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第一章 転生者二人の高校生活
一八、カラスマ女子学園の陰謀を知る
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本日から二学期が始まる。気持ちの良い朝であったけれど、一八は学校に行きたくなかった。夏休み中に武士との乱取りが始まり、それがとても面白かったのだ。物足りなくなってきた門下生とは異なり、武士が相手になると手も足もでなかったからである。
「ちくしょう、早く師範から一本取りたいぜ……」
しぶしぶと玄関を出ると玲奈が門の前に立っていた。別に一緒に登校する約束などしていなかったというのに。
「よう、どうした?」
「いやなに、登校中に試験問題を出してやろうと思ってな!」
夏休み中は毎日世話になっていた。玲奈も自分の時間が必要だろうに、一八の受験勉強に協力している。
「そこまでしなくてもいいぞ? 言われなくてもやってるし」
「別に貴様のためだけじゃない。貴様に教えているうち、私も理解が深まったのだ。よってこれは私の復習みたいなものだから気にするな」
有り難い話である。恐らく玲奈は既に準備万端なのだろう。一八とは違って小さな頃から騎士を目指していたのだから。
武道学館の校門前に差し掛かり、玲奈は足を止めた。
「一八、試験まであと四ヶ月しかない。既に一度死んだ身だ。もう一回死ぬ気でやれ。不合格など許さん……」
普通ではない激励をもらう。けれど、一八はその通りだと思う。頑張れる期間が定まっているのだから全力で走り抜けるだけ。やり直しの人生を楽しむためにも、ここは正念場であった。
「楽しみだった体育祭も面倒になってきたぜ……」
「まあそういうな。貴様は一応、人気投票で残って……」
口にしたところで玲奈は言葉を飲み込む。それはずっと秘密裏に動いていたことであり、武道学館には伝えていないこと。ルックスや将来性、実家のランクまでもを一覧にしてカラスマ女子学園での人気投票を先んじて行っていたのだ。
「人気投票? なんだそれは? 全然聞いてねぇぞ?」
睨みを利かす一八に玲奈は言い淀む。しかしながら、一八は武道学館の生徒会長であり実行委員でもある。彼にだけは伝えても良いのではないかと玲奈は思った。
「実はカラスマ女子学園では既に二人三脚の参加者を選抜していたのだ。表向きには二学期の体育祭準備で頑張った者から選ぶと伝えていたのだがな……」
「何だと? それじゃあ意気込んでいる奴らは無駄ってことか?」
眉間にしわを寄せて一八が尋ねた。武道学館生は全員が張り切っていたのだ。プレゼンと題された体育祭のテントや設備の設置準備。現場にはカメラが設置され、誰よりも頑張った者が選ばれると伝えられていた。
「無駄ではない。だが、事前の人気投票で上位に入らなかった者は不可能だ。本投票と同じだけの得点が加算されるからな……」
「大半が無駄じゃねぇかよ。ひでぇことしやがるな?」
「受験における一八の内申点みたいなものだ。人気投票で駄目だったとしても本投票でトップを取れたのなら可能性はあるだろう。事前に選抜したのは女子の参加が危ぶまれたからだ。貴様らとて男同士で二人三脚などやりたくないだろう? 彼女らに興味を持ってもらうには必要なことだったのだ」
理由を聞けば一八も納得していた。ただでさえ評判が悪い武道学館生である。無作為に相手が決まるというならば、かなりのギャンブルだ。大半が荒くれ者であるのだから事前の選抜は正しいように感じる。
「それで俺は選抜に残ったというわけだな?」
「そういうことだ。貴様はインハイで無敵だし、家が有名な道場だからな。その辺りが評価されたのだろう」
「失礼な。俺の甘いマスクに惚れたのやもしれんぞ?」
最後の話はワハハと豪快に笑い飛ばされてしまう。玲奈はそのまま手を挙げてカラスマ女子学園へと入っていく。
不満げな顔をして見送っていた一八だが、気持ちを切り替える。
どうせなら二人三脚も楽しんでやろうと。最後まで残れるのか分からなかったけれど、なるようにしかならないと割り切っていた。
久しぶりの学校。いよいよ二学期が始まろうとしている……。
「ちくしょう、早く師範から一本取りたいぜ……」
しぶしぶと玄関を出ると玲奈が門の前に立っていた。別に一緒に登校する約束などしていなかったというのに。
「よう、どうした?」
「いやなに、登校中に試験問題を出してやろうと思ってな!」
夏休み中は毎日世話になっていた。玲奈も自分の時間が必要だろうに、一八の受験勉強に協力している。
「そこまでしなくてもいいぞ? 言われなくてもやってるし」
「別に貴様のためだけじゃない。貴様に教えているうち、私も理解が深まったのだ。よってこれは私の復習みたいなものだから気にするな」
有り難い話である。恐らく玲奈は既に準備万端なのだろう。一八とは違って小さな頃から騎士を目指していたのだから。
武道学館の校門前に差し掛かり、玲奈は足を止めた。
「一八、試験まであと四ヶ月しかない。既に一度死んだ身だ。もう一回死ぬ気でやれ。不合格など許さん……」
普通ではない激励をもらう。けれど、一八はその通りだと思う。頑張れる期間が定まっているのだから全力で走り抜けるだけ。やり直しの人生を楽しむためにも、ここは正念場であった。
「楽しみだった体育祭も面倒になってきたぜ……」
「まあそういうな。貴様は一応、人気投票で残って……」
口にしたところで玲奈は言葉を飲み込む。それはずっと秘密裏に動いていたことであり、武道学館には伝えていないこと。ルックスや将来性、実家のランクまでもを一覧にしてカラスマ女子学園での人気投票を先んじて行っていたのだ。
「人気投票? なんだそれは? 全然聞いてねぇぞ?」
睨みを利かす一八に玲奈は言い淀む。しかしながら、一八は武道学館の生徒会長であり実行委員でもある。彼にだけは伝えても良いのではないかと玲奈は思った。
「実はカラスマ女子学園では既に二人三脚の参加者を選抜していたのだ。表向きには二学期の体育祭準備で頑張った者から選ぶと伝えていたのだがな……」
「何だと? それじゃあ意気込んでいる奴らは無駄ってことか?」
眉間にしわを寄せて一八が尋ねた。武道学館生は全員が張り切っていたのだ。プレゼンと題された体育祭のテントや設備の設置準備。現場にはカメラが設置され、誰よりも頑張った者が選ばれると伝えられていた。
「無駄ではない。だが、事前の人気投票で上位に入らなかった者は不可能だ。本投票と同じだけの得点が加算されるからな……」
「大半が無駄じゃねぇかよ。ひでぇことしやがるな?」
「受験における一八の内申点みたいなものだ。人気投票で駄目だったとしても本投票でトップを取れたのなら可能性はあるだろう。事前に選抜したのは女子の参加が危ぶまれたからだ。貴様らとて男同士で二人三脚などやりたくないだろう? 彼女らに興味を持ってもらうには必要なことだったのだ」
理由を聞けば一八も納得していた。ただでさえ評判が悪い武道学館生である。無作為に相手が決まるというならば、かなりのギャンブルだ。大半が荒くれ者であるのだから事前の選抜は正しいように感じる。
「それで俺は選抜に残ったというわけだな?」
「そういうことだ。貴様はインハイで無敵だし、家が有名な道場だからな。その辺りが評価されたのだろう」
「失礼な。俺の甘いマスクに惚れたのやもしれんぞ?」
最後の話はワハハと豪快に笑い飛ばされてしまう。玲奈はそのまま手を挙げてカラスマ女子学園へと入っていく。
不満げな顔をして見送っていた一八だが、気持ちを切り替える。
どうせなら二人三脚も楽しんでやろうと。最後まで残れるのか分からなかったけれど、なるようにしかならないと割り切っていた。
久しぶりの学校。いよいよ二学期が始まろうとしている……。
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