オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる

坂森大我

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第二章 騎士となるために

急な卒業

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 マイバラ基地が壊滅したことを受け、早期配備となった候補生たち。少尉待遇にて配備されたのは全体の一割程度であった。緊急的に配備された大多数の候補生たちとは異なり、少尉として配備される十三人は朝礼のあと、早速と本部へ向かうようにと命令を受けている。

 各々が荷造りを済ませ、剣術科の四人を先頭にして十三人が学生寮をあとにしてく。
 准尉級の面々はまだ所属が未定なのだ。従って十三人の見送りには大勢の准尉級候補生たちが集まっていた。

「岸野さん!」
 概ね拍手で送り出されていたのだが、不意に玲奈は呼び止められていた。振り向くとそこには小柄な女性の姿。騎士学校では殆ど関わり合いがなかったけれど、よく知る顔であったのは確かである。

「浅村殿、見送り悪いな……」
 玲奈が呼び声に答える。四人は朝一で本部へと向かわねばならなかったから、軽く手を挙げるだけで挨拶としていた。

「絶対に生き残って! そうじゃなきゃ、わたしは負けたままだわ!」
 ふと届いたその声に思わず玲奈は足を止めてしまう。
 半年に亘り二人の実力差は開くばかり。AクラスとBクラスを行き来するアカリとは異なり、玲奈は入学からずっと首席であったのだ。

 アカリの声は気付かせている。今も変わらず自身が彼女のライバルであることを。ならばと玲奈は振り返り、彼女の声に答えている。

「浅村殿……いや、アカリと呼ぼうか。私は逃げも隠れもしないぞ? 私は岸野流魔道剣術刀士、岸野玲奈。挑戦ならばいつでも受けよう!」
 言って玲奈は笑顔を作り、再び手を挙げて歩き出す。ライバルとして先へと進む。当然のことながら、死に急ぐつもりはない。

「ババア妹、なに泣いてんだ? お前らもそのうちに前線送りだろ?」
 一八も声をかけた。遠巻きに拍手を送る在校生とは異なり、アカリは昂ぶる感情のままに玲奈へと近付いていたのだから。

「あんたは殺しても死なないって分かってるけど……」
 ふて腐れるようにアカリ。一八に関しては心配するだけ無駄だと思っている。

「はん、俺が死ななくて、首席様が死ぬ? 笑わせんなよ。玲奈は誰よりも強ぇんだ。泣いてる暇があれば、魔力調整をモノにして追いついてこい」
 一八なりのエール。同じ授業を受けていた一八にとって、アカリの心情を汲み取るのは容易である。彼女の努力を知っていたからこそ、発破をかけずにいられなかった。

「あんた、お姉ちゃんの命令はちゃんと聞きなさいよ?」
 アカリが話すように一八はアカリの小隊に組み込まれていた。どこまでも腐れ縁だと思うも、隊長がよく知る人物なのは一八としてもやりやすい。

「まあ、それは善処しよう。あと俺のことをあんたとかいうな……」
 一八はニヤリと笑みを浮かべている。この雑談を締めくくる皮肉的なジョークを彼は口にしていた。

「以降は奥田少尉と呼べ」――――と。
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