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第四章 歪んだ愛の形
歪な愛の形
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「それでお前はアナスタシア嬢に付き従っているというわけか?」
「口は悪いのですけど、彼女は常に正しいです。真っ直ぐに突き進む行動力を持っています。目的を達成するために、冒険者となってしまうご令嬢が他に存在しますか? 彼女の正義に関しては信じて問題ありません。彼女の敵とならない限りは……」
リックの報告はカルロを頷かせています。
先ほどの謁見を見ても、それは明らかでしょう。皇様や重鎮たちを相手にしても一歩も引かないどころか、煽っていましたからね。
私にとって協力を要請することは、対等な関係以上でなければならないのだと理解してもらえたはず。
「アナスタシア嬢、再度謝罪申し上げる。うちの連中も悪気はないんだ。ただ君の格好や発言がどうしてもな……」
まあ小汚いのは当たり前です。何しろ私はボロボロの服を二着しか持っていないのですから。
それこそ奴隷として入国しても疑われないくらいに。
「カルロ殿下は私に協力してくださるのですか?」
「聞かせて欲しい。何が起きようとしているんだ?」
リックが語ったままでしたけど、私はカルロ殿下に全てを伝えました。
過度に都合の良い嘘を。サルバディール皇国は既に味方するしかない状況に追い込まれていることを。
「リックが付き従うわけだな。その状況ではどうしても我が国は疑われてしまう。父上も話くらい聞くべきなのに、議員たちは大半が戦争容認派なんだよ」
やはり議会は帝国との戦争を画策しているようです。
ということは最初から私の話を聞くつもりがなかったということになります。
「私は首謀者であるリッチモンド公爵を断罪へと追い込むつもりなのです。協力いただいたサルバディール皇国に損はさせません。セントローゼス王国との結びつきは強固になり、戦争が起きたとしても援軍が期待できます。ソフィア姫殿下とセシル殿下の橋渡しまで請け負うつもりですわ」
嘘で固めた話だけど、褒美に関しては嘘じゃない。
私は口にした通りにガゼル王へ伝えようと思う。両国の関係性や二人の婚姻に関してまで。
カルロは即決こそしませんでしたが、私の話に何度も頷いていました。
「城下に部屋を用意する。俺から今の話をしてみよう。帝国との戦争はともかく、セントローゼス王国との同盟関係は我が国にとって有益だ。是非ともアナスタシア嬢が話す通りの形としたい」
受けるしかないのよ。断るのなら、逆に罪を背負うのだから。
まあでも、数日くらいは待ってあげる。私はこれでも気が長いと思っているのだから。
「よろしく願います。必ずやイセリナ様を救わねばなりません。全てはそこから始まるのですから。私は諸悪の根源であるリッチモンド公爵を追い詰め、王子殿下を守り抜く。その上でサルバディール皇国の無実を証明いたしますわ」
やるべき事は多岐に亘っている。かといって、それは羅列する内容があるだけだ。
本質はもっとシンプル。ただリッチモンド公爵家を廃爵に追い込むだけなのです。
カルロは理解したようで、どうしてか問いを投げていました。
「アナスタシア嬢、君はどうしてそこまで行動する? 予知を見ただけならば放置しても構わないだろ? 確か君の所領と問題の土地は山脈で隔たっているはず」
まあ確かに。南部で戦争が起きようともスカーレット子爵領には無関係です。
今のところ、どこの寄子でもないのですから。
「私には選べなかっただけですよ……」
私は真意を告げることにした。
嘘を塗り重ねた謀略の最後だけは本心を口にしています。
「歪な愛の形しか……」
「口は悪いのですけど、彼女は常に正しいです。真っ直ぐに突き進む行動力を持っています。目的を達成するために、冒険者となってしまうご令嬢が他に存在しますか? 彼女の正義に関しては信じて問題ありません。彼女の敵とならない限りは……」
リックの報告はカルロを頷かせています。
先ほどの謁見を見ても、それは明らかでしょう。皇様や重鎮たちを相手にしても一歩も引かないどころか、煽っていましたからね。
私にとって協力を要請することは、対等な関係以上でなければならないのだと理解してもらえたはず。
「アナスタシア嬢、再度謝罪申し上げる。うちの連中も悪気はないんだ。ただ君の格好や発言がどうしてもな……」
まあ小汚いのは当たり前です。何しろ私はボロボロの服を二着しか持っていないのですから。
それこそ奴隷として入国しても疑われないくらいに。
「カルロ殿下は私に協力してくださるのですか?」
「聞かせて欲しい。何が起きようとしているんだ?」
リックが語ったままでしたけど、私はカルロ殿下に全てを伝えました。
過度に都合の良い嘘を。サルバディール皇国は既に味方するしかない状況に追い込まれていることを。
「リックが付き従うわけだな。その状況ではどうしても我が国は疑われてしまう。父上も話くらい聞くべきなのに、議員たちは大半が戦争容認派なんだよ」
やはり議会は帝国との戦争を画策しているようです。
ということは最初から私の話を聞くつもりがなかったということになります。
「私は首謀者であるリッチモンド公爵を断罪へと追い込むつもりなのです。協力いただいたサルバディール皇国に損はさせません。セントローゼス王国との結びつきは強固になり、戦争が起きたとしても援軍が期待できます。ソフィア姫殿下とセシル殿下の橋渡しまで請け負うつもりですわ」
嘘で固めた話だけど、褒美に関しては嘘じゃない。
私は口にした通りにガゼル王へ伝えようと思う。両国の関係性や二人の婚姻に関してまで。
カルロは即決こそしませんでしたが、私の話に何度も頷いていました。
「城下に部屋を用意する。俺から今の話をしてみよう。帝国との戦争はともかく、セントローゼス王国との同盟関係は我が国にとって有益だ。是非ともアナスタシア嬢が話す通りの形としたい」
受けるしかないのよ。断るのなら、逆に罪を背負うのだから。
まあでも、数日くらいは待ってあげる。私はこれでも気が長いと思っているのだから。
「よろしく願います。必ずやイセリナ様を救わねばなりません。全てはそこから始まるのですから。私は諸悪の根源であるリッチモンド公爵を追い詰め、王子殿下を守り抜く。その上でサルバディール皇国の無実を証明いたしますわ」
やるべき事は多岐に亘っている。かといって、それは羅列する内容があるだけだ。
本質はもっとシンプル。ただリッチモンド公爵家を廃爵に追い込むだけなのです。
カルロは理解したようで、どうしてか問いを投げていました。
「アナスタシア嬢、君はどうしてそこまで行動する? 予知を見ただけならば放置しても構わないだろ? 確か君の所領と問題の土地は山脈で隔たっているはず」
まあ確かに。南部で戦争が起きようともスカーレット子爵領には無関係です。
今のところ、どこの寄子でもないのですから。
「私には選べなかっただけですよ……」
私は真意を告げることにした。
嘘を塗り重ねた謀略の最後だけは本心を口にしています。
「歪な愛の形しか……」
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