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元の世界へ
①
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無事ラナーの部屋に戻った私は、制服に着替えた。
ポケットには、携帯も入っているし。
一件落着だよ。
するとほっとしたせいか、私は急に眠くなり始めた。
「ふぁ~あ。」
大きな生欠伸をして、目も開いていられない。
「眠そうだな、クレハ。」
「う……ん……」
頭を叩いて、眠気を覚ます。
「無理をする事はない。昨日の夜から、ろくに寝ていないのであろう?」
ジャラールさんは、私の背中をそっと、撫でてくれた。
「でも!」
「でも?」
眠ってしまったら、元の世界に戻ってしまう。
光清とときわが言ってた。
もうこの世界には、来ない方がいいって。
元の世界に戻ったら、二度とこの世界に、来れないかもしれない。
そう思ったら、泣きそうになった。
ダメダメ。
泣いたら余計疲れて、眠ってしまう。
「クレハ。とにかく、部屋に戻ろう。」
頭がボーッとするせいか、ジャラールさんに言われるまま、連れて行かれる。
廊下を歩く時も、こっちにふらふら、あっちにふらふら。
「おい、クレハ。大丈夫か?」
ハーキムさんも心配して、私の腕を掴む。
「だいひょうふ、だいひょうふ……」
半分寝ぼけている私を見て、ハーキムさんが、首を横に振る。
「よし。クレハ、俺が肩に抱えてやる。」
ハーキムさんが、中腰になった。
「いい、いい。」
「遠慮するな。」
手招きしているハーキムさんを見ていると、私を荷物と間違ってるんじゃないかと思う。
「ははは。ハーキム。それじゃあ、クレハだっておいそれと、行けないだろう。」
そう言ったジャラールさんは、私の横に立つと、軽く私を抱き抱えた。
こ、これは!
いつぞややってもらった、お姫様抱っこ!!
「ハーキム。女性は、こうして運ぶものだ。」
「はあ。」
頭をポリポリ掻いているハーキムさんを他所に、ジャラールさんは、廊下を進む。
ああ。
胸がドキドキして、急に眠気が覚めた。
「ジャラールさん。もう一人で歩けます。」
「いいから、もう少しこのまま、じっとしていろ。」
王子様なんだから、当たり前なんだろうけど、今さらながら、ジャラールさんの命令口調に、胸が高鳴る。
うるさくないのかな。
私の心臓の音。
「ほら、到着だ。」
そこは、昨日の夜泊まりかけた、ジャラールさんの部屋だった。
「ありがとうございます。」
もう降ろしてもらおうと、足に力を入れた。
「まだ、ここでは降ろさぬぞ。」
ジャラールさんに、また足を抱え込まれた。
「ジャラールさん?」
何を考えているのか、ジャラールさんは寝室の扉を開けた。
「えっ?えっ?」
驚いて後ろを見たけれど、付いて来ているはずのハーキムさんがいない。
なんで?
肝心な時にいないんだ、あの人は!!
「さて。お姫様、ここへどうぞ。」
ジャラールさんにそっと降ろされたのは、ふかふかのベッドの上。
「あ、あの……」
「クレハ。少し、休むんだ。」
そして、布団を足元まで掛けてくれた。
「ジャラールさん!私……」
「おやすみ、クレハ。」
するとジャラールさんは、私のおでこに、キスをした。
これで最後。
もう二度と、ジャラールさんに会えない。
「いや!」
私は頭を激しく、左右に振った。
「クレハ……」
「いや!ジャラールさんに会えなくなるなんて、そんなのいや!」
ジャラールさんは、私の顔を覗く。
「落ち着け、クレハ。これが最後じゃない。」
「ううん。分かってない!もう、この世界には来れない!!」
私がそう叫んだ瞬間、ジャラールさんは私を、強く抱き締めてくれた。
「そんな事はない!必ず会える!!」
耳元に伝わる、熱い吐息。
背中に伝わる、強い力。
でも心臓だけが、速い鼓動を知らせていた。
「ジャラールさん……」
「待っている。何年経っても待っている。この場所で、クレハをずっと、待ち続ける。」
嬉しくて、涙が後から後から溢れてくるのに、どうしてか、可笑しくて仕方がなかった。
「いつまでもって……ジャラールさん。隣の国へ行くんでしょう?」
「……そう、だったかな。」
「それに、私をずっと待ってるなんて。ネシャートさんがいるのに、そんな事できないじゃん。」
するとジャラールさんは、息もできない程に、ぎゅっと抱き締めてくれた。
「ジャラールさん。」
「あっ、すまん。苦しかったか。」
離れようとするジャラールさんを、追いかけるように、今度は私から、ジャラールさんを抱き締めた。
「ううん。もう少し、このまま……」
ジャラールさんの両腕が、私を包んだ。
そっとジャラールさんの肩に、もたれ掛かると、知らない世界へ行った気分になった。
幸せ。
私の頭の中に、そんな言葉が浮かんでくる。
「ジャラールさん。」
「ん?」
「私、砂漠で死にかけた時、助けてくれたのが、ジャラールさんでよかった。」
「私もだ。あの砂漠で、倒れ掛けている君を見て、迷わずに助けに走ってよかった。」
大変な夢の中に来てしまったと思った砂漠の中。
喉が乾いて、死ぬかと思った時、助けてくれたのが、ジャラールさんだった。
遠い日のように思えるあの時を思い出そうとすると、目がトロンとしてきた。
「ジャラールさん、私、もうダメみたい。」
「大丈夫だ。クレハはただここで、眠り続けるだけだ。」
「ここで?」
「ああ、そうだ。クレハは、私の部屋で静かに眠り続けるんだ。」
そう考えると、またジャラールさんに、会えそうな気がするよ。
「そうだ、ハーキムさんの顔も、見ておけばよかったな……」
「あいつの事は、今はいい。」
ジャラールさんの、少し妬いた言い方が可笑しかった。
すーっと、ジャラールさんの腕の中で、眠りにつく。
よかったね、ジャラールさん。
ネシャートさんと、結ばれて。
最後に言えなかったけれど、
ジャラールさん、
「ずっと好きだよ。」
ゆっくり目を開けると、そこは修学旅行で泊まっていた旅館だった。
「紅葉?」
ときわが私の顔を、覗きこむ。
「と、き……わ?」
「紅葉~!!」
寝ている私に、ときわが抱きついた。
「おかえり。」
その隣には、光清が座っていた。
「二人供、ずっと側にいてくれたの?」
「当たり前だろ。」
二人はそう言ってくれたけど、結構長い時間かかったと思うよ。
私は時間を見る為に、ちらっと時計を見た。
もう、朝だ。
「一晩……」
「えっ?なに?紅葉?」
「一晩、だったんだね。あっちの世界に行ってた時間。」
まるで、長い時を思い出すように、物思いに更ける私を見て、ときわと光清は顔を合わせた。
「あっちは、一晩じゃなかったの?」
ときわが、恐る恐る聞いてきた。
「二日ぐらいかな。」
「へ、へえ~……時間の流れは、一緒じゃないのね。」
ときわは、私と光清両方気を使っている。
「何はともあれ、無事に戻ってきたんだ。よかったじゃないか。」
光清が立ち上がる。
「もう出発の時間だよ。二人供、準備して。」
「あいよ。」
ときわが返事した後、光清は部屋を出て行った。
「そっか……出発の時間に間に合ったんだ。」
私がほっとしていると、ときわが私の背中を叩いた。
「痛いっ!」
「紅葉。後で光清にお礼言うんだよ。」
「なに、急に。」
「光清。紅葉がいつ起きてもいいように、一晩中起きててくれたんだよ。」
叩かれた背中に手を伸ばそうとして、途中で止めた。
「光清が?」
「そう。もし紅葉が、普通の状態で帰って来なくても、その時は俺がずっと、紅葉の面倒見るって。」
光清。
胸が苦しい。
ジャラールさんに感じた、胸の痛みとは違う。
そして一方、ときわの目はキラキラ輝いている。
「何考えてんの?ときわ。」
「別に~。さあ、私達も支度して行こう。」
ときわの思惑が何なのか分からないうちに、私達は支度をして、外に出た。
もう既にバスが来ていて、みんな乗り始めている。
「急ごう、紅葉。」
「うん。」
ときわと一緒に乗ると、彼女の取り巻き、いや、クラスの男の達の一部は、席を用意してくれていた。
「ラッキー!有り難う。」
ときわと一緒に座ろうとすると、席が空いていない。
さすがに、私の分はないって事か。
「紅葉。こっちこっち。」
後ろの方から光清の声がした。
隣を指差す光清に、近づいて行く。
途中、クラスの女の子に、じろっと睨まれた気がするけれど、今は気にしない。
だって光清の隣しか、席は空いていないんだから。
「Thank You、光清。」
「いや。」
ご丁寧に、窓際の席を用意してくれていた。
「そうだ、光清。」
「なに?」
「私がいつ起きてもいいように、一晩中起きててくれたんだって?」
すると光清は、反対の通路側を見て、ため息をついた。
「ときわだな。教えたの。」
「まあ、そうだけど。有り難う。」
「あ、ああ……」
光清のこの様子を見ると、本当は知られたくなかったんじゃないの?
私は席の隙間から、ときわを見た。
見えないけれど、ときわの頭がこっちを向いているような気がする。
案の定、光清がときわと目を合わせて、じーっと睨みをきかせていた。
そこへ担任の神崎先生が、バスに乗り込んだ。
「皆さん、揃ってますか?」
は~いと言う返事と供に、バスガイドさんが朝の挨拶をする。
ゆっくりとバスが動き、修学旅行は最終日を迎えた。
「これからバスは、東寺に向かって参ります。」
ああ、そうか。
もう一ヶ所、巡るんだ。
なんだか、もう終わった感じがするんだけどな。
「どうだった?砂漠の旅は。」
ふいに、光清が尋ねてきた。
「まあまあだったよ。」
ポケットには、携帯も入っているし。
一件落着だよ。
するとほっとしたせいか、私は急に眠くなり始めた。
「ふぁ~あ。」
大きな生欠伸をして、目も開いていられない。
「眠そうだな、クレハ。」
「う……ん……」
頭を叩いて、眠気を覚ます。
「無理をする事はない。昨日の夜から、ろくに寝ていないのであろう?」
ジャラールさんは、私の背中をそっと、撫でてくれた。
「でも!」
「でも?」
眠ってしまったら、元の世界に戻ってしまう。
光清とときわが言ってた。
もうこの世界には、来ない方がいいって。
元の世界に戻ったら、二度とこの世界に、来れないかもしれない。
そう思ったら、泣きそうになった。
ダメダメ。
泣いたら余計疲れて、眠ってしまう。
「クレハ。とにかく、部屋に戻ろう。」
頭がボーッとするせいか、ジャラールさんに言われるまま、連れて行かれる。
廊下を歩く時も、こっちにふらふら、あっちにふらふら。
「おい、クレハ。大丈夫か?」
ハーキムさんも心配して、私の腕を掴む。
「だいひょうふ、だいひょうふ……」
半分寝ぼけている私を見て、ハーキムさんが、首を横に振る。
「よし。クレハ、俺が肩に抱えてやる。」
ハーキムさんが、中腰になった。
「いい、いい。」
「遠慮するな。」
手招きしているハーキムさんを見ていると、私を荷物と間違ってるんじゃないかと思う。
「ははは。ハーキム。それじゃあ、クレハだっておいそれと、行けないだろう。」
そう言ったジャラールさんは、私の横に立つと、軽く私を抱き抱えた。
こ、これは!
いつぞややってもらった、お姫様抱っこ!!
「ハーキム。女性は、こうして運ぶものだ。」
「はあ。」
頭をポリポリ掻いているハーキムさんを他所に、ジャラールさんは、廊下を進む。
ああ。
胸がドキドキして、急に眠気が覚めた。
「ジャラールさん。もう一人で歩けます。」
「いいから、もう少しこのまま、じっとしていろ。」
王子様なんだから、当たり前なんだろうけど、今さらながら、ジャラールさんの命令口調に、胸が高鳴る。
うるさくないのかな。
私の心臓の音。
「ほら、到着だ。」
そこは、昨日の夜泊まりかけた、ジャラールさんの部屋だった。
「ありがとうございます。」
もう降ろしてもらおうと、足に力を入れた。
「まだ、ここでは降ろさぬぞ。」
ジャラールさんに、また足を抱え込まれた。
「ジャラールさん?」
何を考えているのか、ジャラールさんは寝室の扉を開けた。
「えっ?えっ?」
驚いて後ろを見たけれど、付いて来ているはずのハーキムさんがいない。
なんで?
肝心な時にいないんだ、あの人は!!
「さて。お姫様、ここへどうぞ。」
ジャラールさんにそっと降ろされたのは、ふかふかのベッドの上。
「あ、あの……」
「クレハ。少し、休むんだ。」
そして、布団を足元まで掛けてくれた。
「ジャラールさん!私……」
「おやすみ、クレハ。」
するとジャラールさんは、私のおでこに、キスをした。
これで最後。
もう二度と、ジャラールさんに会えない。
「いや!」
私は頭を激しく、左右に振った。
「クレハ……」
「いや!ジャラールさんに会えなくなるなんて、そんなのいや!」
ジャラールさんは、私の顔を覗く。
「落ち着け、クレハ。これが最後じゃない。」
「ううん。分かってない!もう、この世界には来れない!!」
私がそう叫んだ瞬間、ジャラールさんは私を、強く抱き締めてくれた。
「そんな事はない!必ず会える!!」
耳元に伝わる、熱い吐息。
背中に伝わる、強い力。
でも心臓だけが、速い鼓動を知らせていた。
「ジャラールさん……」
「待っている。何年経っても待っている。この場所で、クレハをずっと、待ち続ける。」
嬉しくて、涙が後から後から溢れてくるのに、どうしてか、可笑しくて仕方がなかった。
「いつまでもって……ジャラールさん。隣の国へ行くんでしょう?」
「……そう、だったかな。」
「それに、私をずっと待ってるなんて。ネシャートさんがいるのに、そんな事できないじゃん。」
するとジャラールさんは、息もできない程に、ぎゅっと抱き締めてくれた。
「ジャラールさん。」
「あっ、すまん。苦しかったか。」
離れようとするジャラールさんを、追いかけるように、今度は私から、ジャラールさんを抱き締めた。
「ううん。もう少し、このまま……」
ジャラールさんの両腕が、私を包んだ。
そっとジャラールさんの肩に、もたれ掛かると、知らない世界へ行った気分になった。
幸せ。
私の頭の中に、そんな言葉が浮かんでくる。
「ジャラールさん。」
「ん?」
「私、砂漠で死にかけた時、助けてくれたのが、ジャラールさんでよかった。」
「私もだ。あの砂漠で、倒れ掛けている君を見て、迷わずに助けに走ってよかった。」
大変な夢の中に来てしまったと思った砂漠の中。
喉が乾いて、死ぬかと思った時、助けてくれたのが、ジャラールさんだった。
遠い日のように思えるあの時を思い出そうとすると、目がトロンとしてきた。
「ジャラールさん、私、もうダメみたい。」
「大丈夫だ。クレハはただここで、眠り続けるだけだ。」
「ここで?」
「ああ、そうだ。クレハは、私の部屋で静かに眠り続けるんだ。」
そう考えると、またジャラールさんに、会えそうな気がするよ。
「そうだ、ハーキムさんの顔も、見ておけばよかったな……」
「あいつの事は、今はいい。」
ジャラールさんの、少し妬いた言い方が可笑しかった。
すーっと、ジャラールさんの腕の中で、眠りにつく。
よかったね、ジャラールさん。
ネシャートさんと、結ばれて。
最後に言えなかったけれど、
ジャラールさん、
「ずっと好きだよ。」
ゆっくり目を開けると、そこは修学旅行で泊まっていた旅館だった。
「紅葉?」
ときわが私の顔を、覗きこむ。
「と、き……わ?」
「紅葉~!!」
寝ている私に、ときわが抱きついた。
「おかえり。」
その隣には、光清が座っていた。
「二人供、ずっと側にいてくれたの?」
「当たり前だろ。」
二人はそう言ってくれたけど、結構長い時間かかったと思うよ。
私は時間を見る為に、ちらっと時計を見た。
もう、朝だ。
「一晩……」
「えっ?なに?紅葉?」
「一晩、だったんだね。あっちの世界に行ってた時間。」
まるで、長い時を思い出すように、物思いに更ける私を見て、ときわと光清は顔を合わせた。
「あっちは、一晩じゃなかったの?」
ときわが、恐る恐る聞いてきた。
「二日ぐらいかな。」
「へ、へえ~……時間の流れは、一緒じゃないのね。」
ときわは、私と光清両方気を使っている。
「何はともあれ、無事に戻ってきたんだ。よかったじゃないか。」
光清が立ち上がる。
「もう出発の時間だよ。二人供、準備して。」
「あいよ。」
ときわが返事した後、光清は部屋を出て行った。
「そっか……出発の時間に間に合ったんだ。」
私がほっとしていると、ときわが私の背中を叩いた。
「痛いっ!」
「紅葉。後で光清にお礼言うんだよ。」
「なに、急に。」
「光清。紅葉がいつ起きてもいいように、一晩中起きててくれたんだよ。」
叩かれた背中に手を伸ばそうとして、途中で止めた。
「光清が?」
「そう。もし紅葉が、普通の状態で帰って来なくても、その時は俺がずっと、紅葉の面倒見るって。」
光清。
胸が苦しい。
ジャラールさんに感じた、胸の痛みとは違う。
そして一方、ときわの目はキラキラ輝いている。
「何考えてんの?ときわ。」
「別に~。さあ、私達も支度して行こう。」
ときわの思惑が何なのか分からないうちに、私達は支度をして、外に出た。
もう既にバスが来ていて、みんな乗り始めている。
「急ごう、紅葉。」
「うん。」
ときわと一緒に乗ると、彼女の取り巻き、いや、クラスの男の達の一部は、席を用意してくれていた。
「ラッキー!有り難う。」
ときわと一緒に座ろうとすると、席が空いていない。
さすがに、私の分はないって事か。
「紅葉。こっちこっち。」
後ろの方から光清の声がした。
隣を指差す光清に、近づいて行く。
途中、クラスの女の子に、じろっと睨まれた気がするけれど、今は気にしない。
だって光清の隣しか、席は空いていないんだから。
「Thank You、光清。」
「いや。」
ご丁寧に、窓際の席を用意してくれていた。
「そうだ、光清。」
「なに?」
「私がいつ起きてもいいように、一晩中起きててくれたんだって?」
すると光清は、反対の通路側を見て、ため息をついた。
「ときわだな。教えたの。」
「まあ、そうだけど。有り難う。」
「あ、ああ……」
光清のこの様子を見ると、本当は知られたくなかったんじゃないの?
私は席の隙間から、ときわを見た。
見えないけれど、ときわの頭がこっちを向いているような気がする。
案の定、光清がときわと目を合わせて、じーっと睨みをきかせていた。
そこへ担任の神崎先生が、バスに乗り込んだ。
「皆さん、揃ってますか?」
は~いと言う返事と供に、バスガイドさんが朝の挨拶をする。
ゆっくりとバスが動き、修学旅行は最終日を迎えた。
「これからバスは、東寺に向かって参ります。」
ああ、そうか。
もう一ヶ所、巡るんだ。
なんだか、もう終わった感じがするんだけどな。
「どうだった?砂漠の旅は。」
ふいに、光清が尋ねてきた。
「まあまあだったよ。」
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