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第二章 騎士となるために
Sランク級
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「頂上にはSランクがいる……」
玲奈の見解に隣り合う者同士が目を合わせあっている。流石にSランクの魔物がいるだなんて考えもしないことであった。
「まあSランク級というべきか。半年前のケンタウロスがまだ中腹にいるとすれば、頂上はそれ以上となる。総合危険度Aランクを凌駕するものとはSランク級であるとしか考えられんのだ……」
最悪の状況を考えた場合にSランクになると玲奈。全ては昨年度の探索結果からの推測であり、オーガが麓まで追い立てられたと考えた場合だ。仮にオーガが狩りをするために麓まで赴いていたのだとしたら、玲奈の悲観的予想は否定されるはず。
「とにかく気を引き締めていくぞ。最悪の場合を念頭にしつつも……」
「どういうこと? 玲奈ちゃん、Sランク級がいることより最悪な状況があるの?」
堪らず早久良が聞いた。既に撤退やむなしと彼女は考えているのだが、玲奈が考える最悪の状況を知りたく思う。
うむっと返事をした玲奈は徐にその考えを口にしていく。
「スタンピードの可能性がある……」
玲奈の予想に全員が言葉を失う。今まで平然と聞いていた一八でさえ驚きを隠せなかった。
「おい玲奈、あんましビビらせんじゃねぇよ。これから探索するんだぞ?」
「別に驚かせているわけではない。スタンピードとは強大な存在によって引き起こされるもの。半年間に何も起こらなかったのは幸いだが、ふとしたことで決壊する恐れがある」
言って玲奈は本部と連絡を取る。このまま探索を続けたならば、逆効果になるかもしれないと。スタンピードは狂気の行進なのだ。そこに理性は存在せず、我先にと逃げ惑う魔物たちが押し寄せてくるだけであった。
しばし、玲奈の遣り取りを眺める。可能性を聞かされたあとでは玲奈が考えるように、試験を中止すべきかと思う。
「はい。了解しました……」
長い遣り取りの末、ようやく通信が終わった。しかし、側耳を立てていた班員たちは結果を推し量っている。玲奈が落胆している理由は想像に容易かったからだ。
「残念だが、試験は続行だ。スタンピードの兆候が見られるまでは撤退しないらしい。ただの予測に過ぎない話は聞き入れてもらえないようだ」
嘆息混じりに玲奈。確かに推測ではあったものの、可能性は高かったのだ。よって探索を続けよという命令は好ましい判断だと思えない。
「慎重に進む。魔道科は音量を抑えたデバイスに。ケンタウロスは私と一八で対処するから援護は不要だ……」
「玲奈さん、本気ですか? ケンタウロスは動きが素早いだけでなく知能も高いですよ?」
堪らず恵美里が意見した。確かに魔道科のデバイスは大きな音を立ててしまう。魔物を驚かせないこと、気付かれないことを重視するならばサイレンサーを付けるしかない。だが、威力は損なわれるし、サイレンサーは短銃にしか装備できなかった。
「別に無茶を言っているわけではない。ケンタウロスは別に強固な鱗を持つわけでもないしな。初太刀で仕留めるだけだ」
「恵美里さん、俺も大丈夫っす。玲奈が斬り付けた隙を狙います。何頭いようがぶった斬るだけ……」
決して魔力温存の指示ではないのだが、流石にAランク相当とされるケンタウロスの群れを援護もなしに乗り切れるような気がしない。
「恵美里とこのみんは状況を見て足止めする程度でいい。群れの規模が十頭までなら待機。それ以上ならピンポイントで目を狙ってくれ。即死以外の攻撃ができないのなら、その場合も待機だ」
玲奈の指示は徹底している。魔物を倒すのは一撃である場合のみ。スタンピードを懸念する以上は声を上げるような攻撃をするべきではないのだと。
剣術科を先頭にして山道を行く。玲奈の推測通りに現れる魔物は全てがCランクであった。ロッコウ山系は明確にピラミッド型の生態系を作り上げているように感じられる。
デバイスにて位置を確認。もうそろそろケンタウロスが現れたという地点である。しかし、何もいない。そこには魔物の気配すらなかった。
安堵したのも束の間、六人は予想外の光景を目撃することになる。
「これは……?」
少し開けた場所におびただしい数の死体が転がっていたのだ。一見すると人骨のようにも見えたが、腐った肉片は馬のような部位もある。これにより予想されるのは考えていたよりも状況が悪化していることだ。
「玲奈さん、これはケンタウロスの群れですよね?」
「うむ……。どうやら強大な何かに食い散らかされたようだ……」
予想される魔物が何であるのか絞りきれないが、脅威であるのは明らかだ。この惨状は災厄級を予感させるに十分であった。
「頂上へ続く途中の木々が倒されているな。地を這う魔物に間違いはないだろう。まあしかし、これでスタンピードの可能性は少しだけ低くなったといえる」
「どうしてだ? Bランクの魔物が一網打尽なんだぞ?」
一八が問いを返す。正直にケンタウロスが無惨にも食い散らかされている様は異常だと思う。一カ所に纏まった死体は逃げることすら叶わなかったと予想できたからだ。
「恐らく頂点に立つ魔物は素早くない。だが、ケンタウロスを一掃している。恐らくは猛毒を吐く魔物。加えて木々をなぎ倒すほどの巨体に違いない。また中腹にいたはずのケンタウロスが餌となったこと。総合的に考えれば、自ずと見えてくるはずだ」
玲奈が答えた。素早くはないという魔物が中腹まで餌を求めて下りてきたこと。詳しい説明に玲奈の考えが朧気であるけれど理解できた。
「これより先はもう食い散らかしたあとってことか?」
「恐らくな。ケンタウロスの群れを蹂躙できる存在だ。そいつがロッコウ山系の頂点に立つ事実は疑う余地がない。またそれはかなりの大食漢だろう。中腹まで足を伸ばすくらいに飢えている。この先にスタンピードを起こすほどの数はもう生息していないはずだ」
玲奈の予測は安心できると同時に恐れを抱くものだった。
毒を吐く魔物は限られている。けれど、真っ先に思い浮かぶ魔物がそれだとは思えない。
「バジリスクではありませんよね……?」
確認するような恵美里。彼女も一定の予測を済ませていたけれど、安心感を得たかったのか願望ともいえる魔物を口にした。
「バジリスクでは返り討ちに遭っただろう。ケンタウロスは素早く攻撃力も十分だ。Cランクの魔物ではケンタウロスの群れに近付くことすら叶わなかったはず……」
少しばかり躊躇ったあと玲奈が口にする。考えられる最悪の事態。彼女は災厄級とされる魔物の名を告げた。
「頂点に立つ魔物はヒュドラ――――」
全員が声を失っている。基本はAランク指定の魔物であったが、成長によってヒュドラはSランク級とされた。元は巨大な水蛇であり、Aランク指定はその水蛇だけである。
ヒュドラは成長するにつれて頭の数が増える魔物だ。双頭以上に成長したヒュドラは全てがSランクとなった。従って成長過程で討伐すべき魔物であり、ケンタウロスの群れを圧倒するまでに成長してしまっては手の施しようがない。
「で、どうするよ? また報告すっか?」
一八が玲奈に問う。再び推論を伝えるのかどうか。災害級を通り越す魔物がいるという話に撤退指示をもらえるのかと。
「いや、一応は存在を確認する。ヒュドラは危険だ。餌がなくなれば山を下りるのは確実だからな……」
推論を伝えたとして状況は変わらない。先ほどは撤退を求めた玲奈だが、スタンピードの可能性が低くなり、予想される魔物がヒュドラであれば調査が必要だと主張する。
「玲奈ちゃん、大丈夫なの?」
怯えたような声で静華が聞いた。ケンタウロスだけでも怖かったというのに、災厄級に迫る魔物がいると聞けば尻込みしてしまう。
「大丈夫かどうかは支援次第だ。何しろ成長したヒュドラは猛毒を吐く。静華のエクスピュアリフィケーションに私は期待しているのだ……」
猛毒は間違いなく致死性の部類だ。だからこそ、支援科の二人を頼らざるを得ない。
エクスピュアリフィケーションは解毒系の上位魔法であり、事前にかけておくと致死性の毒耐性を得られるだけでなく、解毒も可能であった。
コクリと頷く静華。授業では回復支援の重要さをコンコンと聞かされていたのだ。実戦に赴き初めて理解する。仲間が助かるか失われるか。その鍵は支援にかかっているのだと。
「任せて! ねぇ、早久良!」
「うん、これでも首席と次席だからね? 大船に乗ったつもりでいいよ!」
ようやく二人も覚悟を決めたらしい。元より騎士となるのだ。一般人のように逃げ惑うなんて許されない。
六人は再びロッコウ山系を登っていく。一頭の魔物すら現れないのは予想されたままだ。一歩進むごとに予想が現実となる気がしている。恐らくこの先も多頭竜によって食い尽くされたのだと思えてならない。
二時間ほどかけて進むと木々の生えていない場所へと到着。もうそこは頂上であった。毒素を含んだ岩肌があったけれど、予想していたヒュドラの姿はない。
手分けして周囲を探索するも、頂上の見晴らしは良く、木々をなぎ倒すほどの巨大な魔物はいなかった。
「どういうことだ……?」
玲奈が眉根を寄せた瞬間、玲奈のハンディデバイスが音を立てる。
それは本部からの通信であった。緊急時には連絡を入れると聞かされていたことから、覚悟をして聞く必要がある。
『西大寺だ! 岸野、直ぐさま西側へと進め! 二班が孤立した!』
通信は西大寺からであった。どうやら伸吾がリーダーを務める二班が魔物によって動けなくなったらしい。
「どういうことです? 二班の実力を私は理解しているつもりですが……」
伸吾と莉子だけでなく、二班には舞子もいるのだ。従って玲奈には二班が苦境に陥る状況が想像できなかった。
しかしながら、玲奈は知らされている。予想外の相手が現れてしまったことを。
『ヒュドラが出現した――――』
玲奈の見解に隣り合う者同士が目を合わせあっている。流石にSランクの魔物がいるだなんて考えもしないことであった。
「まあSランク級というべきか。半年前のケンタウロスがまだ中腹にいるとすれば、頂上はそれ以上となる。総合危険度Aランクを凌駕するものとはSランク級であるとしか考えられんのだ……」
最悪の状況を考えた場合にSランクになると玲奈。全ては昨年度の探索結果からの推測であり、オーガが麓まで追い立てられたと考えた場合だ。仮にオーガが狩りをするために麓まで赴いていたのだとしたら、玲奈の悲観的予想は否定されるはず。
「とにかく気を引き締めていくぞ。最悪の場合を念頭にしつつも……」
「どういうこと? 玲奈ちゃん、Sランク級がいることより最悪な状況があるの?」
堪らず早久良が聞いた。既に撤退やむなしと彼女は考えているのだが、玲奈が考える最悪の状況を知りたく思う。
うむっと返事をした玲奈は徐にその考えを口にしていく。
「スタンピードの可能性がある……」
玲奈の予想に全員が言葉を失う。今まで平然と聞いていた一八でさえ驚きを隠せなかった。
「おい玲奈、あんましビビらせんじゃねぇよ。これから探索するんだぞ?」
「別に驚かせているわけではない。スタンピードとは強大な存在によって引き起こされるもの。半年間に何も起こらなかったのは幸いだが、ふとしたことで決壊する恐れがある」
言って玲奈は本部と連絡を取る。このまま探索を続けたならば、逆効果になるかもしれないと。スタンピードは狂気の行進なのだ。そこに理性は存在せず、我先にと逃げ惑う魔物たちが押し寄せてくるだけであった。
しばし、玲奈の遣り取りを眺める。可能性を聞かされたあとでは玲奈が考えるように、試験を中止すべきかと思う。
「はい。了解しました……」
長い遣り取りの末、ようやく通信が終わった。しかし、側耳を立てていた班員たちは結果を推し量っている。玲奈が落胆している理由は想像に容易かったからだ。
「残念だが、試験は続行だ。スタンピードの兆候が見られるまでは撤退しないらしい。ただの予測に過ぎない話は聞き入れてもらえないようだ」
嘆息混じりに玲奈。確かに推測ではあったものの、可能性は高かったのだ。よって探索を続けよという命令は好ましい判断だと思えない。
「慎重に進む。魔道科は音量を抑えたデバイスに。ケンタウロスは私と一八で対処するから援護は不要だ……」
「玲奈さん、本気ですか? ケンタウロスは動きが素早いだけでなく知能も高いですよ?」
堪らず恵美里が意見した。確かに魔道科のデバイスは大きな音を立ててしまう。魔物を驚かせないこと、気付かれないことを重視するならばサイレンサーを付けるしかない。だが、威力は損なわれるし、サイレンサーは短銃にしか装備できなかった。
「別に無茶を言っているわけではない。ケンタウロスは別に強固な鱗を持つわけでもないしな。初太刀で仕留めるだけだ」
「恵美里さん、俺も大丈夫っす。玲奈が斬り付けた隙を狙います。何頭いようがぶった斬るだけ……」
決して魔力温存の指示ではないのだが、流石にAランク相当とされるケンタウロスの群れを援護もなしに乗り切れるような気がしない。
「恵美里とこのみんは状況を見て足止めする程度でいい。群れの規模が十頭までなら待機。それ以上ならピンポイントで目を狙ってくれ。即死以外の攻撃ができないのなら、その場合も待機だ」
玲奈の指示は徹底している。魔物を倒すのは一撃である場合のみ。スタンピードを懸念する以上は声を上げるような攻撃をするべきではないのだと。
剣術科を先頭にして山道を行く。玲奈の推測通りに現れる魔物は全てがCランクであった。ロッコウ山系は明確にピラミッド型の生態系を作り上げているように感じられる。
デバイスにて位置を確認。もうそろそろケンタウロスが現れたという地点である。しかし、何もいない。そこには魔物の気配すらなかった。
安堵したのも束の間、六人は予想外の光景を目撃することになる。
「これは……?」
少し開けた場所におびただしい数の死体が転がっていたのだ。一見すると人骨のようにも見えたが、腐った肉片は馬のような部位もある。これにより予想されるのは考えていたよりも状況が悪化していることだ。
「玲奈さん、これはケンタウロスの群れですよね?」
「うむ……。どうやら強大な何かに食い散らかされたようだ……」
予想される魔物が何であるのか絞りきれないが、脅威であるのは明らかだ。この惨状は災厄級を予感させるに十分であった。
「頂上へ続く途中の木々が倒されているな。地を這う魔物に間違いはないだろう。まあしかし、これでスタンピードの可能性は少しだけ低くなったといえる」
「どうしてだ? Bランクの魔物が一網打尽なんだぞ?」
一八が問いを返す。正直にケンタウロスが無惨にも食い散らかされている様は異常だと思う。一カ所に纏まった死体は逃げることすら叶わなかったと予想できたからだ。
「恐らく頂点に立つ魔物は素早くない。だが、ケンタウロスを一掃している。恐らくは猛毒を吐く魔物。加えて木々をなぎ倒すほどの巨体に違いない。また中腹にいたはずのケンタウロスが餌となったこと。総合的に考えれば、自ずと見えてくるはずだ」
玲奈が答えた。素早くはないという魔物が中腹まで餌を求めて下りてきたこと。詳しい説明に玲奈の考えが朧気であるけれど理解できた。
「これより先はもう食い散らかしたあとってことか?」
「恐らくな。ケンタウロスの群れを蹂躙できる存在だ。そいつがロッコウ山系の頂点に立つ事実は疑う余地がない。またそれはかなりの大食漢だろう。中腹まで足を伸ばすくらいに飢えている。この先にスタンピードを起こすほどの数はもう生息していないはずだ」
玲奈の予測は安心できると同時に恐れを抱くものだった。
毒を吐く魔物は限られている。けれど、真っ先に思い浮かぶ魔物がそれだとは思えない。
「バジリスクではありませんよね……?」
確認するような恵美里。彼女も一定の予測を済ませていたけれど、安心感を得たかったのか願望ともいえる魔物を口にした。
「バジリスクでは返り討ちに遭っただろう。ケンタウロスは素早く攻撃力も十分だ。Cランクの魔物ではケンタウロスの群れに近付くことすら叶わなかったはず……」
少しばかり躊躇ったあと玲奈が口にする。考えられる最悪の事態。彼女は災厄級とされる魔物の名を告げた。
「頂点に立つ魔物はヒュドラ――――」
全員が声を失っている。基本はAランク指定の魔物であったが、成長によってヒュドラはSランク級とされた。元は巨大な水蛇であり、Aランク指定はその水蛇だけである。
ヒュドラは成長するにつれて頭の数が増える魔物だ。双頭以上に成長したヒュドラは全てがSランクとなった。従って成長過程で討伐すべき魔物であり、ケンタウロスの群れを圧倒するまでに成長してしまっては手の施しようがない。
「で、どうするよ? また報告すっか?」
一八が玲奈に問う。再び推論を伝えるのかどうか。災害級を通り越す魔物がいるという話に撤退指示をもらえるのかと。
「いや、一応は存在を確認する。ヒュドラは危険だ。餌がなくなれば山を下りるのは確実だからな……」
推論を伝えたとして状況は変わらない。先ほどは撤退を求めた玲奈だが、スタンピードの可能性が低くなり、予想される魔物がヒュドラであれば調査が必要だと主張する。
「玲奈ちゃん、大丈夫なの?」
怯えたような声で静華が聞いた。ケンタウロスだけでも怖かったというのに、災厄級に迫る魔物がいると聞けば尻込みしてしまう。
「大丈夫かどうかは支援次第だ。何しろ成長したヒュドラは猛毒を吐く。静華のエクスピュアリフィケーションに私は期待しているのだ……」
猛毒は間違いなく致死性の部類だ。だからこそ、支援科の二人を頼らざるを得ない。
エクスピュアリフィケーションは解毒系の上位魔法であり、事前にかけておくと致死性の毒耐性を得られるだけでなく、解毒も可能であった。
コクリと頷く静華。授業では回復支援の重要さをコンコンと聞かされていたのだ。実戦に赴き初めて理解する。仲間が助かるか失われるか。その鍵は支援にかかっているのだと。
「任せて! ねぇ、早久良!」
「うん、これでも首席と次席だからね? 大船に乗ったつもりでいいよ!」
ようやく二人も覚悟を決めたらしい。元より騎士となるのだ。一般人のように逃げ惑うなんて許されない。
六人は再びロッコウ山系を登っていく。一頭の魔物すら現れないのは予想されたままだ。一歩進むごとに予想が現実となる気がしている。恐らくこの先も多頭竜によって食い尽くされたのだと思えてならない。
二時間ほどかけて進むと木々の生えていない場所へと到着。もうそこは頂上であった。毒素を含んだ岩肌があったけれど、予想していたヒュドラの姿はない。
手分けして周囲を探索するも、頂上の見晴らしは良く、木々をなぎ倒すほどの巨大な魔物はいなかった。
「どういうことだ……?」
玲奈が眉根を寄せた瞬間、玲奈のハンディデバイスが音を立てる。
それは本部からの通信であった。緊急時には連絡を入れると聞かされていたことから、覚悟をして聞く必要がある。
『西大寺だ! 岸野、直ぐさま西側へと進め! 二班が孤立した!』
通信は西大寺からであった。どうやら伸吾がリーダーを務める二班が魔物によって動けなくなったらしい。
「どういうことです? 二班の実力を私は理解しているつもりですが……」
伸吾と莉子だけでなく、二班には舞子もいるのだ。従って玲奈には二班が苦境に陥る状況が想像できなかった。
しかしながら、玲奈は知らされている。予想外の相手が現れてしまったことを。
『ヒュドラが出現した――――』
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