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叶わない想い
①
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その日の夜。
同じ部屋のときわと、お風呂に入った。
「へえ。光清がそんな興奮するなんて。よっぽど紅葉の事、心配だったんじゃない?」
「う~ん……」
私は湯船のお湯に、顎まで浸かった。
「でも不思議だね。本の中にトリップするなんて。」
「そう!物語りの中だよ?あり得なくない?」
水面を叩いたせいで、お湯がときわにかかる。
「でもさ、なんかきっかけがあるんじゃない?」
「それが全く分かんないんだよね。」
何がどうなって、そんな事になったのか。
ちっとも検討がつかない。
「でさ、ぶっちゃけどうなの?そのイケメン。」
ときわがニヤニヤしている。
忘れてた。
ときわもイケメンが好きなんだっけ。
「うん……なかなかだよ?」
「くわ~~私も行きたい!」
悔しがっているときわを見ると、複雑だ。
もしトリップするのが、私じゃなくてときわだったら。
あのジャラールさん、いやハーキムさんなんてとっくの昔に、落ちていたと思う。
「で?どの辺まで行ったの?」
「えっ?」
「ほら!あるでしょ?いいところまでとか、最後までとさ。」
ときわはテンションが、明らかに上がっている。
「いや、私達恋人じゃないし、最後までってちょっと……」
照れながら前髪をかき上げる私に、きょとんとするときわ。
「はい?私は物語りの事、言ってるんだけど。」
私はズルッと、湯船の中に。
「あっ、物語りね。」
「当たり前でしょう?まさか物語りの中の登場人物と、恋に落ちるわけじゃないし。」
私は更にお湯の中へ。
「えっ?もしかして?」
ちらっと、ときわを見たけれど、ワクワクしてるみたいだから、答えない。
「ええ~~!ねえ、どんな人?」
ねえ、ほら。
そう言う勘だけは、鋭いんだから。
「どんな人って言われても……」
「もしかして、さっきのイケメンの人?」
「よくそんな事、覚えてたね。」
私は先に、お風呂場から出た。
「待ってよ!」
ときわも急いで、後を追ってくる。
「いいじゃんいいじゃん。イケメンが相手なんて。」
「そうかな。」
いくらイケメンに恋したって、相手には好きな人がいる。
「で?あとどのくらい会えそうなの?」
私は、歩みを止めた。
「どのくらい?」
「うん。だって物語りの中の人なんでしょ?物語りには終わりがあるじゃん?」
頭の中は真っ白。
私は、そんな肝心な事まで、忘れていたのだ。
「今、物語りのどの辺?」
「分からない。アラビア語で書かれているから。」
私はすぐ浴衣を着て、髪を乾かす。
「ん~アラビア語か。そう言えば光清の知り合いにアラビア人がいたような。」
「らしいね。」
「らしいねって?」
「光清、図書室からその本借りて、知り合いに翻訳して貰ったみたい。」
するとときわは、私の腕を掴んだ。
「紅葉。光清のとこ、行こう。」
私はそのまま、ときわに連れて行かれた。
「本の内容?」
「そう!知り合いに翻訳して貰ったんでしょ?どんな話か教えてよ。」
「知らん。」
「はあ?」
光清とときわの話を真横で聞きながら、改めて光清に見とれてしまった。
洗いざらしの黒髪。
前髪が目にかかって、ミステリアスさ倍増だし。
長身の細身の体を覆う浴衣から、ちらっと見える筋肉が、ほどよい色気を放っている。
これをクラスの女子が見たら、誰か寝込みを襲う人が現れてもおかしくはない。
そんな事考えてたら、光清と目が合った。
ドキンとして、後ろに下がったけれど、光清はそんな私をまるでいないかのように無視。
「ところで光清。やたら色気が垂れ流しされてるんだけど。」
「別にいつもと同じだし。」
ときわのナイスコメントにも、素っ気ない返事。
そんな時だ。
遠くから女の子のキャーっと、黄色い声が。
「源君、カッコいい‼」
「鼻血出そう‼」
女の子達が、光清の色気にやられる瞬間を見てしまった。
「あ~あ。光清、気を付けなよ?ああ言う人達に捕まったら、餌食にされるよ。」
「う~ん……」
なぜか光清は、満更でもない。
「じゃ光清。何か分かったら教えて。」
「了解。」
手を上げて答える姿も、様になっている。
「あれは役に立つのかね。」
「う~ん。」
ときわと二人、部屋に向かって廊下を曲がろうとした時だ。
光清の側に女の子、二人が立っているのが見えた。
背が高くて大人っぽい子。
「おっ!あれは隣のクラスのモデル風美人。」
「モデル風美人?」
「実際、将来の夢がモデルなんだって。」
全くときわの情報収集能力には、叶わないよ。
「そして光清を、本気で狙ってるんだよね。」
「はっ?」
思わず大きな声を出すと、光清がちらっとこっちを見た。
すると光清は、そのモデル風美人を連れて、どこかへ行ってしまった。
「ありゃあ~光清、バカだね。紅葉の前で。」
ときわは気を使ってくれたけど、光清が女の子と一緒いるのは当たり前過ぎて、驚きもしない。
「紅葉はなんとも思わないの?」
「うん。別に。」
「ありゃ。光清も可哀想。」
「何で?」
「だってあれ、紅葉に見せつけてるだけじゃん。焼きもち妬いて貰いたいんだよ。」
私は軽くため息。
言っている事は分かるけれど、実際嫉妬なんてないし。
そこで改めて、光清は友達なんだと分かる。
「難しいね、人の気持ちって。」
ときわだけが、面白そうにスリッパをペタペタと、音を立てながら歩いている。
一方の私は、足取りが重くスリッパを引きずって歩く。
あんなに心配してくれた光清が、遠くに行ってしまう。
ジャラールさん達にも、いつまで会えるか分からない。
一人で寂しい気持ちを持て余しながら、私はときわより早く布団に入った。
その日の夜。
起き上がると、そこには睡眠を取っているジャラールさんと、見張りをしているハーキムさんがいた。
「クレハ。今日はやけに早い目覚めだな。」
「ハーキムさん……」
やっとこの世界に来れた。
その嬉しさが込み上げてくる。
その他、突然誰かが腕を掴む。
「ひっ!」
「シッ!何かあったか?」
私の腕を腕を掴んだのは、ジャラールさんで、私をじっと見つめてくれている。
ああ、ジャラールさんって、やっぱりカッコいい。
目鼻立ちもいいけど、この瞳がなんとも言えず……
「ジャラール様。敵の攻撃ではございません。気にせずお休み下さい。」
「そうか。ハーキムがそう申すのなら、安心だ。もう少し眠るとしよう。」
さっき起きたばかりだと言うのに、またジャラールさんは、眠ってしまう。
もう!余計な事して‼
私が睨んでも、ハーキムさんは全く知らんぷり。
でもまあ、いいか。
ジャラールさんの寝顔見れるし。
「クレハ。これを持て。」
ジャラールさんの寝顔に見とれている私に、ハーキムさんは、何かを投げた。
砂の上に、ドスッと言う音がする。
よく見ると、短剣だ。
「えっ!いいです、こんな恐ろしいモノ。」
「では、他に身を守る道具があるのか?」
「いや、ないですけど、」
「ならば、持っていろ。」
近くで焚き火がパチパチ鳴っている。
「……危険な事でも迫っているの?」
「そう思っていろ。」
「いつ?」
「たぶん先だとは思うが……備えておく分にはいいだろう。」
渡された短剣を持つと、想像以上に重い。
「使う時が来るの?」
「来ない事を祈るが、恐らく無理だろう。」
背筋が凍る。
これを使う時が来ると言う事は、相手も私に向かってこれを使うと言う事だ。
「どうして?ジャラールさんとハーキムさんは、誰かに狙われているの?」
「狙われているか。ある意味狙われているだろうな。」
「えっ?」
ハーキムさんの冷静な答え方が、余計現実味を帯びさせる。
「我々ではなく、宝石の方だ。」
「宝石……」
「あの石は、持つモノの願いを叶える。持っている限り何度でも。」
「ええっ!」
一度じゃなくて、何度でも。
それは欲しいって言う人が、たくさん出てきてもおかしくないわ。
「もちろん、砂漠の宮殿の民でもそれは知られていた。だからこそ、手に入れる者も吟味した。無論、身に付ける者もだ。私利私欲に使う者に渡れば、この世を破滅させる事も簡単だからな。」
また背中がゾクッとする。
ううん。
全身に寒気が走る。
ハーキムさんが言う通り、恐ろしい人にその宝石が渡れば、この私がトリップしてきた世界が破滅する。
そんなの嫌!
「……その宝石、取られないように気を付けないとね。」
「ああ。だが心配するな。襲われるとすれば、宝石を手にいれてからだ。」
その安心しての意味が分からないよ。
私はぶつぶつ言いながら、また体を横にした。
「ハーキムさんは、まだ寝ないんですか?」
「そうだな。ジャラール様が起きてからだ。」
「ジャラールさんは、いつも何時くらいに起きるの?」
「何時?決まっていないが、大抵夜明けの少し前だ。」
夜明けの少し前。
なんともアバウトな答えだ。
「じゃあ、ジャラールさんが、その時間に起きなかったら?」
「うるさい女だ。黙って寝ていろ。」
ま~た答えたくない質問がくると、不機嫌だよ。
唇を尖らせながら、私は目を閉じた。
でも眠りたくない。
もし寝てしまって、また現実の世界に戻されて、ジャラールさん達と会えなくなったら、それこそ嫌だ。
眠りたくない。
眠りたくない。
声に出さずに、呟いた。
しばらくして、横でムクッと起き上がる音がする。
「ハーキム。交代しよう。」
「はい。」
同じ部屋のときわと、お風呂に入った。
「へえ。光清がそんな興奮するなんて。よっぽど紅葉の事、心配だったんじゃない?」
「う~ん……」
私は湯船のお湯に、顎まで浸かった。
「でも不思議だね。本の中にトリップするなんて。」
「そう!物語りの中だよ?あり得なくない?」
水面を叩いたせいで、お湯がときわにかかる。
「でもさ、なんかきっかけがあるんじゃない?」
「それが全く分かんないんだよね。」
何がどうなって、そんな事になったのか。
ちっとも検討がつかない。
「でさ、ぶっちゃけどうなの?そのイケメン。」
ときわがニヤニヤしている。
忘れてた。
ときわもイケメンが好きなんだっけ。
「うん……なかなかだよ?」
「くわ~~私も行きたい!」
悔しがっているときわを見ると、複雑だ。
もしトリップするのが、私じゃなくてときわだったら。
あのジャラールさん、いやハーキムさんなんてとっくの昔に、落ちていたと思う。
「で?どの辺まで行ったの?」
「えっ?」
「ほら!あるでしょ?いいところまでとか、最後までとさ。」
ときわはテンションが、明らかに上がっている。
「いや、私達恋人じゃないし、最後までってちょっと……」
照れながら前髪をかき上げる私に、きょとんとするときわ。
「はい?私は物語りの事、言ってるんだけど。」
私はズルッと、湯船の中に。
「あっ、物語りね。」
「当たり前でしょう?まさか物語りの中の登場人物と、恋に落ちるわけじゃないし。」
私は更にお湯の中へ。
「えっ?もしかして?」
ちらっと、ときわを見たけれど、ワクワクしてるみたいだから、答えない。
「ええ~~!ねえ、どんな人?」
ねえ、ほら。
そう言う勘だけは、鋭いんだから。
「どんな人って言われても……」
「もしかして、さっきのイケメンの人?」
「よくそんな事、覚えてたね。」
私は先に、お風呂場から出た。
「待ってよ!」
ときわも急いで、後を追ってくる。
「いいじゃんいいじゃん。イケメンが相手なんて。」
「そうかな。」
いくらイケメンに恋したって、相手には好きな人がいる。
「で?あとどのくらい会えそうなの?」
私は、歩みを止めた。
「どのくらい?」
「うん。だって物語りの中の人なんでしょ?物語りには終わりがあるじゃん?」
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私は、そんな肝心な事まで、忘れていたのだ。
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「分からない。アラビア語で書かれているから。」
私はすぐ浴衣を着て、髪を乾かす。
「ん~アラビア語か。そう言えば光清の知り合いにアラビア人がいたような。」
「らしいね。」
「らしいねって?」
「光清、図書室からその本借りて、知り合いに翻訳して貰ったみたい。」
するとときわは、私の腕を掴んだ。
「紅葉。光清のとこ、行こう。」
私はそのまま、ときわに連れて行かれた。
「本の内容?」
「そう!知り合いに翻訳して貰ったんでしょ?どんな話か教えてよ。」
「知らん。」
「はあ?」
光清とときわの話を真横で聞きながら、改めて光清に見とれてしまった。
洗いざらしの黒髪。
前髪が目にかかって、ミステリアスさ倍増だし。
長身の細身の体を覆う浴衣から、ちらっと見える筋肉が、ほどよい色気を放っている。
これをクラスの女子が見たら、誰か寝込みを襲う人が現れてもおかしくはない。
そんな事考えてたら、光清と目が合った。
ドキンとして、後ろに下がったけれど、光清はそんな私をまるでいないかのように無視。
「ところで光清。やたら色気が垂れ流しされてるんだけど。」
「別にいつもと同じだし。」
ときわのナイスコメントにも、素っ気ない返事。
そんな時だ。
遠くから女の子のキャーっと、黄色い声が。
「源君、カッコいい‼」
「鼻血出そう‼」
女の子達が、光清の色気にやられる瞬間を見てしまった。
「あ~あ。光清、気を付けなよ?ああ言う人達に捕まったら、餌食にされるよ。」
「う~ん……」
なぜか光清は、満更でもない。
「じゃ光清。何か分かったら教えて。」
「了解。」
手を上げて答える姿も、様になっている。
「あれは役に立つのかね。」
「う~ん。」
ときわと二人、部屋に向かって廊下を曲がろうとした時だ。
光清の側に女の子、二人が立っているのが見えた。
背が高くて大人っぽい子。
「おっ!あれは隣のクラスのモデル風美人。」
「モデル風美人?」
「実際、将来の夢がモデルなんだって。」
全くときわの情報収集能力には、叶わないよ。
「そして光清を、本気で狙ってるんだよね。」
「はっ?」
思わず大きな声を出すと、光清がちらっとこっちを見た。
すると光清は、そのモデル風美人を連れて、どこかへ行ってしまった。
「ありゃあ~光清、バカだね。紅葉の前で。」
ときわは気を使ってくれたけど、光清が女の子と一緒いるのは当たり前過ぎて、驚きもしない。
「紅葉はなんとも思わないの?」
「うん。別に。」
「ありゃ。光清も可哀想。」
「何で?」
「だってあれ、紅葉に見せつけてるだけじゃん。焼きもち妬いて貰いたいんだよ。」
私は軽くため息。
言っている事は分かるけれど、実際嫉妬なんてないし。
そこで改めて、光清は友達なんだと分かる。
「難しいね、人の気持ちって。」
ときわだけが、面白そうにスリッパをペタペタと、音を立てながら歩いている。
一方の私は、足取りが重くスリッパを引きずって歩く。
あんなに心配してくれた光清が、遠くに行ってしまう。
ジャラールさん達にも、いつまで会えるか分からない。
一人で寂しい気持ちを持て余しながら、私はときわより早く布団に入った。
その日の夜。
起き上がると、そこには睡眠を取っているジャラールさんと、見張りをしているハーキムさんがいた。
「クレハ。今日はやけに早い目覚めだな。」
「ハーキムさん……」
やっとこの世界に来れた。
その嬉しさが込み上げてくる。
その他、突然誰かが腕を掴む。
「ひっ!」
「シッ!何かあったか?」
私の腕を腕を掴んだのは、ジャラールさんで、私をじっと見つめてくれている。
ああ、ジャラールさんって、やっぱりカッコいい。
目鼻立ちもいいけど、この瞳がなんとも言えず……
「ジャラール様。敵の攻撃ではございません。気にせずお休み下さい。」
「そうか。ハーキムがそう申すのなら、安心だ。もう少し眠るとしよう。」
さっき起きたばかりだと言うのに、またジャラールさんは、眠ってしまう。
もう!余計な事して‼
私が睨んでも、ハーキムさんは全く知らんぷり。
でもまあ、いいか。
ジャラールさんの寝顔見れるし。
「クレハ。これを持て。」
ジャラールさんの寝顔に見とれている私に、ハーキムさんは、何かを投げた。
砂の上に、ドスッと言う音がする。
よく見ると、短剣だ。
「えっ!いいです、こんな恐ろしいモノ。」
「では、他に身を守る道具があるのか?」
「いや、ないですけど、」
「ならば、持っていろ。」
近くで焚き火がパチパチ鳴っている。
「……危険な事でも迫っているの?」
「そう思っていろ。」
「いつ?」
「たぶん先だとは思うが……備えておく分にはいいだろう。」
渡された短剣を持つと、想像以上に重い。
「使う時が来るの?」
「来ない事を祈るが、恐らく無理だろう。」
背筋が凍る。
これを使う時が来ると言う事は、相手も私に向かってこれを使うと言う事だ。
「どうして?ジャラールさんとハーキムさんは、誰かに狙われているの?」
「狙われているか。ある意味狙われているだろうな。」
「えっ?」
ハーキムさんの冷静な答え方が、余計現実味を帯びさせる。
「我々ではなく、宝石の方だ。」
「宝石……」
「あの石は、持つモノの願いを叶える。持っている限り何度でも。」
「ええっ!」
一度じゃなくて、何度でも。
それは欲しいって言う人が、たくさん出てきてもおかしくないわ。
「もちろん、砂漠の宮殿の民でもそれは知られていた。だからこそ、手に入れる者も吟味した。無論、身に付ける者もだ。私利私欲に使う者に渡れば、この世を破滅させる事も簡単だからな。」
また背中がゾクッとする。
ううん。
全身に寒気が走る。
ハーキムさんが言う通り、恐ろしい人にその宝石が渡れば、この私がトリップしてきた世界が破滅する。
そんなの嫌!
「……その宝石、取られないように気を付けないとね。」
「ああ。だが心配するな。襲われるとすれば、宝石を手にいれてからだ。」
その安心しての意味が分からないよ。
私はぶつぶつ言いながら、また体を横にした。
「ハーキムさんは、まだ寝ないんですか?」
「そうだな。ジャラール様が起きてからだ。」
「ジャラールさんは、いつも何時くらいに起きるの?」
「何時?決まっていないが、大抵夜明けの少し前だ。」
夜明けの少し前。
なんともアバウトな答えだ。
「じゃあ、ジャラールさんが、その時間に起きなかったら?」
「うるさい女だ。黙って寝ていろ。」
ま~た答えたくない質問がくると、不機嫌だよ。
唇を尖らせながら、私は目を閉じた。
でも眠りたくない。
もし寝てしまって、また現実の世界に戻されて、ジャラールさん達と会えなくなったら、それこそ嫌だ。
眠りたくない。
眠りたくない。
声に出さずに、呟いた。
しばらくして、横でムクッと起き上がる音がする。
「ハーキム。交代しよう。」
「はい。」
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