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黒幕の黒幕
②
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「なんだ?侵入者か?」
ドアの近くにいた護衛の人達が、窓へと移動していく。
その隙に、廊下を走って角を曲がる。
あのたくさんのお姉さん達が、ジャラールさんを待っていた場所だ。
「と言う事は、ラナーの部屋はこっちだよ。」
元来た道をそのまま戻る。
私ってもしかしたら、天才?
そんな事を思いながら、廊下を進むとラナーの姿を発見。
「あっ、ラナー!……」
手を振ろうとしたら、ラナーは走ってどこかへ行ってしまった。
「うそっ!」
せっかくここまで来たのに。
案の定、ラナーの部屋には鍵が掛かっている。
勝手に制服を取る事もできない。
「仕方ないな~」
追いかけてラナーに、鍵を開けてもらうしかない。
私はラナーの後を追った。
「いた。」
やっと見つけたラナーは、また素早く廊下の角を曲がる。
「早いよ。」
私は小走りでラナーが曲がった場所へ行く。
そして気づく。
ラナーの動きがおかしい事に。
まるで誰かに知られたくないように、急に姿を消す。
「ラナー?」
姿を消した場所を探して、ラナーを見つけては、また走って追いかける。
最終的にラナーが辿り着いたのは、キッチンだった。
「なんでこんな面倒な事すんの?」
キッチンがある場所は、中央の階段を降りた場所にあった。
ラナーの部屋からは、階段を降りてすぐ側だ。
なのにわざわざ、建物の一番奥まで来て、階段を降りたら、また違う場所の階段を使って降りる。
まるでジグザグ。
わざとそうしているみたいに。
「で?ここで何をするの?」
キッチンを覗くと、ミルクを鍋で温めている。
「なんだ。温かい牛乳飲みたかっただけ?」
ガックリきて、さっさと部屋の鍵を貸して貰おうとした時だ。
ラナーが粉上のモノを、鍋の中に入れていた。
胸騒ぎがする。
ねえ、ラナー。
それは誰が飲むの?
しばらくしてラナーは、その牛乳の入ったカップを、誰にも見られないようにトレーに乗せる。
そしてまたキョロキョロ。
キッチンのドアを開けても、キョロキョロ。
怪しい。
素人の私から見ても、かなり怪しい。
そう思った私は、キッチンから姿を消したラナーの後をついて行く。
見失わないように、と思ったら今度はゆっくりと廊下を歩いて行く。
さっきの、そそくさと逃げるような動きとは、全く違った。
ラナーの向かった先は、ジャラールさんと同じくらい、いやもっと大きな扉の前だった。
護衛はラナーの顔を見ただけで、扉を開けた。
「どこなんだろう……」
ただラナーの部屋の鍵を貸してほしいだけで、こんなところへ来てしまって。
仕方がない。
今日は諦めるかと、後ろを振り向いた瞬間。
「………っ!!」
長い指で口を覆われ、カーテンの後ろへ、連れて行かれる。
「静かに。」
聞いた事のある声に、少しだけ振り向く。
「ジャラ……」
名前を呼ぼうとして、また口を塞がれた。
「どうして……寝てたはずじゃ……」
「クレハ。それ以上言うと、今度は唇でその口を塞ぐぞ。」
ジャラールさんにキスされたんじゃ、敵わない。
大人しく黙っている事にした。
扉の前にいるラナーは、護衛の人にあっさり通され、あの大きな扉へ入って行く。
「クレハはここで待っていろ。」
「あっ、ジャラールさん!!」
振り向いたその姿は、マンガに出てきそうな程のカッコよさ。
思わずよろめく。
「クレハ?」
「あっ、いやいや。私も一緒に行っていい?」
「ダメだ。」
ジャラールさんは、即答すると背中を向けた。
「おっと!」
必死にジャラールさんの腕を掴む。
「私、ラナーに部屋の鍵借りに来たんだよね。」
へへへと笑って見せたけど、ジャラールさんの表情は変わらない。
「……なぜ鍵を借りる必要があるのだ。」
「これ、ラナーに借りた服なんだよね。自分の服はラなが持っているから……」
「だとしたら、しばらくその服でいろ。」
そう言ってジャラールさんは、扉へ行こうとした。
「おっと!」
「今度はなんだ!」
「欲しいのは服じゃなくて、携帯なの!」
「携帯?」
「携帯電話。それが必要なの!」
この国にはまだ携帯がないのか、ジャラールさんは"なんだ、それは?"と言う顔。
まずい。
通話やメールは出来ないって諦めてたけど、もしかしたらゲームもできなかったりして。
「分かった。中に連れて行ってやる。」
「やった!」
「その代わり……」
「はい?」
ジャラールさんは、どこか一点を見つめながら、考えている。
「いや、いい。その時はその時だ。」
今度は私が頭の上にクエスチョンマーク。
「来い。」
ジャラールさんはそう言うと、私を連れて、大きな扉の前に立った。
「ジャラール王子。」
護衛の人達が、直立不動になる。
「扉を開けてくれ。」
「はい。」
扉を開けると、護衛の人達は私に気づく。
まずいよ。
「ジャラール王子。そちらの方は?」
「この者は、私の付き人だ。」
「失礼しました。」
初めて会った人達が、私に頭を下げる。
不思議な感じ。
大きな扉を開けると、贅沢を施した装飾品満載の廊下が現れた。
「キレイ……」
一歩ずつ歩く度に、見たこともないような、美しいモノに目を奪われた。
「すごいだろう。」
「うん……」
「広さも俺の部屋の倍はある。」
「ええっ!?倍?」
ジャラールさんの部屋だって、相当な広さだよ?
「次の国王になられる方だ。格が違う。」
「次の国王……」
思わず息を飲む。
背筋が真っ直ぐになる。
もしかしたら、私。
とんでもないところへ来ているんじゃないか……
そして長い廊下の真ん中辺りに来た時だ。
「ここからは声を出さないように。」
私は大きく頷いた。
目の前の扉を、音を立てないように開け、更に奥の部屋へ向かう。
そしてジャラールさんは、奥の部屋の扉を、少しだけ開けた。
そこから漏れた光に、ジャラールさんの顔が照らされる。
その表情は、見たこともない程に厳しい。
こんな顔見せられたら、"声を出すな"って言われなくても、出せないでしょう
しかしなんで、そんな難しい顔してるかな。
滅多にお目にかかれない王子様の真剣顔に、ラッキーと思いながら見惚れていた。
う~ん。
やっぱりカッコいい。
すると急に扉を開けて、ジャラールさんはスッと入って行ってしまった。
「ジャ……」
あっ!と思って、口を押さえる。
声を出すなって言われてたんだっけ。
「そこまでだ。」
中からジャラールさんの声が聞こえた。
そっと覗きこむと、ジャラールさんが誰かの腕を掴んでいる。
誰?
私はもう少しだけ、扉を開けた。
「ジャラール王子……」
見えたのは、ラナーだった。
「君だったのか。通りでなかなか原因が分からないわけだ。」
えっ?
私は扉を開けた。
ラナーがハッとして、こっちを見た。
「クレハ様……どうしてここに……」
「あ、あの……私、ラナーの部屋の鍵を、貸して貰いたくて……」
「鍵?」
うわっ。
なんかそんな空気じゃない。
どうしよう。
「ラナー。すまぬが、クレハに鍵を貸してやってくれないか。」
ジャラールさんに言われ、ラナーはポケットから、部屋の鍵を取り出した。
それをジャラールさんが、受けとる。
「そして君にはこのまま、地下牢に行ってもらう。」
えっ!?
ど、どう言う事?
「ジャラールさん!?ラナーが何かしたんですか?」
するとジャラールさんは、ラナーの腕を掴みながら、こう言った。
「……ネシャートの容態は、夜中が一番酷かった。就寝前は、ネシャートの側近しか近づけないはず。護衛は必死に怪しい者が部屋に入らないか、厳重に警備したが見つからなかった。」
ジャラールさんは、ラナーの腕を掴んだまま、持っていたカップを奪い、近くにあった魚の水槽に入れた。
魚は変わらずに泳いでいたが、しばらくして小指の半分程の小さな魚は、水面に横たわりながら浮いてきた。
「これって……」
「死んでいるんだ。小魚が死ぬくらいの毒が、飲み物の中に入っている。これを飲んだら、毒に慣れている王族とて、体を病むだろう。」
私は目の前が、クルクル回りだした。
「ラナー、もしかして……あの時……」
「見ていたのですね。」
ラナーは落ち着いている。
反って私の方が、立っていられずに、そのまま座り込んでしまった。
「誰か!!」
ジャラールさんが叫ぶと、護衛の人達が中に入って来た。
「どうされました?」
「この者を地下牢に連れて行け!!」
「……ネシャート王女の侍女をですか?」
護衛達は、後ずさりをする。
「ネシャート王女への反逆だ。私が責任を持つ。連れて行け!」
「はい。」
ようやくラナーを捕まえた時も、護衛達は手が震えていた。
「……ラナーは、そんなに偉い人なの?」
「ああ。俺の次に偉いんじゃないか?何せ次期国王の侍女だからな。」
「そ、そんな人が……ネシャートさんを?どうして……」
「知らぬ。後で本人に聞くしかないだろう。とは言っても、答えぬとは思うがな。」
どうして、あのラナーが?
自分の主人を?
例えるなら、ハーキムさんがジャラールさんに毒をもるのと一緒じゃない。
そんな事!!
「どうしたのです?」
奥の部屋から澄んだ声が聞こえた。
「ネシャート。」
「ジャラール。なぜここに?」
お互い近づくと、体を寄せ合う二人。
手を触れるわけでもなく、抱き締め合うわけでもないのに、二人の仲睦まじさは分かる距離。
あっ、もしかしたら……
この人が……
見とれている私に気づいたジャラールさんは、私にこう告げた。
「クレハ。この方が未来の国王、ネシャート王女だ。」
ドアの近くにいた護衛の人達が、窓へと移動していく。
その隙に、廊下を走って角を曲がる。
あのたくさんのお姉さん達が、ジャラールさんを待っていた場所だ。
「と言う事は、ラナーの部屋はこっちだよ。」
元来た道をそのまま戻る。
私ってもしかしたら、天才?
そんな事を思いながら、廊下を進むとラナーの姿を発見。
「あっ、ラナー!……」
手を振ろうとしたら、ラナーは走ってどこかへ行ってしまった。
「うそっ!」
せっかくここまで来たのに。
案の定、ラナーの部屋には鍵が掛かっている。
勝手に制服を取る事もできない。
「仕方ないな~」
追いかけてラナーに、鍵を開けてもらうしかない。
私はラナーの後を追った。
「いた。」
やっと見つけたラナーは、また素早く廊下の角を曲がる。
「早いよ。」
私は小走りでラナーが曲がった場所へ行く。
そして気づく。
ラナーの動きがおかしい事に。
まるで誰かに知られたくないように、急に姿を消す。
「ラナー?」
姿を消した場所を探して、ラナーを見つけては、また走って追いかける。
最終的にラナーが辿り着いたのは、キッチンだった。
「なんでこんな面倒な事すんの?」
キッチンがある場所は、中央の階段を降りた場所にあった。
ラナーの部屋からは、階段を降りてすぐ側だ。
なのにわざわざ、建物の一番奥まで来て、階段を降りたら、また違う場所の階段を使って降りる。
まるでジグザグ。
わざとそうしているみたいに。
「で?ここで何をするの?」
キッチンを覗くと、ミルクを鍋で温めている。
「なんだ。温かい牛乳飲みたかっただけ?」
ガックリきて、さっさと部屋の鍵を貸して貰おうとした時だ。
ラナーが粉上のモノを、鍋の中に入れていた。
胸騒ぎがする。
ねえ、ラナー。
それは誰が飲むの?
しばらくしてラナーは、その牛乳の入ったカップを、誰にも見られないようにトレーに乗せる。
そしてまたキョロキョロ。
キッチンのドアを開けても、キョロキョロ。
怪しい。
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そう思った私は、キッチンから姿を消したラナーの後をついて行く。
見失わないように、と思ったら今度はゆっくりと廊下を歩いて行く。
さっきの、そそくさと逃げるような動きとは、全く違った。
ラナーの向かった先は、ジャラールさんと同じくらい、いやもっと大きな扉の前だった。
護衛はラナーの顔を見ただけで、扉を開けた。
「どこなんだろう……」
ただラナーの部屋の鍵を貸してほしいだけで、こんなところへ来てしまって。
仕方がない。
今日は諦めるかと、後ろを振り向いた瞬間。
「………っ!!」
長い指で口を覆われ、カーテンの後ろへ、連れて行かれる。
「静かに。」
聞いた事のある声に、少しだけ振り向く。
「ジャラ……」
名前を呼ぼうとして、また口を塞がれた。
「どうして……寝てたはずじゃ……」
「クレハ。それ以上言うと、今度は唇でその口を塞ぐぞ。」
ジャラールさんにキスされたんじゃ、敵わない。
大人しく黙っている事にした。
扉の前にいるラナーは、護衛の人にあっさり通され、あの大きな扉へ入って行く。
「クレハはここで待っていろ。」
「あっ、ジャラールさん!!」
振り向いたその姿は、マンガに出てきそうな程のカッコよさ。
思わずよろめく。
「クレハ?」
「あっ、いやいや。私も一緒に行っていい?」
「ダメだ。」
ジャラールさんは、即答すると背中を向けた。
「おっと!」
必死にジャラールさんの腕を掴む。
「私、ラナーに部屋の鍵借りに来たんだよね。」
へへへと笑って見せたけど、ジャラールさんの表情は変わらない。
「……なぜ鍵を借りる必要があるのだ。」
「これ、ラナーに借りた服なんだよね。自分の服はラなが持っているから……」
「だとしたら、しばらくその服でいろ。」
そう言ってジャラールさんは、扉へ行こうとした。
「おっと!」
「今度はなんだ!」
「欲しいのは服じゃなくて、携帯なの!」
「携帯?」
「携帯電話。それが必要なの!」
この国にはまだ携帯がないのか、ジャラールさんは"なんだ、それは?"と言う顔。
まずい。
通話やメールは出来ないって諦めてたけど、もしかしたらゲームもできなかったりして。
「分かった。中に連れて行ってやる。」
「やった!」
「その代わり……」
「はい?」
ジャラールさんは、どこか一点を見つめながら、考えている。
「いや、いい。その時はその時だ。」
今度は私が頭の上にクエスチョンマーク。
「来い。」
ジャラールさんはそう言うと、私を連れて、大きな扉の前に立った。
「ジャラール王子。」
護衛の人達が、直立不動になる。
「扉を開けてくれ。」
「はい。」
扉を開けると、護衛の人達は私に気づく。
まずいよ。
「ジャラール王子。そちらの方は?」
「この者は、私の付き人だ。」
「失礼しました。」
初めて会った人達が、私に頭を下げる。
不思議な感じ。
大きな扉を開けると、贅沢を施した装飾品満載の廊下が現れた。
「キレイ……」
一歩ずつ歩く度に、見たこともないような、美しいモノに目を奪われた。
「すごいだろう。」
「うん……」
「広さも俺の部屋の倍はある。」
「ええっ!?倍?」
ジャラールさんの部屋だって、相当な広さだよ?
「次の国王になられる方だ。格が違う。」
「次の国王……」
思わず息を飲む。
背筋が真っ直ぐになる。
もしかしたら、私。
とんでもないところへ来ているんじゃないか……
そして長い廊下の真ん中辺りに来た時だ。
「ここからは声を出さないように。」
私は大きく頷いた。
目の前の扉を、音を立てないように開け、更に奥の部屋へ向かう。
そしてジャラールさんは、奥の部屋の扉を、少しだけ開けた。
そこから漏れた光に、ジャラールさんの顔が照らされる。
その表情は、見たこともない程に厳しい。
こんな顔見せられたら、"声を出すな"って言われなくても、出せないでしょう
しかしなんで、そんな難しい顔してるかな。
滅多にお目にかかれない王子様の真剣顔に、ラッキーと思いながら見惚れていた。
う~ん。
やっぱりカッコいい。
すると急に扉を開けて、ジャラールさんはスッと入って行ってしまった。
「ジャ……」
あっ!と思って、口を押さえる。
声を出すなって言われてたんだっけ。
「そこまでだ。」
中からジャラールさんの声が聞こえた。
そっと覗きこむと、ジャラールさんが誰かの腕を掴んでいる。
誰?
私はもう少しだけ、扉を開けた。
「ジャラール王子……」
見えたのは、ラナーだった。
「君だったのか。通りでなかなか原因が分からないわけだ。」
えっ?
私は扉を開けた。
ラナーがハッとして、こっちを見た。
「クレハ様……どうしてここに……」
「あ、あの……私、ラナーの部屋の鍵を、貸して貰いたくて……」
「鍵?」
うわっ。
なんかそんな空気じゃない。
どうしよう。
「ラナー。すまぬが、クレハに鍵を貸してやってくれないか。」
ジャラールさんに言われ、ラナーはポケットから、部屋の鍵を取り出した。
それをジャラールさんが、受けとる。
「そして君にはこのまま、地下牢に行ってもらう。」
えっ!?
ど、どう言う事?
「ジャラールさん!?ラナーが何かしたんですか?」
するとジャラールさんは、ラナーの腕を掴みながら、こう言った。
「……ネシャートの容態は、夜中が一番酷かった。就寝前は、ネシャートの側近しか近づけないはず。護衛は必死に怪しい者が部屋に入らないか、厳重に警備したが見つからなかった。」
ジャラールさんは、ラナーの腕を掴んだまま、持っていたカップを奪い、近くにあった魚の水槽に入れた。
魚は変わらずに泳いでいたが、しばらくして小指の半分程の小さな魚は、水面に横たわりながら浮いてきた。
「これって……」
「死んでいるんだ。小魚が死ぬくらいの毒が、飲み物の中に入っている。これを飲んだら、毒に慣れている王族とて、体を病むだろう。」
私は目の前が、クルクル回りだした。
「ラナー、もしかして……あの時……」
「見ていたのですね。」
ラナーは落ち着いている。
反って私の方が、立っていられずに、そのまま座り込んでしまった。
「誰か!!」
ジャラールさんが叫ぶと、護衛の人達が中に入って来た。
「どうされました?」
「この者を地下牢に連れて行け!!」
「……ネシャート王女の侍女をですか?」
護衛達は、後ずさりをする。
「ネシャート王女への反逆だ。私が責任を持つ。連れて行け!」
「はい。」
ようやくラナーを捕まえた時も、護衛達は手が震えていた。
「……ラナーは、そんなに偉い人なの?」
「ああ。俺の次に偉いんじゃないか?何せ次期国王の侍女だからな。」
「そ、そんな人が……ネシャートさんを?どうして……」
「知らぬ。後で本人に聞くしかないだろう。とは言っても、答えぬとは思うがな。」
どうして、あのラナーが?
自分の主人を?
例えるなら、ハーキムさんがジャラールさんに毒をもるのと一緒じゃない。
そんな事!!
「どうしたのです?」
奥の部屋から澄んだ声が聞こえた。
「ネシャート。」
「ジャラール。なぜここに?」
お互い近づくと、体を寄せ合う二人。
手を触れるわけでもなく、抱き締め合うわけでもないのに、二人の仲睦まじさは分かる距離。
あっ、もしかしたら……
この人が……
見とれている私に気づいたジャラールさんは、私にこう告げた。
「クレハ。この方が未来の国王、ネシャート王女だ。」
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