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きらびやかな宮殿
③
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このきらびやかな宮殿に相応しい程に、厳かで強くて、何よりも美しい。
ラナーが言っていた。
この人に愛されたくて、多くの女性が集まるのだと。
その気持ちが、痛い程に分かる。
だってほら、ジャラールさんが通りすぎた女性達は、自分は選ばれなかったと言うのに、その場を立ち去れず、まだジャラールさんに見とれているんだもの。
それにしてもジャラールさん、並んでいるお姉さん達を全く見ていないけれど、本当に連れて行くのかな。
そんな事を考えていると、ジャラールさんは私の目の前を通り過ぎる。
えっ?
ジャラールさん?
私に気付いてないの!?
どうしよう!
行ってしまう‼
「ジャラールさん!!」
名前を呼んで、ハッとした。
ヤバイ……
王子様をさん付けで呼んでしまった……
口を両手で覆っても、遅かった。
お姉さん達の刺すような視線。
光清といい、ジャラールさんといい、何でこんな怖い人達が、周りに集まるかな。
だけど収穫はあった。
ジャラールさんの口許が、"クレハ"と動いた。
やった!
気付いてくれた!
けれど喜びもつかの間。
私の前には、刀を持った人達が。
「何者だ‼王子を名前で呼ぶとは無礼だろう‼」
「す、す、すみません‼どうしてもジャラールさんに会いたくて‼……あっ!」
また慌てて口を塞ぐ。
私、また名前で呼んじゃったよ。
しかもジャラールさん、一番後ろで笑ってるし‼
「貴様……」
スーッと刀が抜かれる。
ひぃぃぃ!
ジャラールさん、笑ってないで助けて‼
「もうよい。」
刀は私の頭の上で止まっている。
「気に入った。今宵はこの者を連れて行く。」
「お、王子?」
刀は下げられ、私の前にジャラールさんが現れた。
そしてスーッと右手を差し出される。
「どうした?娘よ。私にどうしても会いたかったのだろう?」
私は返事も出来ずに、その手を取った。
久しぶりに見た、ジャラールさんの瞳。
宝石みたいで、吸い込まれそう。
ああ、そうだ。
初めてジャラールさんにドキドキしたのも、その瞳を見た時だっけ。
「行こうか。」
ジャラールさんの腕が、私の腰に回される。
「ジャラール……さん?」
するとジャラールさんは、私の唇に指を当てた。
さっきよりも胸がバクバク言いながら、ジャラールさんの隣を歩く。
後ろからはあのお姉さん達が、まだギャーギャー叫んでいる。
「おや、珍しい事があるものですな。」
声のする方へ向くと、そこにはハーキムさんと同じような黒い衣装を着た年配の人が。
「ザーヒル。」
心なしかジャラールさんの声が低くなった気がした。
「国務の事ばかりで、女には興味がないのかと思っておりました。」
「ハハハ。偶然面白い女を見つけたのだ。」
なんだかチラッと見られた気がして、ジャラールさんの後ろへ隠れた。
「面白い女ですか。覚えておきましょう。」
するとザーヒルと言う人は、一礼してどこかへ行ってしまった。
「あの人は?」
「父……現王の側近だ。」
なんだかザーヒルって名前、どこかで聞いた事あるような気がするんだけどな。
「クレハ、覚えているか?砂漠で敵に襲われた事を。」
「うん。」
「あれが黒幕だ。」
「えっ‼」
私はジャラールさんの背中越しに、そのザーヒルという人を見た。
わ、分からない。
全く悪人に見えない。
「あっ、でもあの人達、ザーヒルさんは関係ないって言ってなかったっけ?」
「関係ないわけないだろう。ザーヒルの指示がなければ、歩く事も許されない者達だぞ。」
「ええっ‼」
ああ、なんかここに来てから、驚く事ばっか。
って言うか、人間不信になりそう。
「ところでクレハ。私の部屋はあそこだ。」
ジャラールさんが指差したのは、一際大きな扉だった。
「さあ。」
カチャッと大きい割には、静かに開いた扉。
「わあ……」
高い天井。
大きなソファー。
広いテーブル。
豪華な絨毯とシャンデリア。
見るモノ全てに圧倒される。
「クレハは、そこに座るといい。」
ジャラールさんに言われた通り、大きなソファーに座る。
フカフカしていて、体が沈む。
「何か飲むか?」
するとジャラールさんは、グラスを2つ持ってきた。
「じゃあ、ジュースが飲みたいです。」
「……ジュース?」
「オレンジとかアップルとか。」
しばらく見つめ合う、私とジャラールさん。
「クレハは、お酒が飲めないのか?」
「お酒!?」
私は大袈裟に、両腕を横に振った。
「私、未成年です!」
「未成年?まだ大人ではないという意味か?」
「はい。」
なんとか分かってくれたのか、急に手を叩いて、大きな音を出した。
「はい、王子。」
「すまんが、オレンジかアップルのジュースを、持ってきてくれ。」
「畏まりました。」
白い服を着た人が、扉の外に出ていった。
「すまないが、用意するまで少し時間がかかる。」
「あっ、いえ。気を使わないで下さい。」
大きなソファーに、ジャラールさんと二人きり。
周りを見ると、さっきまで数人いたお付きの人達は、いなくなっていた。
「お付きの人、いないんですね。」
こんな、豪華な部屋を見てしまったせいか、急に敬語。
「ああ、ここはプライベートな空間だからな。こちらから呼ばない限り、お付きの者は入って来ない。」
「へえ。誰も来ないんですか?」
「そうだ。誰も来ない。ああ、ハーキムはたまに来るか。」
嬉しそうに語っちゃって。
今ハーキムさんは、あの寒い牢屋にいると言うのに。
「クレハだけだ。この部屋に通したのは。」
前屈みになりながら、私を見つめてくれるジャラールさん。
「嘘です。だって、セクシーなお姉さんを連れて来てるって。」
「ハハハッ!あの廊下に並んでいた女性達か?クレハは面白い冗談を言う。」
「えっ……だって……」
「クレハは俺が、不特定多数の女性と、遊んでいると思っているのか?」
今まで私なんて気取った言い方だったのに、急に俺になるなんて、不意討ち過ぎだ~。
「いえ、思っていないです。」
「よかった。」
ジャラールさんはニコッと笑うと、スッと立ち上がった。
「ジュースを持ってくるのが遅いな。」
「は、はい。」
「ジュースの代わりに、果物でも食べよう。オレンジもある。ああ、そうだ。グレープフルーツもレモンもある。」
ジャラールさんは棚まで行くと、バスケットの中から、いろいろな果物を持ってきた。
「待っていろ、クレハ。」
そう言ったジャラールさんは、ナイフを取り出すと、オレンジを切り始めた。
「ジャラールさん、果物切れるんだ。」
するとジャラールさんは、危なく指を切りそうになる。
「クレハは、俺が不器用だと思っているのか?」
「ち、違います!日本では男の人って、あまり果物切らないから!」
「へえ~」
しかもジャラールさん。
私と話をしながら、次から次へと皮を剥いていく。
少なくても私より器用だよ。
「はい、クレハ。」
切ったオレンジを、ジャラールさんは私にくれた。
「有難うございます。」
手に取ろうとしたら、ジャラールさんが手を引っ込める。
何のイジワル?
そう思ったら、ジャラールさんに"口、あ~んして"と言われた。
「えっ?ちょっと?」
「ほら、早く。」
恥ずかしさをこらえて、口を開けると、ジャラールさんがオレンジを食べさせてくれた。
「うっ、甘い‼」
こんな瑞々しくて、甘いオレンジ。
初めて食べた。
すると今度は、私にオレンジを食べさせてくれたその指を、ペロッとジャラールさんが舐める。
「本当だ。美味しい。」
あまりにも慣れた手つきでそんな事されるから、もう付いていけない。
「ぜぜ絶対ジャラールさん、女の人に慣れてる!」
「なんだ、バレたか。」
「バレたって、じゃあ、この部屋に女の子入れたのも、初めてって嘘なんだ~~!」
「それは本当だ。大抵女性は、直で寝室へ連れて行く。」
「はあああ~~?」
もう、いろんな事想像しちゃって、顔どころか頭まで茹でタコになりそう。
「ムクククッ!」
肝心のジャラールさんは、また笑っているし。
私が子供だと思って、面白がってるんだ!
「今から行ってみようか?」
「えっ!?」
「嘘だ。クレハを、無理矢理寝室に、連れ込むような事はしない。」
そしてまた、無邪気に笑ってるし。
もう!さっきから、ジャラールさんのペースに、はまりまくり。
「そんなに笑わなくてもいいでしょう?」
私は頬を膨らませて、反対を向いた。
すると後ろからジャラールさんに、そっと抱き締められた。
「ジャラールさん?」
なぜか寂しそうな表情を浮かべて、今度はギュウッと私を抱き締めてくれる。
「クレハ……」
ジャラールさんの切ない声。
体中が心臓になったみたいに、全身ドクンドクン言っている。
「クレハ。俺が好きか?」
「えっ?」
心臓がうるさくて、よく聞こえない。
「クレハがよければ、このままずっと、俺の側にいてくれないか?」
最後に大きくドキンと鳴って、今度は胸がキューッと締め付けられる。
何?
私の体、どうにかなっちゃったの?
その時、外から扉を叩く音がした。
するとジャラールさんの腕がスルッと外れた。
まるで何事もなかったように、扉に向かったジャラールさん。
向こう側で付き人の"ジュースをお持ちしました"と言う言葉が聞こえる。
一方の私は、あまりにも衝撃的な言葉を聞いて、その意味を理解するのに苦しんでいた。
ジャラールさんの事は好き。
でもジャラールさんの心の中には、ネシャートさんがいる。
それを知りながら、私に側にいろって言うの?
ラナーが言っていた。
この人に愛されたくて、多くの女性が集まるのだと。
その気持ちが、痛い程に分かる。
だってほら、ジャラールさんが通りすぎた女性達は、自分は選ばれなかったと言うのに、その場を立ち去れず、まだジャラールさんに見とれているんだもの。
それにしてもジャラールさん、並んでいるお姉さん達を全く見ていないけれど、本当に連れて行くのかな。
そんな事を考えていると、ジャラールさんは私の目の前を通り過ぎる。
えっ?
ジャラールさん?
私に気付いてないの!?
どうしよう!
行ってしまう‼
「ジャラールさん!!」
名前を呼んで、ハッとした。
ヤバイ……
王子様をさん付けで呼んでしまった……
口を両手で覆っても、遅かった。
お姉さん達の刺すような視線。
光清といい、ジャラールさんといい、何でこんな怖い人達が、周りに集まるかな。
だけど収穫はあった。
ジャラールさんの口許が、"クレハ"と動いた。
やった!
気付いてくれた!
けれど喜びもつかの間。
私の前には、刀を持った人達が。
「何者だ‼王子を名前で呼ぶとは無礼だろう‼」
「す、す、すみません‼どうしてもジャラールさんに会いたくて‼……あっ!」
また慌てて口を塞ぐ。
私、また名前で呼んじゃったよ。
しかもジャラールさん、一番後ろで笑ってるし‼
「貴様……」
スーッと刀が抜かれる。
ひぃぃぃ!
ジャラールさん、笑ってないで助けて‼
「もうよい。」
刀は私の頭の上で止まっている。
「気に入った。今宵はこの者を連れて行く。」
「お、王子?」
刀は下げられ、私の前にジャラールさんが現れた。
そしてスーッと右手を差し出される。
「どうした?娘よ。私にどうしても会いたかったのだろう?」
私は返事も出来ずに、その手を取った。
久しぶりに見た、ジャラールさんの瞳。
宝石みたいで、吸い込まれそう。
ああ、そうだ。
初めてジャラールさんにドキドキしたのも、その瞳を見た時だっけ。
「行こうか。」
ジャラールさんの腕が、私の腰に回される。
「ジャラール……さん?」
するとジャラールさんは、私の唇に指を当てた。
さっきよりも胸がバクバク言いながら、ジャラールさんの隣を歩く。
後ろからはあのお姉さん達が、まだギャーギャー叫んでいる。
「おや、珍しい事があるものですな。」
声のする方へ向くと、そこにはハーキムさんと同じような黒い衣装を着た年配の人が。
「ザーヒル。」
心なしかジャラールさんの声が低くなった気がした。
「国務の事ばかりで、女には興味がないのかと思っておりました。」
「ハハハ。偶然面白い女を見つけたのだ。」
なんだかチラッと見られた気がして、ジャラールさんの後ろへ隠れた。
「面白い女ですか。覚えておきましょう。」
するとザーヒルと言う人は、一礼してどこかへ行ってしまった。
「あの人は?」
「父……現王の側近だ。」
なんだかザーヒルって名前、どこかで聞いた事あるような気がするんだけどな。
「クレハ、覚えているか?砂漠で敵に襲われた事を。」
「うん。」
「あれが黒幕だ。」
「えっ‼」
私はジャラールさんの背中越しに、そのザーヒルという人を見た。
わ、分からない。
全く悪人に見えない。
「あっ、でもあの人達、ザーヒルさんは関係ないって言ってなかったっけ?」
「関係ないわけないだろう。ザーヒルの指示がなければ、歩く事も許されない者達だぞ。」
「ええっ‼」
ああ、なんかここに来てから、驚く事ばっか。
って言うか、人間不信になりそう。
「ところでクレハ。私の部屋はあそこだ。」
ジャラールさんが指差したのは、一際大きな扉だった。
「さあ。」
カチャッと大きい割には、静かに開いた扉。
「わあ……」
高い天井。
大きなソファー。
広いテーブル。
豪華な絨毯とシャンデリア。
見るモノ全てに圧倒される。
「クレハは、そこに座るといい。」
ジャラールさんに言われた通り、大きなソファーに座る。
フカフカしていて、体が沈む。
「何か飲むか?」
するとジャラールさんは、グラスを2つ持ってきた。
「じゃあ、ジュースが飲みたいです。」
「……ジュース?」
「オレンジとかアップルとか。」
しばらく見つめ合う、私とジャラールさん。
「クレハは、お酒が飲めないのか?」
「お酒!?」
私は大袈裟に、両腕を横に振った。
「私、未成年です!」
「未成年?まだ大人ではないという意味か?」
「はい。」
なんとか分かってくれたのか、急に手を叩いて、大きな音を出した。
「はい、王子。」
「すまんが、オレンジかアップルのジュースを、持ってきてくれ。」
「畏まりました。」
白い服を着た人が、扉の外に出ていった。
「すまないが、用意するまで少し時間がかかる。」
「あっ、いえ。気を使わないで下さい。」
大きなソファーに、ジャラールさんと二人きり。
周りを見ると、さっきまで数人いたお付きの人達は、いなくなっていた。
「お付きの人、いないんですね。」
こんな、豪華な部屋を見てしまったせいか、急に敬語。
「ああ、ここはプライベートな空間だからな。こちらから呼ばない限り、お付きの者は入って来ない。」
「へえ。誰も来ないんですか?」
「そうだ。誰も来ない。ああ、ハーキムはたまに来るか。」
嬉しそうに語っちゃって。
今ハーキムさんは、あの寒い牢屋にいると言うのに。
「クレハだけだ。この部屋に通したのは。」
前屈みになりながら、私を見つめてくれるジャラールさん。
「嘘です。だって、セクシーなお姉さんを連れて来てるって。」
「ハハハッ!あの廊下に並んでいた女性達か?クレハは面白い冗談を言う。」
「えっ……だって……」
「クレハは俺が、不特定多数の女性と、遊んでいると思っているのか?」
今まで私なんて気取った言い方だったのに、急に俺になるなんて、不意討ち過ぎだ~。
「いえ、思っていないです。」
「よかった。」
ジャラールさんはニコッと笑うと、スッと立ち上がった。
「ジュースを持ってくるのが遅いな。」
「は、はい。」
「ジュースの代わりに、果物でも食べよう。オレンジもある。ああ、そうだ。グレープフルーツもレモンもある。」
ジャラールさんは棚まで行くと、バスケットの中から、いろいろな果物を持ってきた。
「待っていろ、クレハ。」
そう言ったジャラールさんは、ナイフを取り出すと、オレンジを切り始めた。
「ジャラールさん、果物切れるんだ。」
するとジャラールさんは、危なく指を切りそうになる。
「クレハは、俺が不器用だと思っているのか?」
「ち、違います!日本では男の人って、あまり果物切らないから!」
「へえ~」
しかもジャラールさん。
私と話をしながら、次から次へと皮を剥いていく。
少なくても私より器用だよ。
「はい、クレハ。」
切ったオレンジを、ジャラールさんは私にくれた。
「有難うございます。」
手に取ろうとしたら、ジャラールさんが手を引っ込める。
何のイジワル?
そう思ったら、ジャラールさんに"口、あ~んして"と言われた。
「えっ?ちょっと?」
「ほら、早く。」
恥ずかしさをこらえて、口を開けると、ジャラールさんがオレンジを食べさせてくれた。
「うっ、甘い‼」
こんな瑞々しくて、甘いオレンジ。
初めて食べた。
すると今度は、私にオレンジを食べさせてくれたその指を、ペロッとジャラールさんが舐める。
「本当だ。美味しい。」
あまりにも慣れた手つきでそんな事されるから、もう付いていけない。
「ぜぜ絶対ジャラールさん、女の人に慣れてる!」
「なんだ、バレたか。」
「バレたって、じゃあ、この部屋に女の子入れたのも、初めてって嘘なんだ~~!」
「それは本当だ。大抵女性は、直で寝室へ連れて行く。」
「はあああ~~?」
もう、いろんな事想像しちゃって、顔どころか頭まで茹でタコになりそう。
「ムクククッ!」
肝心のジャラールさんは、また笑っているし。
私が子供だと思って、面白がってるんだ!
「今から行ってみようか?」
「えっ!?」
「嘘だ。クレハを、無理矢理寝室に、連れ込むような事はしない。」
そしてまた、無邪気に笑ってるし。
もう!さっきから、ジャラールさんのペースに、はまりまくり。
「そんなに笑わなくてもいいでしょう?」
私は頬を膨らませて、反対を向いた。
すると後ろからジャラールさんに、そっと抱き締められた。
「ジャラールさん?」
なぜか寂しそうな表情を浮かべて、今度はギュウッと私を抱き締めてくれる。
「クレハ……」
ジャラールさんの切ない声。
体中が心臓になったみたいに、全身ドクンドクン言っている。
「クレハ。俺が好きか?」
「えっ?」
心臓がうるさくて、よく聞こえない。
「クレハがよければ、このままずっと、俺の側にいてくれないか?」
最後に大きくドキンと鳴って、今度は胸がキューッと締め付けられる。
何?
私の体、どうにかなっちゃったの?
その時、外から扉を叩く音がした。
するとジャラールさんの腕がスルッと外れた。
まるで何事もなかったように、扉に向かったジャラールさん。
向こう側で付き人の"ジュースをお持ちしました"と言う言葉が聞こえる。
一方の私は、あまりにも衝撃的な言葉を聞いて、その意味を理解するのに苦しんでいた。
ジャラールさんの事は好き。
でもジャラールさんの心の中には、ネシャートさんがいる。
それを知りながら、私に側にいろって言うの?
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