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第二章 騎士となるために
緊急事態
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西大寺の元に次々と撤収報告が上がっている。これには正直に安堵していたけれど、どうしてか一班のひと組だけはまだ連絡がない。
「応答しろ、奥田! 金剛、何があった!?」
何度も呼びかけるけれど応答はない。悪い予感がしてならなかった。なぜなら二人はエリア2を担当している。意図せず西大寺の脳裏には去年の惨状が蘇ってしまう。
同じように音信不通となっていたのだ。高原候補生が失われたあのときと、この状況は少しも変わらない。
『西大寺教官、応答してくれ!』
ここで再び本部からの通信が入った。今度は事務長であったが、どうにも困惑してしまう。それが緊急連絡であったのは明らかであったのだから。
「西大寺です……」
『ああ、すまないな。撤収は順調かどうかの確認だ……』
話は予想と違っている。飛竜の続報かと思えば内容は通達事項の進捗状況を尋ねるものであった。
「順調ではありますけど、一班の二人だけが音信不通です……」
『なんだと? ひょっとしてそれはミノウ山地の山際にあるエリアか?』
「よくご存知で。確かにミノウ山地の際にあるエリアです。我がクラスでは2番目に危険な区画であります」
西大寺は問われたまま答えただけ。しかし、事務長は驚きのあまり声を詰まらせている。
『さ、西大寺教官……』
眉根を寄せる西大寺。通信の有無は単に戦闘中であるだけという可能性が高かったというのに。
しかし、西大寺は知らされてしまう。事務長が懸念する事態は楽観的予想とまるで違っていたのだと。
『飛竜はミノウ山地に降下した――――』
西大寺は絶句していた。何度呼び掛けようが返事すらない一班の二人。そこで何が起きているのかは想像に容易い。
「急遽、救助班を編成します!」
『そうしてくれたまえ。近隣の候補生も招集し、必ず救助するように』
言って事務長からの通信は切れた。
西大寺は透かさず連絡を取る。自身も救援に向かうつもりだが、近場にいる部隊を早急に合流させようとして。
「岸野! 鷹山! 応答しろ!――――」
「応答しろ、奥田! 金剛、何があった!?」
何度も呼びかけるけれど応答はない。悪い予感がしてならなかった。なぜなら二人はエリア2を担当している。意図せず西大寺の脳裏には去年の惨状が蘇ってしまう。
同じように音信不通となっていたのだ。高原候補生が失われたあのときと、この状況は少しも変わらない。
『西大寺教官、応答してくれ!』
ここで再び本部からの通信が入った。今度は事務長であったが、どうにも困惑してしまう。それが緊急連絡であったのは明らかであったのだから。
「西大寺です……」
『ああ、すまないな。撤収は順調かどうかの確認だ……』
話は予想と違っている。飛竜の続報かと思えば内容は通達事項の進捗状況を尋ねるものであった。
「順調ではありますけど、一班の二人だけが音信不通です……」
『なんだと? ひょっとしてそれはミノウ山地の山際にあるエリアか?』
「よくご存知で。確かにミノウ山地の際にあるエリアです。我がクラスでは2番目に危険な区画であります」
西大寺は問われたまま答えただけ。しかし、事務長は驚きのあまり声を詰まらせている。
『さ、西大寺教官……』
眉根を寄せる西大寺。通信の有無は単に戦闘中であるだけという可能性が高かったというのに。
しかし、西大寺は知らされてしまう。事務長が懸念する事態は楽観的予想とまるで違っていたのだと。
『飛竜はミノウ山地に降下した――――』
西大寺は絶句していた。何度呼び掛けようが返事すらない一班の二人。そこで何が起きているのかは想像に容易い。
「急遽、救助班を編成します!」
『そうしてくれたまえ。近隣の候補生も招集し、必ず救助するように』
言って事務長からの通信は切れた。
西大寺は透かさず連絡を取る。自身も救援に向かうつもりだが、近場にいる部隊を早急に合流させようとして。
「岸野! 鷹山! 応答しろ!――――」
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