青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

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第二章 繰り返す時間軸

控え室にて

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 パーティーが始まるまで、私たちは控え室で過ごしていました。

 ドレスを着替え、イセリナの回避練習もつつがなく。

 本来ならセシル殿下とイチャコラしなければならないというのに、この世界線はアマンダが話したものと絶対的に異なるのです。

 既に溺愛どころではなく、命優先となっていました。

「イセリナ様、ジッとしていてください」

 言って私は彼女に魔法をかける。

 それはアマンダから与えられた光属性魔法。一般的な魔法を私が改良したものです。

 詠唱が終わると、直ぐさまイセリナに輝きが帯びた。

「これは何ですの?」

「ちょっとしたおまじないというか、気にしなくても構わないですわ」

 真相を口にはできない。

 私が施した魔法はアンチマジックのオリジナル術式です。

 これにより彼女の周囲には魔法の効果が及ばない。

 如何なる魔法も彼女には効果がないというイベントクリアにおける必須魔法であります。

「すみません! 遅くなりました!」

 ここでオリビアがやって来た。

 彼女の様子には笑みが零れてしまう。

 なぜなら、私が知る通りだからです。

 オリビアは前世界線でもパーティー開始の直前になって現れていたのですから。

「オリビア様、デートは楽しめまして?」

「どどど、どうしてそれを!?」

 可愛いなぁ。まあでも私は全て貴方から聞いたのよ。

 サルバディール皇国の皇太子殿下とデートを楽しんだのだと。

「オリビア、貴方はお相手がいらしたの?」

「いえ、それが……」

「まあまあ、いいじゃないですか。オリビア様も早く着替えてください。もうすぐ始まりますよ」

 オリビアの着替えが終わった頃、不意に扉がノックされました。

 現れたのは専属執事のアドルフです。

 何百回と繰り返しましたので、嫌というほど、その顔を見ています。

 アドルフはどの世界線でもイセリナ専属の執事でありまして、他の執事が担当になったことなど一度もありません。

「イセリナ様、パーティー会場へご案内いたします。私はデンバー侯爵家の執事でアドルフと申します」

 アドルフが迎えに来たならば、いよいよイベント開始となります。

 楽しめるはずもないけれど、私は割と高揚していました。

 苦労したイベントを一発でクリアする。元ゲーマーらしい目標を自然と立てていたのですから。

 しばらくすると、楽団の演奏が控え室にも聞こえてきました。

 さりとて、急いで会場入りする必要もありません。イセリナは公爵令嬢です。

 威風堂々と会場に向かえばいいだけなのですから。
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