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序章 ヒロインと悪役令嬢

序章2話 何の成果も得られませんでした

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 はい、回避に失敗しました。
 色々とやった結果見事に原作の状態に収束しました。
 
 なにがどうなってんのよ。修正力とかそういう謎の力が働いてんじゃないかしら。何をやらかしても、このゲームの舞台に戻されるように世界が出来ているのではないかと疑うレベルね。

 最初は最大の関門であった王子との婚約をどうにかして阻止しようと目論んだ。普通の令嬢ならば王子というだけでさぞ浮かれるだろう。
 私だってそうだ。彼により処刑台に送られることさえ知らなければ。

 これについては体裁上、面と向かって断る訳にもいかないのでお父様から私に打診があった時点で断固拒否してみたのだけれど、王国中央への影響力を得たいお父様と中央の貴族に力を付けさせたくない王家の思惑ががっちり噛み合って無事成婚である。

 こちらの意向を確認したくせに、秘密裏に婚約を推し進めていたらしく、後日その事実を知った私はお父様が大層気に入っている毛皮にブラックコーヒーをポットごとぶちまけた。

 2つ目に考え付いたのが王立学院への入学の回避だ。

 学院に通うためには難度の高い試験に合格しなければならない。が、例外はある。それも全く逆の形になるが、国内の魔法を使える者は例外なく学院の魔法課に通う事が義務付けられている。つまり、魔法さえ使えなければ、後は試験に落ちるだけ。

 名付けて破滅は学院で起こるのだから、学院に行かなければ助かる作戦!

 ……なお、スキルとステータスを鑑定するマジックアイテムが存在して、御破算になりました。解せぬ……

 それにしてもエリーゼが土属性だとは思わなかったわ。ゲームでもエリーゼとヒロインが戦うイベントは何度か発生するけど、魔法もスキルも使わずに通常物理攻撃オンリーの脳筋だったからね。そもそも、土魔法は詠唱完了から発動までが長くて攻略ウィキではラグ魔法って呼ばれるくらい使いづらいのよね。詠唱中は照準を合わせる事が出来るのに対し、発動中は狙いを変えることも、動くこともままならない。
 生産スキルは優秀なので、無駄ではないけど、戦闘には向かないのが通説。

 ただし、土魔法問題により3つ目の作戦も瓦解するのよね……

 敵より強くなって逃げる作戦……

 ――水風の2属性か火属性なら運用次第で強くなることも出来るわ、とドヤ顔してた自分を殴りたい。よりによって土!? って思ったけど、テラティア家は代々強力な土使いの家系らしく、その魔法を存分に活かすことで豊かな田園を築き上げ、王国内の食料供給を抑える事で伯爵家となった。むしろ、土に目覚めて当然である。

 よってこの作戦も断腸の思いで断念した。
 
 他にも色々と試みたがささやかな抵抗すら許されないくらい見事なまでにゲーム開始時点の再現をしている。

 ストーリーは15歳、王立学院に入学するところから始まる。
 そして現在。私がいるのは絶賛学院に向う馬車の中だ。3歳時点では時間もあるしなんとかなると思っていたのに、結局何の成果も得られず今や15歳……
 前世で愛用した胃薬が欲しくなるわね……
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