5 / 68
序章 ヒロインと悪役令嬢
序章5話 情報収集
しおりを挟む
わたくし、ラズマリア・オリハルクスは転生者です。
3歳のある日でした。お父様が見せてくださった火の魔法を目にした瞬間に前世の記憶が流れ込んできます。この世界ではない遠い場所で生き、そして命を落とした僕。その無念があるいはこの転生という結果を呼び寄せたのでしょうか。
かつてのわたくしは病弱でベットから出ることのあまり出来ない少年でした。だから、記憶のほとんどは経験ではなく知識。だからなのかあるいはわたくし達の相性が良かったのかは存じませんが、二人の魂とでも称すべき何かから深層心理に至るまで一点の曇りなく融合を果しました。
どちらの自分でもあり、どちらの自分でも無い不思議な、けれど心地よい状態それが前世の記憶に目覚めた後のわたくしです。
だから一応、前世の反動なんでしょうね。それまでと景色が大きく変わって見えました。つまらないと思っていたものさえも魅力的で好奇心をくすぐって見え、触れるもの全てが刺激的でした。何かが出来ることそのものが幸福でわたくしは衝動のまま突き進む事にしたのです。
記憶が蘇って最初に思い立ったのは本を読む事。まずは情報が必要でした。地理に歴史、自らの立場や経済産業宗教に至るまで。
しかし、この時点で問題が発生です。……近くに置いてあった本を開くも、幼女なので字があまり読めません。
異世界転生シリーズではよくある読み書き関連のボーナススキルは与えられ無いらしいですね。
幸いにも貴族の子女という教育を受けられる立場にあったので、まずは字を覚える事にしました。この時に気がついたのですが、地の頭がかなり優れているらしいです。文法の構築が出来るに至るまで熟達するのにもさほど時間を必要としませんでした。
字を使いこなせる様になったので、いよいよ書庫に並んだ書物に挑みます。ちょっとしたお店くらいの広さがあるので、迫力がありましたね。
手頃な場所に面白そうなタイトルが見えたので手に取ります。
記念すべき1冊目はこちら!
ご先祖様が書いた伝記……の写本!
――『王都を蝕む魔物を退けよ』という依頼の受注が我らの始まりである。以前はゴブリンやコボルトが幾らか現れる程度であった王都周辺の魔物であったが、いつからかそれらとはまるで比較にならない強大な魔物が度々出没するようになった。しかしこの魔物達、近隣で発生した形跡が無く、どこからか移動してきているのだろうと我らは考え、出処を確かめるべく旅に出る。
山を超え川を超え探索を続けていたある日のこと。空高く竜が飛び去るのを発見し、その方角へと歩みを進めると、海に挟まれた山の連なる地に辿り着く。オルヴィエート王国の北東に位置するこの地は強力な魔物が蔓延る山脈に接していた。木々は異常なまでに大きく、少し進むごとに魑魅魍魎が行く手を阻んだ。大地より溢れる魔の力が魔物の格を引き上げているのでは、と考えに至りこの禍々しい山を我らは魔境と名付けた。そして、王都に蔓延った魔物の供給源であるこの地に砦を設ける事とした。
ご先祖様はもともと冒険者だったようです。
ただ、伝記と言いつつも要約すると苦労話ばかりなので割愛します。
――そして我が妻、聖女ローズマリアの紡いだ結界により10年に及んだ戦いの日々は終結を迎えたのであった。頭痛の種であった北東を平定し、魔境より以南西を領土に加えた功績を甚く喜ばれた陛下より辺境伯の爵位を拝命する。
初代聖女様は初代オリハルクス辺境伯の妻だったそうで、以前お父様が見せてくださった家系図によるとわたくしにもその血が流れているようです。
その後も書庫をひっくり返すように書物を読み漁り、概ね知りたかった情報を得ることができました。
オリハルクス領は海に面しているため、水産業が盛んであると共に、魔境に棲息する魔物の素材や魔石を他領に輸出する事で経済が成り立っています。また、冒険者が多いため、彼らが生み出す需要も小さくないですね。魔境に棲息する樹木の薪やゴーレムから収集出来る鉱石など、原材料が確保できるため武器や防具の鍛冶も盛んです。
対して農業の規模は小さく、作物の多くは他領に頼っている状態です。そのあたりは作らなくても儲かるので、さほど重要でもないらしいです。近隣が不作でもいざとなれば船を出して買い付ける手がありますし、肉や果物は魔境で採れるので一時しのぎも出来る土台があります。
……こうして見ると迷惑だったはずの魔境にどっぷりと依存してますね。
これ以外にも使用人の皆さんにお話を伺ったりして補足しましたね。
こんな感じで7歳前くらいまでは書庫に巣食うようにして過ごしてましたよ~。
3歳のある日でした。お父様が見せてくださった火の魔法を目にした瞬間に前世の記憶が流れ込んできます。この世界ではない遠い場所で生き、そして命を落とした僕。その無念があるいはこの転生という結果を呼び寄せたのでしょうか。
かつてのわたくしは病弱でベットから出ることのあまり出来ない少年でした。だから、記憶のほとんどは経験ではなく知識。だからなのかあるいはわたくし達の相性が良かったのかは存じませんが、二人の魂とでも称すべき何かから深層心理に至るまで一点の曇りなく融合を果しました。
どちらの自分でもあり、どちらの自分でも無い不思議な、けれど心地よい状態それが前世の記憶に目覚めた後のわたくしです。
だから一応、前世の反動なんでしょうね。それまでと景色が大きく変わって見えました。つまらないと思っていたものさえも魅力的で好奇心をくすぐって見え、触れるもの全てが刺激的でした。何かが出来ることそのものが幸福でわたくしは衝動のまま突き進む事にしたのです。
記憶が蘇って最初に思い立ったのは本を読む事。まずは情報が必要でした。地理に歴史、自らの立場や経済産業宗教に至るまで。
しかし、この時点で問題が発生です。……近くに置いてあった本を開くも、幼女なので字があまり読めません。
異世界転生シリーズではよくある読み書き関連のボーナススキルは与えられ無いらしいですね。
幸いにも貴族の子女という教育を受けられる立場にあったので、まずは字を覚える事にしました。この時に気がついたのですが、地の頭がかなり優れているらしいです。文法の構築が出来るに至るまで熟達するのにもさほど時間を必要としませんでした。
字を使いこなせる様になったので、いよいよ書庫に並んだ書物に挑みます。ちょっとしたお店くらいの広さがあるので、迫力がありましたね。
手頃な場所に面白そうなタイトルが見えたので手に取ります。
記念すべき1冊目はこちら!
ご先祖様が書いた伝記……の写本!
――『王都を蝕む魔物を退けよ』という依頼の受注が我らの始まりである。以前はゴブリンやコボルトが幾らか現れる程度であった王都周辺の魔物であったが、いつからかそれらとはまるで比較にならない強大な魔物が度々出没するようになった。しかしこの魔物達、近隣で発生した形跡が無く、どこからか移動してきているのだろうと我らは考え、出処を確かめるべく旅に出る。
山を超え川を超え探索を続けていたある日のこと。空高く竜が飛び去るのを発見し、その方角へと歩みを進めると、海に挟まれた山の連なる地に辿り着く。オルヴィエート王国の北東に位置するこの地は強力な魔物が蔓延る山脈に接していた。木々は異常なまでに大きく、少し進むごとに魑魅魍魎が行く手を阻んだ。大地より溢れる魔の力が魔物の格を引き上げているのでは、と考えに至りこの禍々しい山を我らは魔境と名付けた。そして、王都に蔓延った魔物の供給源であるこの地に砦を設ける事とした。
ご先祖様はもともと冒険者だったようです。
ただ、伝記と言いつつも要約すると苦労話ばかりなので割愛します。
――そして我が妻、聖女ローズマリアの紡いだ結界により10年に及んだ戦いの日々は終結を迎えたのであった。頭痛の種であった北東を平定し、魔境より以南西を領土に加えた功績を甚く喜ばれた陛下より辺境伯の爵位を拝命する。
初代聖女様は初代オリハルクス辺境伯の妻だったそうで、以前お父様が見せてくださった家系図によるとわたくしにもその血が流れているようです。
その後も書庫をひっくり返すように書物を読み漁り、概ね知りたかった情報を得ることができました。
オリハルクス領は海に面しているため、水産業が盛んであると共に、魔境に棲息する魔物の素材や魔石を他領に輸出する事で経済が成り立っています。また、冒険者が多いため、彼らが生み出す需要も小さくないですね。魔境に棲息する樹木の薪やゴーレムから収集出来る鉱石など、原材料が確保できるため武器や防具の鍛冶も盛んです。
対して農業の規模は小さく、作物の多くは他領に頼っている状態です。そのあたりは作らなくても儲かるので、さほど重要でもないらしいです。近隣が不作でもいざとなれば船を出して買い付ける手がありますし、肉や果物は魔境で採れるので一時しのぎも出来る土台があります。
……こうして見ると迷惑だったはずの魔境にどっぷりと依存してますね。
これ以外にも使用人の皆さんにお話を伺ったりして補足しましたね。
こんな感じで7歳前くらいまでは書庫に巣食うようにして過ごしてましたよ~。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
偽聖女——呪われた公爵令嬢は聖女になりたい——
夜道に桜
ファンタジー
母が亡くなり、父が狂った。
狂人になり果てたラズライト帝国公爵家当主キュロス・グランデは、何をとち狂ったのか娘であるアルファルド・グランデに呪いをかけた。
腕に刻まれた呪い。
それは見るもおぞましく、見るに堪えない。
治療法は、帝国内には見当たらなかった。
呪いを取り除くため、アルファルドは年に一度、他国であるバレンタイン王国への外交で、父の目を盗んで、いち早く王国へと旅立った。
呪いを祓うために。
ーー
時を同じくして、バレンタイン王国王女マーガレット。
彼女は、純粋無垢でお転婆。
王女として、大切に育てられてきた。
だが、王女としての品はあまり無く、時折、王都へ一人繰り出して遊んでいた。
そんな中、彼女は一人の偉丈夫と出会い、王国の闇について知る。
これは二人の少女にまつわるお話。
なろうでも書いてます
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる