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第三章 鮮血に染まる赤薔薇を君に

放課後

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 次の日は男女共通の授業は組まれていませんでした。

 あれからルークの姿は見ていません。まあ、もう関係のないことです。彼もそのうち立ち直り、新しい恋とやらを見つけることでしょう。

 本日最後の講義が終わったあと、

「アナスタシア・スカーレット、貴方調子に乗りすぎじゃなくて?」

 早速と私は難癖をつけられていました。

 その相手とは前世でも因縁のあった公爵令嬢ミランダです。

 理由は彼女が答えられなかった問題を私が解いてしまったから。ミランダはそれが気にくわなかったみたいね。

「ミランダ様、誠に恐縮ですが、貴族院は先輩後輩のみの関係しかなく、院内において身分は気にしなくていいはずですけれど?」

「そのような規則は建前ですわ! 貴方が答えなければ私が失笑されることなどなかったのです!」

「ミランダ、アナはワタクシの侍女ですわ。文句があるなら聞きましょう」

 透かさずイセリナが割って入ってくれました。

 まあ私としては慣れたものなんですけど、彼女は自身の侍女が悪く言われることを見過ごせないのでしょうね。

「覚えてなさいよ!?」

 流石にイセリナが口を挟むとミランダは引き下がっていく。

 今や王家に匹敵するほどの力を得たランカスタ公爵家。その効果は抜群であるみたい。

 現状はイセリナだった世界線よりも随分と楽でした。

 何しろ当たりの強いリッチモンド公爵家のヴィクトリアがいないのです。彼女は処刑を免れ、鞭打ちのあと追放処分とされたみたい。コンラッドの話によると田舎の修道院に放り込まれたようです。

「アナ、もっとキツく言い返しなさい。貴方はランカスタ公爵家の一員なのですよ?」

「別に気にならないし。ヴィクトリアよりマシよ」

「あら、ヴィクトリアと面識があったの?」

 しまった。うっかりヴィクトリアの名前を出してしまったよ。

 現在の私は伯爵令嬢でしかなく、最上位の公爵家と繋がりなど持てなかったというのに。

「えっと、まあコンラッドに聞いたのです……」

 暗部に入ったコンラッドはイセリナも知っている。ここは彼の名前を出してやり過ごしましょう。

「アナ、ワタクシはこれからルーク殿下のところへ行きます。貴方はどうします?」

「私はここで待っているわ。どうぞ存分に会話を楽しんで来てください」

 イセリナはルークに取り入るため動き始めている。

 恐らくミランダもそうだろうね。公爵家のご令嬢でルークにアタックしないのはクレアフィール公爵家のエレオノーラだけでしょう。エレオノーラはセシルルートのライバル令嬢ですし。

 ご令嬢が続々と講堂を後にしていく中、私は一人座ったまま。

 まあしばらくは戻ってこないはず。イセリナが満足いくまで語り合ってくればいいわ。

 居眠りでもしようかと考えていたところ、

「あの、アナスタシア様ですよね?」

 私を呼ぶ声がした。

 振り返るとそこには知った顔がある。まあ二度目の転生なので当然なのですけれど、私は彼女のことをよく知っています。それも高宮千紗であった頃から。

 驚いた私は思わず大きな声で彼女の名を呼んでいました。

「エリカ!?――――」
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