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第一章 前世と今世と

記憶の通りに

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 二年が過ぎていました。

 計画していたように、私はミスリル鉱脈を掘り尽くしています。人知れず鉱山に通っては、採掘したミスリルをアイテムボックスに収納しているの。

 しかも私は一人でやり遂げていました。公爵家に計画を悟られないように。

「一つも売却してないし、絶対に気付かれていないはずよ」

 ランカスタ公爵家の調査が入るよりも前に、土魔法で岩盤まで再生しているからね。

「髭が泣き喚く姿を想像していたら、思った以上に頑張れてしまった……」

 ダンツの開墾も割と進んでいます。

 領民に混じって木を切り倒しては耕す日々。少しも貴族感はありませんけれど、元より脳筋なので全然問題なし。

 ダンツが肉体労働にシフトしたことにより、私は所領の事務仕事を任されています。

 いつものように執務室で帳面と睨めっこをしていると、扉がノックされて返事もしていないというのに開かれていました。

「アナ、これから出かけるぞ?」

 入って来たのは脳筋領主ことダンツ。ノックくらいしろと注意するところでしたが、私は彼の用事を推し量っています。そろそろじゃないかと考えていたのよ。

「来たわね……」

「んん? どうした?」

「ああいえ、こちらのこと!」

 早朝から私に用事などあるはずもない。しかも連れだって向かう場所など。

「どこへ行くのです? お父様……」

「実はランカスタ公爵がうちの領地を売ってくれと持ち掛けてきてな。どうせ何もない岩山だから話を聞くことにした」

 やはり岩山の交渉でした。

 思わず表情が緩んでしまうけれど、顔に出してはいけません。

「今からランカスタ公爵領まで行くのですか? 一週間はかかりますよ?」

「ああ、それなんだか、東の街道沿いにある王家の別荘にいるらしい。急げば陽が落ちるくらいには到着できるだろう」

 私が知るままの未来。記憶の通りに王家の別荘地まで来てくれるなんてね。しかも子供を連れてくるようにと指示まで同じです。

(髭にお小遣いをもらうっきゃないね……)

 私は笑みを浮かべながら立ち上がっています。

 いけないわ。どうしても髭の反応が楽しみすぎる……。

「ならばお待たせしてはなりませんね。直ぐに出発しましょう」

 私はみすぼらしいドレスのままです。二束三文の岩山を高値で売りさばくだけでなく、イセリナからドレスまでもらうつもり。

(こちとら貧乏貴族なのよ。もらえるものは全て手に入れてやるんだから!)

 早速と馬車に乗る私とダンツ。かといって使用人すらいないのです。

 ダンツが御者台に乗り、荷馬車のようなボロ馬車を走らせていく。

「さてさて、新生ブルーローズのお手並み拝見といきましょうかね……」
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