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第二章 繰り返す時間軸
死に戻り
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アドルフに刺し殺され、意識を失った私は気付けば見慣れた景色へと戻されています。
見慣れた長閑な景色に加えて、眼前にはルークの姿があります。
やはりセーブポイントの更新はないみたいね。
そういえばラブロマンス。すっかり忘れていましたが、死に戻りのセーブポイントはルークとのキスシーンでした。
意識が戻るや、不意打ちでキスしようとするルークの顔が近付いています。
(まったく、この男は暢気な顔して……)
少なからず苛立っていた私はルークの顔面へ頭突きをお見舞いすることに。
キスとか受け入れる気分じゃないっての。
「い、痛ぇぇ!!」
「ルーク殿下、不意打ちは卑怯ですわ!」
この八つ当たりはアマンダに対する仕返しでもある。
聞いていた話とまるで異なる現実。
イセリナは放置しても構わないと説明を受けたはずなのに、蓋を開けばイセリナは前世界線と変わらず命を狙われているのですから。
(まあでも、私のせいか……)
当初は女神アマンダが話した通りであったのでしょう。
しかし、現状の世界線は私が滅茶苦茶にしてしまった。
過度に改変を受けた世界線は反映を受けた状態を維持できなかったのだと思います。
そもそも聖女という自覚のないイセリナが聖女らしく振る舞うなんてできやしない。
聖女補正が薄れていくのは自明の理ってやつかもしれません。
(やっぱイセリナは狙われ続ける運命ね……)
現状はゲームのプロローグ部分にも入っていないのです。
ゲームはエリカが王城勤めを始める十五歳から。ゲームの設定でもイセリナは常に命を狙われていたと書いてあったし、避けられない事象なのでしょう。
「アナ、ごめん。俺は自分の気持ちに嘘がつけなかった……」
「用事を済ませて、さっさと帰ってくださいまし! 私は忙しいのです。殿下と戯れている時間などございませんわ!」
憂さ晴らしとばかりに、ルークを責めていました。
前世でも事あるごとに私はルークに当たり散らしていましたからね。
ですが、これくらいでルークが気落ちするとは考えられません。
彼はかなり図太い性格だもの。よって私のストレス解消先は彼と決まっているのです。
「ルーク殿下、アナスタシア嬢はご機嫌斜めなようですよ? ここは引くことも大事です」
私の塩対応にレグス近衛騎士団長が口を挟む。
ホントその通りよ。正直に腹が立って仕方ないっての。
幾らでも八つ当たりしちゃうわよ?
レグス近衛騎士団長の話に、ルークも気付いたみたい。
小さく手を挙げてから、スゴスゴと立ち去っていく。
少しばかり悪い気はしたけれど、私は気が立っていたのだし、引き留める理由だってない。
膨れ面をして、ルークを見送るだけだわ。
見慣れた長閑な景色に加えて、眼前にはルークの姿があります。
やはりセーブポイントの更新はないみたいね。
そういえばラブロマンス。すっかり忘れていましたが、死に戻りのセーブポイントはルークとのキスシーンでした。
意識が戻るや、不意打ちでキスしようとするルークの顔が近付いています。
(まったく、この男は暢気な顔して……)
少なからず苛立っていた私はルークの顔面へ頭突きをお見舞いすることに。
キスとか受け入れる気分じゃないっての。
「い、痛ぇぇ!!」
「ルーク殿下、不意打ちは卑怯ですわ!」
この八つ当たりはアマンダに対する仕返しでもある。
聞いていた話とまるで異なる現実。
イセリナは放置しても構わないと説明を受けたはずなのに、蓋を開けばイセリナは前世界線と変わらず命を狙われているのですから。
(まあでも、私のせいか……)
当初は女神アマンダが話した通りであったのでしょう。
しかし、現状の世界線は私が滅茶苦茶にしてしまった。
過度に改変を受けた世界線は反映を受けた状態を維持できなかったのだと思います。
そもそも聖女という自覚のないイセリナが聖女らしく振る舞うなんてできやしない。
聖女補正が薄れていくのは自明の理ってやつかもしれません。
(やっぱイセリナは狙われ続ける運命ね……)
現状はゲームのプロローグ部分にも入っていないのです。
ゲームはエリカが王城勤めを始める十五歳から。ゲームの設定でもイセリナは常に命を狙われていたと書いてあったし、避けられない事象なのでしょう。
「アナ、ごめん。俺は自分の気持ちに嘘がつけなかった……」
「用事を済ませて、さっさと帰ってくださいまし! 私は忙しいのです。殿下と戯れている時間などございませんわ!」
憂さ晴らしとばかりに、ルークを責めていました。
前世でも事あるごとに私はルークに当たり散らしていましたからね。
ですが、これくらいでルークが気落ちするとは考えられません。
彼はかなり図太い性格だもの。よって私のストレス解消先は彼と決まっているのです。
「ルーク殿下、アナスタシア嬢はご機嫌斜めなようですよ? ここは引くことも大事です」
私の塩対応にレグス近衛騎士団長が口を挟む。
ホントその通りよ。正直に腹が立って仕方ないっての。
幾らでも八つ当たりしちゃうわよ?
レグス近衛騎士団長の話に、ルークも気付いたみたい。
小さく手を挙げてから、スゴスゴと立ち去っていく。
少しばかり悪い気はしたけれど、私は気が立っていたのだし、引き留める理由だってない。
膨れ面をして、ルークを見送るだけだわ。
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