも集めていろ」
興味を示さないコンラッド。とはいえ織り込み済みです。
彼が話す通りだもの。暗殺者に護衛を頼むなど筋違いなのですから。
「短慮な方ね? いつ私が護衛を頼むと言いました? 当然、殺しの依頼ですわ」
眉根を寄せるコンラッドに私は告げるだけだ。
狂気とも思える計画の最終目標について。
「リッチモンド公爵を亡き者とします……」
大物過ぎる依頼にコンラッドは息を呑んでいる。
それもそのはず隣国の公爵家ともなれば、小国の王家筋相当の難易度となります。
生半可な依頼ではないことが理解できたはず。
「私を雇う者を先に雇い、逆に殺めろと?」
「暗殺者の美学は理解していますわ。間接的に殺すだけです。言い逃れできない証拠をねつ造し、断罪に追い込む。公爵家といえども、極刑は避けられないほどの冤罪をでっち上げます。その冤罪とは……」
予想していなかったのか、コンラッドは呆然と頭を振る。
でもね、これからなのよ。水を得た魚のような顔をする貴方が目に浮かぶわ。
「ルーク・ルミナス・セントローゼス第一王子の暗殺容疑よ……」
私はどうしてもルークを王太子にしたい。
私はそれを贖罪とするの。犯した大罪の後始末として。
「私が王子殿下の暗殺をそそのかすのか?」
「でっち上げだと言ったでしょ? 彼はそもそもイセリナ公爵令嬢を狙って貴方を雇うのよ。会場には彼女だけでなく、王子殿下もやって来る。さもリッチモンドが王家転覆を計画しているかのように毒殺するのです。サイファー、貴方は対象から離れていても毒を仕込める。実行役は適当な執事にさせたらいい。簡単でしょ?」
ニヤリとする私にコンラッドは再び乾いた笑い声を上げる。
とんでもない計画を耳にした彼は面白く感じていたことでしょう。
「やはり予知に見たのか?」
「私は何でも知っているわ。貴方が持つ毒の種類から、現状で暇を持て余していることまで。更には……」
前世界線で貴方に直接聞いたことよ。きっと気に入ってもらえるはずだわ。
邪悪な笑みを浮かべながら、私は言い放っている。
「主人が悪であるほど良いのでしょう?――」
そう言った私に、もの凄い殺意が向けられていました。
肌を斬り裂くほどの殺気が発せられています。
「お嬢さん、冗談が過ぎる。誰に聞いた? 仲介人ではないはず」
「誰にも聞いていない。私は未来予知ができる。その予知に貴方が出てきただけよ」
やはり顔を振るコンラッド。唐突に予知だなんて話をされても困惑するのは当たり前か。
「今より二年後、貴方は隣国のリッチモンド公爵に雇われ、イセリナ公爵令嬢を毒殺する首謀者なのよ」
ここは具体的に話をする。少しでも彼の興味を惹くように。
「その予知では、まんまと私も殺されてしまった。だから、わざわざサルバディール皇国まで来たのよ。闇ギルドに行くつもりだったのだけど、偶然に見かけたので追いかけただけ」
鋭い視線が向けられました。
やはり詳しく語ったのは正解かもしれません。
「私を雇うつもりか? 安くはないぞ?」
「平気よ。私はミスリル鉱石をたんまりと持っている。ほら……」
言って私はアイテムボックスからミスリル鉱石をバラバラと取り出してみせる。
「これでも一部よ。末端価値ならば白金貨六枚分相当……」
ようやくコンラッドは笑みを浮かべた。
ま、貧乏にしか見えないからしょうがないわね。
「私は一見の依頼者から直接依頼を受けない。だが、話は聞いてやろう」
「この子、直ぐに火球を吐くから、黒焦げにならないように注意してね? それで端的にいうと、面倒な貴方を先に組み込んでおきたい。私はイセリナ様を守らねばならないのですから」
「暗殺者に守護させるつもりか? 馬鹿らしい。私は殺める者。守りたいのであれば傭兵でも集めていろ」
興味を示さないコンラッド。とはいえ織り込み済みです。
彼が話す通りだもの。暗殺者に護衛を頼むなど筋違いなのですから。
「短慮な方ね? いつ私が護衛を頼むと言いました? 当然、殺しの依頼ですわ」
眉根を寄せるコンラッドに私は告げるだけだ。
狂気とも思える計画の最終目標について。
「リッチモンド公爵を亡き者とします……」
大物過ぎる依頼にコンラッドは息を呑んでいる。
それもそのはず隣国の公爵家ともなれば、小国の王家筋相当の難易度となります。
生半可な依頼ではないことが理解できたはず。
「私を雇う者を先に雇い、逆に殺めろと?」
「暗殺者の美学は理解していますわ。間接的に殺すだけです。言い逃れできない証拠をねつ造し、断罪に追い込む。公爵家といえども、極刑は避けられないほどの冤罪をでっち上げます。その冤罪とは……」
予想していなかったのか、コンラッドは呆然と頭を振る。
でもね、これからなのよ。水を得た魚のような顔をする貴方が目に浮かぶわ。
「ルーク・ルミナス・セントローゼス第一王子の暗殺容疑よ……」
私はどうしてもルークを王太子にしたい。
私はそれを贖罪とするの。犯した大罪の後始末として。
「私が王子殿下の暗殺をそそのかすのか?」
「でっち上げだと言ったでしょ? 彼はそもそもイセリナ公爵令嬢を狙って貴方を雇うのよ。会場には彼女だけでなく、王子殿下もやって来る。さもリッチモンドが王家転覆を計画しているかのように毒殺するのです。サイファー、貴方は対象から離れていても毒を仕込める。実行役は適当な執事にさせたらいい。簡単でしょ?」
ニヤリとする私にコンラッドは再び乾いた笑い声を上げる。
とんでもない計画を耳にした彼は面白く感じていたことでしょう。
「やはり予知に見たのか?」
「私は何でも知っているわ。貴方が持つ毒の種類から、現状で暇を持て余していることまで。更には……」
前世界線で貴方に直接聞いたことよ。きっと気に入ってもらえるはずだわ。
邪悪な笑みを浮かべながら、私は言い放っている。
「主人が悪であるほど良いのでしょう?――」
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