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第四章 歪んだ愛の形

カルロ・サルバディール皇太子殿下

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「頭をお上げください、カルロ殿下……」

 どうしようかな。ここに集った者たちの印象は最悪だと思うし、今さら協力を願うなんて違うと感じる。

 少しばかり熱くなりすぎたかなと反省です。

「私はもうセントローゼス王国へ戻ります。時間の無駄でしたわ……」

 自業自得なんだけど、やはり他国から介入するのは難しいと思う。できればソフィア殿下とセシルがくっついて欲しかったのだけどね。

 言って歩き出す私はマリィとリックを引き連れ、謁見の間を後にします。

「アナスタシア様、あのような対応では協力など得られません!」

「ごめんなさいね。もう契約は解除するわ。好きにしなさい」

「いえ、私は貴方様に従います。今後について話し合いましょう」

 どうしてかリックは契約の解除に乗り気ではありません。

 それどころか、まだ私の世話をしてくれるみたい。

「貴方も見たでしょ? 私は完全な悪役なの。力でねじ伏せるしかなかった。でも、カルロ殿下が頭を下げた時点で私の負けよ」

「サルバディール皇国に疑惑の目が向いている話をされたら良かったのです」

「それこそ無駄。信用されていないのにできないでしょ?」

 リックは本当に忠臣なのでしょうね。

 私の嘘を信じるがあまり、最悪の状況を脱しようと行動しているのだから。

「リック、疑惑とは何の話だ!?」

 ここで乱入者。どうやら皇様たちとは異なり、彼は私たちについて来たようです。

 頭を下げるだけはあって、私の力をちゃんと見極めているらしい。

「殿下、実をいうとアナスタシア様は我が国を救おうと足を運ばれているのです。実際に我が国の危機も口にされていましたけれど……」

 とりあえずリックに任せておきましょうか。

 彼が何を考え、どう行動したいのかを見届けてみます。

「実はセントローゼス王国内でサルバディール皇国が非常に危うい立場となっています。特定の貴族へ毒物を輸出しているだけでなく、我が国の暗殺者が王子暗殺という愚行を犯す未来があるのですよ」

「王子の暗殺だと?」

 流石にカルロも困惑顔をしている。

 ただ冷静に聞いてもらえるのは有り難いね。リックの話だからかもだけど、カルロは否定することなく聞いているのだから。

「ルーク第一王子ですよ。デンバー侯爵家でのパーティーにおいて、ルーク殿下が毒殺されるのです。あろうことかデンバー侯爵家は我が国から大量の毒物を輸入しており、王子殿下を殺めた暗殺者は我が国にて活動しているサイファー。二つの事実により、サルバディール皇国は嫌疑の目を向けられるというわけです」

 流石にカルロも息を呑んでいます。

 帝国ときな臭い関係にあるというのに、大国セントローゼス王国ともめ事を起こす余裕などあるはずもありません。

 嘘で塗り固められた真相を知ったカルロは果たしてどう反応するのでしょう。

 隣国の皇太子カルロ・サルバディール殿下に、ここは期待してみましょうかね。
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