青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

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第二章 繰り返す時間軸

期待と反省を込めて

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 私は柄にもなく再びドキドキとしていました。

 視界が回復するや、ルークに唇を奪われることになる。

 十二歳以降にロマンスシーンはなかったのだし、戻るとすればあのセーブポイントしかないのですから。

「まあでも、あと一つだけ俺には要求があるんだ……」

 やはり予想通りです。

 眼前にはルークの姿。加えて聞き覚えのある台詞を聞かされていました。

(近い。近すぎるって……)

 もう少し余韻を持ったセーブポイントにできないわけ?

 分かっていても心の準備が必要だったりするわけよ。ねぇ、聞いてる? アマンダ?

 耳元に近付く振りをしてルークは私の唇を奪う。

 もう三度目だけど、どうしてか私は緊張していました。

 強ばる身体を強引に引き寄せられ、なすがままキスされていたの。

(ルークからはプレゼントをもらうことだし、お礼をしておかなきゃ)

 一応は理由付けをして、この状況を無理矢理に肯定する。

 だって、ルークは攻略対象じゃない。私が結ばれるべき相手ではなかったのだから。

(お礼のあとは残念だけど……)

 余計なフラグをへし折って、ルークにはスゴスゴと退散してもらわないと。

 このあとは記憶と同じ遣り取りをして、ルークを絶望の淵に。

「それではルーク殿下、セシル殿下によろしくお伝えくださいまし!」

 肩を落として去って行くルークに手を振ると、私は先ほどの原因を考え始めた。

 どうして髭の話が途中で打ち切られたのか。

 明らかに不自然なリスタートはあの遣り取りが間違っていたことを意味するはず。

「言い値で売ったことが間違い? 金貨三百枚じゃ駄目なの?」

 最後に私が話したのは足下を見るような価格を受諾したこと。

 もし仮に吹っ掛けた価格を口にしたとして、イセリナがいないのだから、その価格で決まっていたことでしょう。

「お金の問題は既になくなってるからなぁ。もしも白金貨単位で騙したとして、別に何も変わらないよね」

 王家からの支援は多岐に渡っている。開墾の人員だけでなく、充分な資金援助もあったのです。

 従って私や弟のレクシルが貴族院に入学できないといった未来はない。仮にランカスタ公爵と喧嘩別れしたとしても。

「じゃあ、何が問題?」

 イセリナがいない時点でリセットされなかったこと。それは全てイセリナがあの場にいなくても何とかなったからでしょう。

 だけど、そのあと私が何らかのミスをして、未来が途絶えたと考えるべきだね。

「イセリナ……?」

 やはりキーとなるのはイセリナだと思う。

 女神アマンダがこのルートを突き進めというのだから、鍵を握るのは彼女しかいない。

「あの場面で話を打ち切っては駄目なんだ。引き延ばしつつ、イセリナについて聞くべきだったのかも」

 存在しないイセリナを動かす方法があるのかもしれない。

 先ほどの世界線では、いずれ王都で会うという曖昧な返事だった。

 恐らく、それではイセリナはまたも殺されてしまうのだろう。

「きっとイセリナの死が確定したんだろうな。彼女はルークと結ばれなきゃだし……」

 リセットされた原因はイセリナを救う術がなくなったから。

 逆に考えると、あの時点ではまだイセリナを救う術があったということ。

「そっか……。ちいとばかし油断したね。イージーモードかと考えてたよ」

 やはりアナスタシアでの攻略にイージーなどあり得ない。

 自分自身を守ることより、遠く離れたイセリナを守っていかなければならないのですから。
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