194 / 212
第三章 存亡を懸けて
狙撃
しおりを挟む
一八と伸吾はナゴヤ市内へと侵攻していた。聞いていたように魔物の数は少なく、一般兵が戦うエリアに近付けている。
「恵美里さん、この辺りでどうっすか?」
援護射撃に相応しい開けた場所へと到着し、一八が意見を聞く。
しかし、次の瞬間、強大な魔力を感じた。それは上空から感じるものであり、間違っても味方が撃ち放ったものではないだろう。
「なっ……!?」
刹那に黒い雨のようなものが見えた。暗雲から無数に飛び出したそれは一般兵に容赦なく降り注がれていく。
「奥田君、天主だよ!?」
「ああ……」
呆然としていたけれど、今は呆気にとられている場合じゃない。一八は直ぐさま恵美里を振り返っている。
「恵美里さん、あれを撃ち抜けますか?」
この場所からでは米粒程度にしか見えない。しかし、撃ち落とさねば一般兵は全滅してしまうだろう。
「できるとは言えません。けれど、やるしかありません……」
魔道士部隊の主力である恵美里がそういうと、舞子も頷いていた。
ここには魔道科四席の小松もいたけれど、彼は無理だと言わんばかりに首を振っている。
「私は命中させられると思いますが、威力が問題です。天主は魔法耐性が高いと聞きますし……」
どうやら小乃美はこの距離でも問題ないらしい。だが、彼女は威力が問題であるという。
一瞬だけ考え込む一八。別に指揮官ではなかったけれど、彼は大きな声を張る。
「魔道士は全員スナイパー装備にて射撃だ。撃って撃って撃ちまくる。詠唱を続けられないくらいに」
首を振っていた小松であるけれど、一八の指示には頷きを返していた。これは試験などではない。外れたら次がない場面とは違うのだ。仲間を守るという意味での乱射は正解であるように思う。
「よし、撃ちまくるぞ!」
「ええ、元よりわたくしたちは援護射撃をするためにいるのですし」
即座に全員がスナイパーライフルを装備。一八が話したように一斉に撃ち始めた。
ここにいるのは総勢二十名。Aクラスにいた三分の二が集められている。まるで射撃訓練の如く、魔道士たちが天主を狙い始めていた。
一八もまた行動していく。天主を発見したのなら、ヒカリに連絡しなければならない。赤色の発光弾を上空目掛けて撃ち放っている。
「奥田君の求心力は凄いね?」
「ざけんな。それより恐らく俺たちは狙われるぞ。防御魔法最大でみんなを守るしかねぇ」
一八は魔道科の必修科目で学んでいたため、全員の顔を知っている。伸吾以上に彼らを守る使命を感じていた。
「僕も防御魔法を展開するよ」
「やめろ。あれは闇属性魔法だろう。伸吾の防御魔法は必要ねぇ。俺が全域をカバーすっからよ……」
「全域とか無茶だよ!?」
「ああ? 仲間が撃ち殺されてんだぞ? 今無茶しねぇでどこですんだよ?」
支援士たちは適切なロッドを携帯しているが、剣士はその限りではない。支援士の防御魔法は剣士が自己防衛に使う防御魔法とは違うのだ。支援士の防御魔法は上位魔法であり、任意の場所に展開できるけれど、剣士が使用するのは下位魔法であって自身を中心にして展開するというものである。
一八は広域をカバーするために大量の魔力を使うだけでなく、天主の魔法攻撃に耐え得るステージを展開しなければならない。
「じゃあ、僕は君の後ろで防御魔法を展開する。それなら異論はないでしょ?」
伸吾は意見を変えなかった。しかし、その重ね掛けという案は悪くない。自身の後ろならば安全であるし、不意に現れるオークへの対処も可能であった。
「じゃあ、それでいく。もっとも、恵美里さんたちが撃ち落としてくれたなら、それが一番だがな……」
遠距離魔法を撃ち続ける魔道士たち。一八の願いも虚しく、一発として当たっていない。命中させられると話していた小乃美も天主が呼び出した雷雲のようなものの影響を受けている感じだ。
一八と伸吾は祈るようにして遠距離魔法の行き着く先を眺めていた……。
「恵美里さん、この辺りでどうっすか?」
援護射撃に相応しい開けた場所へと到着し、一八が意見を聞く。
しかし、次の瞬間、強大な魔力を感じた。それは上空から感じるものであり、間違っても味方が撃ち放ったものではないだろう。
「なっ……!?」
刹那に黒い雨のようなものが見えた。暗雲から無数に飛び出したそれは一般兵に容赦なく降り注がれていく。
「奥田君、天主だよ!?」
「ああ……」
呆然としていたけれど、今は呆気にとられている場合じゃない。一八は直ぐさま恵美里を振り返っている。
「恵美里さん、あれを撃ち抜けますか?」
この場所からでは米粒程度にしか見えない。しかし、撃ち落とさねば一般兵は全滅してしまうだろう。
「できるとは言えません。けれど、やるしかありません……」
魔道士部隊の主力である恵美里がそういうと、舞子も頷いていた。
ここには魔道科四席の小松もいたけれど、彼は無理だと言わんばかりに首を振っている。
「私は命中させられると思いますが、威力が問題です。天主は魔法耐性が高いと聞きますし……」
どうやら小乃美はこの距離でも問題ないらしい。だが、彼女は威力が問題であるという。
一瞬だけ考え込む一八。別に指揮官ではなかったけれど、彼は大きな声を張る。
「魔道士は全員スナイパー装備にて射撃だ。撃って撃って撃ちまくる。詠唱を続けられないくらいに」
首を振っていた小松であるけれど、一八の指示には頷きを返していた。これは試験などではない。外れたら次がない場面とは違うのだ。仲間を守るという意味での乱射は正解であるように思う。
「よし、撃ちまくるぞ!」
「ええ、元よりわたくしたちは援護射撃をするためにいるのですし」
即座に全員がスナイパーライフルを装備。一八が話したように一斉に撃ち始めた。
ここにいるのは総勢二十名。Aクラスにいた三分の二が集められている。まるで射撃訓練の如く、魔道士たちが天主を狙い始めていた。
一八もまた行動していく。天主を発見したのなら、ヒカリに連絡しなければならない。赤色の発光弾を上空目掛けて撃ち放っている。
「奥田君の求心力は凄いね?」
「ざけんな。それより恐らく俺たちは狙われるぞ。防御魔法最大でみんなを守るしかねぇ」
一八は魔道科の必修科目で学んでいたため、全員の顔を知っている。伸吾以上に彼らを守る使命を感じていた。
「僕も防御魔法を展開するよ」
「やめろ。あれは闇属性魔法だろう。伸吾の防御魔法は必要ねぇ。俺が全域をカバーすっからよ……」
「全域とか無茶だよ!?」
「ああ? 仲間が撃ち殺されてんだぞ? 今無茶しねぇでどこですんだよ?」
支援士たちは適切なロッドを携帯しているが、剣士はその限りではない。支援士の防御魔法は剣士が自己防衛に使う防御魔法とは違うのだ。支援士の防御魔法は上位魔法であり、任意の場所に展開できるけれど、剣士が使用するのは下位魔法であって自身を中心にして展開するというものである。
一八は広域をカバーするために大量の魔力を使うだけでなく、天主の魔法攻撃に耐え得るステージを展開しなければならない。
「じゃあ、僕は君の後ろで防御魔法を展開する。それなら異論はないでしょ?」
伸吾は意見を変えなかった。しかし、その重ね掛けという案は悪くない。自身の後ろならば安全であるし、不意に現れるオークへの対処も可能であった。
「じゃあ、それでいく。もっとも、恵美里さんたちが撃ち落としてくれたなら、それが一番だがな……」
遠距離魔法を撃ち続ける魔道士たち。一八の願いも虚しく、一発として当たっていない。命中させられると話していた小乃美も天主が呼び出した雷雲のようなものの影響を受けている感じだ。
一八と伸吾は祈るようにして遠距離魔法の行き着く先を眺めていた……。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる