【R18】貧乏令嬢は公爵様に溺愛される

日下奈緒

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第5章 恋愛結婚

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翌日、私はエリクに激怒された。

「なぜ、恋愛したいなど、余計な事を言ったのですか。」

「それは、コラリー様の希望で……」

「何が希望ですか!」


ひぇっ!

どうしてそこまで怒るの?

私は身を縮めた。


「いいですか。恋愛するという事は、確かに好きになって貰える、愛して頂ける事もあります。」

「いい事じゃないですか。」

「そればかりではありません!恋には、期限があるのです。」

「期限?」

またエリクは、難しい事を言う。

「飽きてくるという事です。セザール様が、コラリー様に飽きてしまって、他の女性にいったらどうするんですか。」

「……困ります。」

「だから!恋愛などしなくても、いいのです!」

エリクは、胸を張って大きな声を出した。

私は不思議に思った。

エリクさんは、どうなんだろう。

恋愛とか、した事があるのだろうか。


「エリクさんは、おいくつなんですか?」

「突拍子もない事を聞きますね。25歳です。」

「恋愛をした事は、ないのですか。」

エリクさんは、私は冷たい目で見降ろす。

「そういう事は、いいんです。」

「よくないです。」


だって、恋愛した事もない人に、恋愛はしない方がいいとか、言われたくないもん。


「エリクさんだって、いつかは結婚するんですよね。」

「でしょうね。」

「どうやって、決めるんですか?」

「まあ、旦那様辺りが見つけて下さいますでしょう。」


驚いた。

侍従の人も、自分で結婚相手が決められないの?

しかも、旦那様?コラリー様とオラース様のお父様に決めて貰うなんて、それでいいの?

私達みたいな、家の為に結婚しなくてもいいのに、寂しすぎる。

「エリクは、好きな人と結婚したいと思わないの?」

「好きな人?ああ、恋愛するって事ですか?結婚した相手と、すればいいでしょう。」

「それで、エリクも奥さんに飽きたら?」

「もう結婚しているので、飽きても一緒にいるだけです。」


やっぱり寂しい。

恋愛って、結婚って、そんなもの?


その時、コラリー様の声がした。

「こら、エリク。アンジェを悲しませないで。」

ダンスの練習から、コラリー様が戻ったのだ。

そう。私は、コラリー様がダンスの練習をしている時に、エリクに呼び出されて、怒られていたのだ。


「悲しませてなどいません。現実を教えて差し上げていたのです。」

エリクはやっぱり、胸を張っている。

自分の意見が、正しいと思っているのね。

「アンジェ。どんな現実を教えられたの?」

コラリー様は、私の顔を覗き込んだ。

「はい。恋愛なんて、しない方がいいと。結婚した後に、恋愛すればいいって、言われました。」

「アンジェリク嬢!」

私は、エリクに向かって、舌をペロッと出した。

「あーあ。寂しい人ね。」

コラリー様は、これ見よがしに手をヒラヒラさせた。

「熱い気持ちも知らないで結婚したって、そんな結婚生活、たかが知れているわ。」

「うっ……」

さすがのエリクも、コラリー様には、対抗できないみたい。


「セザール様は、私と恋愛して下さると仰ってくれたわ。それから毎日、お手紙を頂いているの。大丈夫よ。セザール様は、浮気心なんて持っていない方よ。」

コラリー様は、自信満々だ。

「どうしてそのように言えるのですか。」

なぜかエリクは、強きで応戦。

「セザール様の人柄よ。お手紙で知るに、誠実な方だわ。」

「そういう方に限って、浮気したりするんです。」

コラリー様もエリクも、お互いフンッと顔を背ける。

それを見て私は、クスッと笑ってしまった。


「ここの家は、侍従も主人も、仲がいいんですね。」

私が笑うと、さっきまで背中を向けていたコラリー様とエリクも、顔を向けた。

「なんて言っても、小さい頃から一緒にいるしね。」

「いいえ。コラリー様とオラース様の心が、広いからですよ。」

そして気になった、今後の事。

「もし、コラリー様がバルニエ家にお嫁に行ったら、私は、同じように接する事はできるのでしょうか。」

するとコラリー様は、私をぎゅっと抱きしめてくれた。

「私達二人の仲は、変らないわ。」

「コラリー様……」

ああ、やっぱりコラリー様にお仕えできて、私は幸せだわ。

私は、コラリー様の腕を、ぎゅっと掴んだ。

「それはそうと、アンジェリク嬢。バルニエ家で、言い方と巡り合えればいいですね。」

「えっ?」

エリクは、また冷たい目で私を見た。

「あなたも公爵令嬢で、結婚相手を探す為に、コラリー様の侍女になったのでしょ。」

「あっ!」

今の今まで、忘れていた。

「ご自分の事を忘れるくらい、コラリー様に仕えて頂くのは嬉しいのですが、しっかりしてくださいよ。」

「はーい。」


そうか。もしかしたら、コラリー様と一緒にいられるのも、私が結婚するまでなのかな。

なんか、寂しくなってきたな。

やだ、コラリー様と離れたくなくて、結婚が遅れたらどうしよう。


「なんだか、悩まれてますね。アンジェリク嬢。」

「きっと、私にも恋愛が!って、思っているんだわ。」

気楽な二人を前に、私は自分の身の上を、悩まずにはいられなかった。

その日の夜。

私は、自分の将来の事を考えると、眠れなくなった。

「あーあ。寝不足だと、目の下にクマができるのに。」

こんな時には、お母さん、いつもホットミルクを飲ませてくれた。

そうだ。

こうしていても眠れないから、キッチンへホットミルクを飲みに行こう。


私は、部屋をそっと抜け出した。

キッチンは、1階にある。

「どうしよう。こんなパジャマで誰かに見られたら。」

足音を立てないように、そろりそろりと、階段を降りた。

ここまでは、大丈夫。

誰もいない。

私は階段から、キッチンへ走った。


こんなところ、コラリー様にも、ましてやオラース様にも見せられない。

もう少しで、キッチンというところで、私は立ち止まった。

「誰もいないわね。」

その時だった。

「やあ。アンジェも眠れないの?」

振り返ると、そこには人影が。


「きゃああ……」

「大きな声出さない!」

急に口を塞がれた。

「だ、誰か!」

「僕だよ、アンジェ。」

よく見ると、オラース様が立っていた。

「オラース様。」

「そうだよ。急に大きな声出すなんて、びっくりした。」


いや、それはこっちのセリフだよ。

私は心の中で、そう答えた。

って、言うか私、パジャマだ!

オラース様に気づかれないように、腕を前で組んだ。

「どうしたの?」

「いや、その……」

ダメだと思って、背中を向けた、その時だった。

ふぁっと、肩に上着を掛けられた。

「ごめん。パジャマだったなんて、気が付かなくて。」

振り返ると、オラース様もパジャマだった。

「いや、僕もパジャマなんだけどね。」

「はっ、ははは。」

2人で可笑しくて、笑ってしまった。


「ところでオラース様は、何をしにキッチンへ?」

「ああ、ホットミルクを飲もうと思ってね。」

「えっ?」

驚いた。

そんなホットミルクぐらい、侍従に頼めば作ってくれるのに。

「オラース様が作るんですか?」

「そうだよ。もしかして、アンジェもホットミルクを?」

「はい。」

「僕達、一緒だね。」


一緒という言葉が、胸を温かくした。

「アンジェは、この屋敷のキッチン、初めてだろ。僕が作り方を教えてあげる。」

「はい。」

キッチンに入って、電気を着けると、オラース様は手慣れた感じで、小さい鍋にミルクを入れた。

「コンロはここを使うといいよ。」

そう言って、一番手前のコンロに鍋を置いた。

「そして、最後にお砂糖を一杯。」

しばらくするとミルクは沸騰して、ホットミルクは完成。

「はい、これ。」

オラース様は、マグカップにホットミルクを入れてくれて、差し出してくれた。

一口飲んでみると、優しい味がする。


「美味しいです。」

「ありがとう。」

オラース様も一口飲んで、ホッとしている。


「そう言えば、昼間、エリクに何を言われていたの?」

「ああ……コラリー様に恋愛結婚を進めて、叱られたんです。恋愛をして飽きられたら、どうするんだって。」

「へえ。」

オラース様は、しばらくボーっとすると、こんな事をボソッと言った。

「僕も、恋愛結婚してみたいな。」

「えっ!」


オラース様に、好きな人が!?

そんな~!


「……好きな方、いらっしゃるんですか。」

「今は、いないよ。ほら、僕達って、政略結婚するしかないだろ。結婚相手は、親が決める。その相手と恋愛したいって、僕はアンジェの気持ち、分かるな。」

胸がじーんとする。

こんなにも優しい言葉をかけてくれるなんて、オラース様はいい旦那様になるよ。

って、やっぱりオラース様の相手も、ご両親が決めるんだね。

ちょっと、ショック。


その時、オラース様はクスッと笑った。

「なんだかアンジェと一緒にいると、ほっとするよ。」

「そうですか?」

「不思議だな。君が来たのは、ついこの前なのに、まるでずっと前から一緒にいるような、そんな気がするよ。」

するとオラース様は、私を見つめてくれた。

「オラース様?」

だんだん、オラース様の顔が近づいてくる。

キスされる!?


その瞬間だった。

「何をしているんですか!?」

エリクの声が、キッチンに響き渡った。

「アンジェリク嬢!あっ、オラース様まで!」

エリクは慌てて、私達の側に来た。

「ホットミルクを飲んでいたのですか?仰っていただければ、お作りしたものを。」

「いいんだ。誰にも、邪魔されたくなかったから。」

「そうですか。って、えっ……二人共、パジャマ!?」

エリクの目が、だんだん丸くなる。


「ま、ま、ままさか。アンジェリク嬢!オラース様とそういう仲なのですか?」

「そういう仲?」

「二人でパジャマでいる仲です!」

その慌てように、私とオラース様は、腹を抱えて笑ってしまった。

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