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第四章 歪んだ愛の形
新たなルート
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ルークが去って行ったあと、私は考えていました。
いきなりであったから、追い返しただけ。
何のプランニングもできていません。まあしかし、ある程度の予測はしています。
「ルークとキスしなかった世界線……」
それは過去に一度だけありました。
死に戻りに苛立った末、頭突きをかました世界線に。
「コンラッドが現れる……」
キャサリン・デンバーの誕生パーティーはずっとアドルフが執事であったというのに、キスをしなかった世界線だけは手練れの暗殺者コンラッドが現れていたのです。
先ほどの世界線では王家の力を借り、ランカスタ公爵家に潜り込めました。
しかし、この世界線において、私は岩山イベントを待つしか髭に会えないのです。
加えて陞爵すら断った私は元の子爵令嬢に戻っています。
「リセットされないなら、まだ道は切り開ける」
王家との関わりを断ったというのに、今も意識はハッキリとしています。
ならば、まだ未来は繋がっている。
やはり重要なのはランカスタ公爵家へと入り込むことなのでしょう。
この先の未来は確実にアルティメットモードだ。
後ろ盾を失っただけでなく、誕生パーティーイベントにはコンラッドが現れる可能性が高い。
準備期間もないというのに、私は最悪の暗殺者と戦わねばなりません。
「コンラッドは危険だ。彼の有能さはもう嫌というほど分かっている」
死に戻ると、再びルークとの別れが待っています。
それだけは二度と経験したくない。彼との別れは一度だけで充分なんだ。
「確かサルバディール皇国を中心に活動しているって話してたわね……」
私は考える。
軍資金といえば、髭を騙すために掘ったミスリルだけ。現状は白金貨三枚分掘ったところです。
「少しずつ売却すれば何とかなるかしら?」
売却が髭にバレてはリセットが確定する。
髭には残りの二枚分相当で満足してもらうとして、白金貨三枚分は私の旅費としよう。
「コンラッドをもう一度仲間に引き入れなきゃ……」
そうと決まれば旅立ちの準備。かといって手荷物があるわけでもなく、両親に書き置きをするだけです。
ただ旅に出ると……。
「早速、出発だ。あと二年しかないのだし」
子爵家に一頭しかいない馬は持って行けない。
なので私は徒歩にて子爵領を後にしました。当然のことマリィもついてくるのですが、この頃はベッタリなので仕方ありません。
「とりあえず髭に会う……」
十四歳まで待っていられない。
コンラッドと戦う道もありましたけれど、やはり彼を味方に付けた方が確実です。正攻法など選んでいられません。
しかし、ランカスタ公爵家まで馬でも一週間以上かかってしまう。徒歩でなら何日かかるか分かりません。
さりとて私は決意を覚悟に変えた女です。無茶をしてでも赴くだけですから。
「山越えだね……」
移動だけで一ヶ月とか無駄なことはしない。
ミスリルの岩山を越えて、公爵領へと入る。関所を経由しない違法行為ですけれど、越える瞬間を見つからない限り問題はありません。
マリィを連れて歩き出す。何度も通った岩山に向かって……。
いきなりであったから、追い返しただけ。
何のプランニングもできていません。まあしかし、ある程度の予測はしています。
「ルークとキスしなかった世界線……」
それは過去に一度だけありました。
死に戻りに苛立った末、頭突きをかました世界線に。
「コンラッドが現れる……」
キャサリン・デンバーの誕生パーティーはずっとアドルフが執事であったというのに、キスをしなかった世界線だけは手練れの暗殺者コンラッドが現れていたのです。
先ほどの世界線では王家の力を借り、ランカスタ公爵家に潜り込めました。
しかし、この世界線において、私は岩山イベントを待つしか髭に会えないのです。
加えて陞爵すら断った私は元の子爵令嬢に戻っています。
「リセットされないなら、まだ道は切り開ける」
王家との関わりを断ったというのに、今も意識はハッキリとしています。
ならば、まだ未来は繋がっている。
やはり重要なのはランカスタ公爵家へと入り込むことなのでしょう。
この先の未来は確実にアルティメットモードだ。
後ろ盾を失っただけでなく、誕生パーティーイベントにはコンラッドが現れる可能性が高い。
準備期間もないというのに、私は最悪の暗殺者と戦わねばなりません。
「コンラッドは危険だ。彼の有能さはもう嫌というほど分かっている」
死に戻ると、再びルークとの別れが待っています。
それだけは二度と経験したくない。彼との別れは一度だけで充分なんだ。
「確かサルバディール皇国を中心に活動しているって話してたわね……」
私は考える。
軍資金といえば、髭を騙すために掘ったミスリルだけ。現状は白金貨三枚分掘ったところです。
「少しずつ売却すれば何とかなるかしら?」
売却が髭にバレてはリセットが確定する。
髭には残りの二枚分相当で満足してもらうとして、白金貨三枚分は私の旅費としよう。
「コンラッドをもう一度仲間に引き入れなきゃ……」
そうと決まれば旅立ちの準備。かといって手荷物があるわけでもなく、両親に書き置きをするだけです。
ただ旅に出ると……。
「早速、出発だ。あと二年しかないのだし」
子爵家に一頭しかいない馬は持って行けない。
なので私は徒歩にて子爵領を後にしました。当然のことマリィもついてくるのですが、この頃はベッタリなので仕方ありません。
「とりあえず髭に会う……」
十四歳まで待っていられない。
コンラッドと戦う道もありましたけれど、やはり彼を味方に付けた方が確実です。正攻法など選んでいられません。
しかし、ランカスタ公爵家まで馬でも一週間以上かかってしまう。徒歩でなら何日かかるか分かりません。
さりとて私は決意を覚悟に変えた女です。無茶をしてでも赴くだけですから。
「山越えだね……」
移動だけで一ヶ月とか無駄なことはしない。
ミスリルの岩山を越えて、公爵領へと入る。関所を経由しない違法行為ですけれど、越える瞬間を見つからない限り問題はありません。
マリィを連れて歩き出す。何度も通った岩山に向かって……。
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