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第二章 繰り返す時間軸

ミスリル鉱脈の確認

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 ゴンドラに揺られて二時間ばかり。

 居眠りしている間に例の岩山へと到着していました。

「ここがそうなのか?」

「ええまあ、その通りです。危ないので離れていてください」

 ここで私は致命的ミスに気付きました。

 よく考えたら、昏倒してしまうのは古代魔法ロナ・メテオ・バーストであって、採掘魔法ロックブレイクくらいでは魔力切れになりません。

 どうも岩山を吹き飛ばしたイメージが残っていたみたいです。

(しくった。ここは演技で乗り切るしかないね)

 私の目的はランカスタ公爵家へと向かうことです。

 昏倒しないことには連れて行ってもらえない気がする。

 ここは主演女優賞並の演技力で以て、公爵家へと入り込むことにしましょうか。

 早速と呪文を詠唱し、魔法陣へと魔力を注ぎ込んでいきます。

「ロックブレイクッッ!!」

 採掘魔法ロックブレイクは粉々にすることなく光り輝くミスリルを岩肌から削ぎ落としています。

 明らかに低位魔法でありましたけれど、十二歳児が唱えたのですから昏倒したとしても不思議じゃないよね?

 私は額に手を当てるとフラリフラリと覚束ない足取り。そのまま地面へと倒れ込んで見せるのでした。

(どうよ? 完璧な昏倒でしょ?)

 けれども、どうしてか髭は私を心配していない様子。随分と長い時間、放置されているような気がします。

(ひょっとして約束を無視して一人で帰る気じゃないでしょうね?)

 そんな不安を覚え始めた頃、

「早く起きろ。もうミスリルは確認した。昏倒したフリはしなくてもいい。約束通り公爵家にて契約を行う」

 マジですか。私の超演技を見破るなんて。

 やはり悪の髭公爵は侮れない。私の思惑まで察知しているとか、やるじゃないの。

 見透かされた私は起き上がって、ランカスタ公爵に手を差し出します。

 すると彼も分かっていたのか私の手を取りました。

 これは契約成立の証し。両者共が納得したというサインに他なりません。

「公爵様、実をいうと私には別の要求があるのです。詳しくは公爵家にてお話しいたします」

「まあそうだろうな。構わん。今さら貴殿が何かを企むとも思えぬ」

 とりあえず公爵家へ乗り込むというミッションは達成です。

 あとはイセリナにも取り入って、未来を変えていくだけだわ。

 私が望むままの未来に……。
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