88 / 377
第四章 歪んだ愛の形
カルロ・サルバディール皇太子殿下
しおりを挟む
「頭をお上げください、カルロ殿下……」
どうしようかな。ここに集った者たちの印象は最悪だと思うし、今さら協力を願うなんて違うと感じる。
少しばかり熱くなりすぎたかなと反省です。
「私はもうセントローゼス王国へ戻ります。時間の無駄でしたわ……」
自業自得なんだけど、やはり他国から介入するのは難しいと思う。できればソフィア殿下とセシルがくっついて欲しかったのだけどね。
言って歩き出す私はマリィとリックを引き連れ、謁見の間を後にします。
「アナスタシア様、あのような対応では協力など得られません!」
「ごめんなさいね。もう契約は解除するわ。好きにしなさい」
「いえ、私は貴方様に従います。今後について話し合いましょう」
どうしてかリックは契約の解除に乗り気ではありません。
それどころか、まだ私の世話をしてくれるみたい。
「貴方も見たでしょ? 私は完全な悪役なの。力でねじ伏せるしかなかった。でも、カルロ殿下が頭を下げた時点で私の負けよ」
「サルバディール皇国に疑惑の目が向いている話をされたら良かったのです」
「それこそ無駄。信用されていないのにできないでしょ?」
リックは本当に忠臣なのでしょうね。
私の嘘を信じるがあまり、最悪の状況を脱しようと行動しているのだから。
「リック、疑惑とは何の話だ!?」
ここで乱入者。どうやら皇様たちとは異なり、彼は私たちについて来たようです。
頭を下げるだけはあって、私の力をちゃんと見極めているらしい。
「殿下、実をいうとアナスタシア様は我が国を救おうと足を運ばれているのです。実際に我が国の危機も口にされていましたけれど……」
とりあえずリックに任せておきましょうか。
彼が何を考え、どう行動したいのかを見届けてみます。
「実はセントローゼス王国内でサルバディール皇国が非常に危うい立場となっています。特定の貴族へ毒物を輸出しているだけでなく、我が国の暗殺者が王子暗殺という愚行を犯す未来があるのですよ」
「王子の暗殺だと?」
流石にカルロも困惑顔をしている。
ただ冷静に聞いてもらえるのは有り難いね。リックの話だからかもだけど、カルロは否定することなく聞いているのだから。
「ルーク第一王子ですよ。デンバー侯爵家でのパーティーにおいて、ルーク殿下が毒殺されるのです。あろうことかデンバー侯爵家は我が国から大量の毒物を輸入しており、王子殿下を殺めた暗殺者は我が国にて活動しているサイファー。二つの事実により、サルバディール皇国は嫌疑の目を向けられるというわけです」
流石にカルロも息を呑んでいます。
帝国ときな臭い関係にあるというのに、大国セントローゼス王国ともめ事を起こす余裕などあるはずもありません。
嘘で塗り固められた真相を知ったカルロは果たしてどう反応するのでしょう。
隣国の皇太子カルロ・サルバディール殿下に、ここは期待してみましょうかね。
どうしようかな。ここに集った者たちの印象は最悪だと思うし、今さら協力を願うなんて違うと感じる。
少しばかり熱くなりすぎたかなと反省です。
「私はもうセントローゼス王国へ戻ります。時間の無駄でしたわ……」
自業自得なんだけど、やはり他国から介入するのは難しいと思う。できればソフィア殿下とセシルがくっついて欲しかったのだけどね。
言って歩き出す私はマリィとリックを引き連れ、謁見の間を後にします。
「アナスタシア様、あのような対応では協力など得られません!」
「ごめんなさいね。もう契約は解除するわ。好きにしなさい」
「いえ、私は貴方様に従います。今後について話し合いましょう」
どうしてかリックは契約の解除に乗り気ではありません。
それどころか、まだ私の世話をしてくれるみたい。
「貴方も見たでしょ? 私は完全な悪役なの。力でねじ伏せるしかなかった。でも、カルロ殿下が頭を下げた時点で私の負けよ」
「サルバディール皇国に疑惑の目が向いている話をされたら良かったのです」
「それこそ無駄。信用されていないのにできないでしょ?」
リックは本当に忠臣なのでしょうね。
私の嘘を信じるがあまり、最悪の状況を脱しようと行動しているのだから。
「リック、疑惑とは何の話だ!?」
ここで乱入者。どうやら皇様たちとは異なり、彼は私たちについて来たようです。
頭を下げるだけはあって、私の力をちゃんと見極めているらしい。
「殿下、実をいうとアナスタシア様は我が国を救おうと足を運ばれているのです。実際に我が国の危機も口にされていましたけれど……」
とりあえずリックに任せておきましょうか。
彼が何を考え、どう行動したいのかを見届けてみます。
「実はセントローゼス王国内でサルバディール皇国が非常に危うい立場となっています。特定の貴族へ毒物を輸出しているだけでなく、我が国の暗殺者が王子暗殺という愚行を犯す未来があるのですよ」
「王子の暗殺だと?」
流石にカルロも困惑顔をしている。
ただ冷静に聞いてもらえるのは有り難いね。リックの話だからかもだけど、カルロは否定することなく聞いているのだから。
「ルーク第一王子ですよ。デンバー侯爵家でのパーティーにおいて、ルーク殿下が毒殺されるのです。あろうことかデンバー侯爵家は我が国から大量の毒物を輸入しており、王子殿下を殺めた暗殺者は我が国にて活動しているサイファー。二つの事実により、サルバディール皇国は嫌疑の目を向けられるというわけです」
流石にカルロも息を呑んでいます。
帝国ときな臭い関係にあるというのに、大国セントローゼス王国ともめ事を起こす余裕などあるはずもありません。
嘘で塗り固められた真相を知ったカルロは果たしてどう反応するのでしょう。
隣国の皇太子カルロ・サルバディール殿下に、ここは期待してみましょうかね。
10
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる