30 / 377
第二章 繰り返す時間軸
期待と反省を込めて
しおりを挟む
私は柄にもなく再びドキドキとしていました。
視界が回復するや、ルークに唇を奪われることになる。
十二歳以降にロマンスシーンはなかったのだし、戻るとすればあのセーブポイントしかないのですから。
「まあでも、あと一つだけ俺には要求があるんだ……」
やはり予想通りです。
眼前にはルークの姿。加えて聞き覚えのある台詞を聞かされていました。
(近い。近すぎるって……)
もう少し余韻を持ったセーブポイントにできないわけ?
分かっていても心の準備が必要だったりするわけよ。ねぇ、聞いてる? アマンダ?
耳元に近付く振りをしてルークは私の唇を奪う。
もう三度目だけど、どうしてか私は緊張していました。
強ばる身体を強引に引き寄せられ、なすがままキスされていたの。
(ルークからはプレゼントをもらうことだし、お礼をしておかなきゃ)
一応は理由付けをして、この状況を無理矢理に肯定する。
だって、ルークは攻略対象じゃない。私が結ばれるべき相手ではなかったのだから。
(お礼のあとは残念だけど……)
余計なフラグをへし折って、ルークにはスゴスゴと退散してもらわないと。
このあとは記憶と同じ遣り取りをして、ルークを絶望の淵に。
「それではルーク殿下、セシル殿下によろしくお伝えくださいまし!」
肩を落として去って行くルークに手を振ると、私は先ほどの原因を考え始めた。
どうして髭の話が途中で打ち切られたのか。
明らかに不自然なリスタートはあの遣り取りが間違っていたことを意味するはず。
「言い値で売ったことが間違い? 金貨三百枚じゃ駄目なの?」
最後に私が話したのは足下を見るような価格を受諾したこと。
もし仮に吹っ掛けた価格を口にしたとして、イセリナがいないのだから、その価格で決まっていたことでしょう。
「お金の問題は既になくなってるからなぁ。もしも白金貨単位で騙したとして、別に何も変わらないよね」
王家からの支援は多岐に渡っている。開墾の人員だけでなく、充分な資金援助もあったのです。
従って私や弟のレクシルが貴族院に入学できないといった未来はない。仮にランカスタ公爵と喧嘩別れしたとしても。
「じゃあ、何が問題?」
イセリナがいない時点でリセットされなかったこと。それは全てイセリナがあの場にいなくても何とかなったからでしょう。
だけど、そのあと私が何らかのミスをして、未来が途絶えたと考えるべきだね。
「イセリナ……?」
やはりキーとなるのはイセリナだと思う。
女神アマンダがこのルートを突き進めというのだから、鍵を握るのは彼女しかいない。
「あの場面で話を打ち切っては駄目なんだ。引き延ばしつつ、イセリナについて聞くべきだったのかも」
存在しないイセリナを動かす方法があるのかもしれない。
先ほどの世界線では、いずれ王都で会うという曖昧な返事だった。
恐らく、それではイセリナはまたも殺されてしまうのだろう。
「きっとイセリナの死が確定したんだろうな。彼女はルークと結ばれなきゃだし……」
リセットされた原因はイセリナを救う術がなくなったから。
逆に考えると、あの時点ではまだイセリナを救う術があったということ。
「そっか……。ちいとばかし油断したね。イージーモードかと考えてたよ」
やはりアナスタシアでの攻略にイージーなどあり得ない。
自分自身を守ることより、遠く離れたイセリナを守っていかなければならないのですから。
視界が回復するや、ルークに唇を奪われることになる。
十二歳以降にロマンスシーンはなかったのだし、戻るとすればあのセーブポイントしかないのですから。
「まあでも、あと一つだけ俺には要求があるんだ……」
やはり予想通りです。
眼前にはルークの姿。加えて聞き覚えのある台詞を聞かされていました。
(近い。近すぎるって……)
もう少し余韻を持ったセーブポイントにできないわけ?
分かっていても心の準備が必要だったりするわけよ。ねぇ、聞いてる? アマンダ?
耳元に近付く振りをしてルークは私の唇を奪う。
もう三度目だけど、どうしてか私は緊張していました。
強ばる身体を強引に引き寄せられ、なすがままキスされていたの。
(ルークからはプレゼントをもらうことだし、お礼をしておかなきゃ)
一応は理由付けをして、この状況を無理矢理に肯定する。
だって、ルークは攻略対象じゃない。私が結ばれるべき相手ではなかったのだから。
(お礼のあとは残念だけど……)
余計なフラグをへし折って、ルークにはスゴスゴと退散してもらわないと。
このあとは記憶と同じ遣り取りをして、ルークを絶望の淵に。
「それではルーク殿下、セシル殿下によろしくお伝えくださいまし!」
肩を落として去って行くルークに手を振ると、私は先ほどの原因を考え始めた。
どうして髭の話が途中で打ち切られたのか。
明らかに不自然なリスタートはあの遣り取りが間違っていたことを意味するはず。
「言い値で売ったことが間違い? 金貨三百枚じゃ駄目なの?」
最後に私が話したのは足下を見るような価格を受諾したこと。
もし仮に吹っ掛けた価格を口にしたとして、イセリナがいないのだから、その価格で決まっていたことでしょう。
「お金の問題は既になくなってるからなぁ。もしも白金貨単位で騙したとして、別に何も変わらないよね」
王家からの支援は多岐に渡っている。開墾の人員だけでなく、充分な資金援助もあったのです。
従って私や弟のレクシルが貴族院に入学できないといった未来はない。仮にランカスタ公爵と喧嘩別れしたとしても。
「じゃあ、何が問題?」
イセリナがいない時点でリセットされなかったこと。それは全てイセリナがあの場にいなくても何とかなったからでしょう。
だけど、そのあと私が何らかのミスをして、未来が途絶えたと考えるべきだね。
「イセリナ……?」
やはりキーとなるのはイセリナだと思う。
女神アマンダがこのルートを突き進めというのだから、鍵を握るのは彼女しかいない。
「あの場面で話を打ち切っては駄目なんだ。引き延ばしつつ、イセリナについて聞くべきだったのかも」
存在しないイセリナを動かす方法があるのかもしれない。
先ほどの世界線では、いずれ王都で会うという曖昧な返事だった。
恐らく、それではイセリナはまたも殺されてしまうのだろう。
「きっとイセリナの死が確定したんだろうな。彼女はルークと結ばれなきゃだし……」
リセットされた原因はイセリナを救う術がなくなったから。
逆に考えると、あの時点ではまだイセリナを救う術があったということ。
「そっか……。ちいとばかし油断したね。イージーモードかと考えてたよ」
やはりアナスタシアでの攻略にイージーなどあり得ない。
自分自身を守ることより、遠く離れたイセリナを守っていかなければならないのですから。
10
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
【完結】あなたの瞳に映るのは
今川みらい
恋愛
命を救える筈の友を、俺は無慈悲に見捨てた。
全てはあなたを手に入れるために。
長年の片想いが、ティアラの婚約破棄をきっかけに動き出す。
★完結保証★
全19話執筆済み。4万字程度です。
前半がティアラside、後半がアイラスsideになります。
表紙画像は作中で登場するサンブリテニアです。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる