青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

文字の大きさ
上 下
46 / 377
第二章 繰り返す時間軸

ミスリル鉱脈の確認

しおりを挟む
 ゴンドラに揺られて二時間ばかり。

 居眠りしている間に例の岩山へと到着していました。

「ここがそうなのか?」

「ええまあ、その通りです。危ないので離れていてください」

 ここで私は致命的ミスに気付きました。

 よく考えたら、昏倒してしまうのは古代魔法ロナ・メテオ・バーストであって、採掘魔法ロックブレイクくらいでは魔力切れになりません。

 どうも岩山を吹き飛ばしたイメージが残っていたみたいです。

(しくった。ここは演技で乗り切るしかないね)

 私の目的はランカスタ公爵家へと向かうことです。

 昏倒しないことには連れて行ってもらえない気がする。

 ここは主演女優賞並の演技力で以て、公爵家へと入り込むことにしましょうか。

 早速と呪文を詠唱し、魔法陣へと魔力を注ぎ込んでいきます。

「ロックブレイクッッ!!」

 採掘魔法ロックブレイクは粉々にすることなく光り輝くミスリルを岩肌から削ぎ落としています。

 明らかに低位魔法でありましたけれど、十二歳児が唱えたのですから昏倒したとしても不思議じゃないよね?

 私は額に手を当てるとフラリフラリと覚束ない足取り。そのまま地面へと倒れ込んで見せるのでした。

(どうよ? 完璧な昏倒でしょ?)

 けれども、どうしてか髭は私を心配していない様子。随分と長い時間、放置されているような気がします。

(ひょっとして約束を無視して一人で帰る気じゃないでしょうね?)

 そんな不安を覚え始めた頃、

「早く起きろ。もうミスリルは確認した。昏倒したフリはしなくてもいい。約束通り公爵家にて契約を行う」

 マジですか。私の超演技を見破るなんて。

 やはり悪の髭公爵は侮れない。私の思惑まで察知しているとか、やるじゃないの。

 見透かされた私は起き上がって、ランカスタ公爵に手を差し出します。

 すると彼も分かっていたのか私の手を取りました。

 これは契約成立の証し。両者共が納得したというサインに他なりません。

「公爵様、実をいうと私には別の要求があるのです。詳しくは公爵家にてお話しいたします」

「まあそうだろうな。構わん。今さら貴殿が何かを企むとも思えぬ」

 とりあえず公爵家へ乗り込むというミッションは達成です。

 あとはイセリナにも取り入って、未来を変えていくだけだわ。

 私が望むままの未来に……。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?

ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

処理中です...